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第九十五話





「艦隊を前進させる」


 二式飛行艇からの電文を第三機動艦隊が受信した時、山口はそう告げた。その言葉に参謀長の白石少将は驚愕する。


「し、しかし長官。我が第三機動艦隊は上陸船団の護衛の任に付いています。勝手な行動をしては……」


 一般論として白石少将は山口を諌めるが、逆に山口はやる気だった。


「全部ではない。前進するのは龍驤、飛鷹、隼鷹の空母だ。護衛艦艇も少数で良い、空母がいれば近藤さんも安心するだろう」

「成る程、それは妙案です。では長官、残す空母には多めの零戦を載せ前進する空母に攻撃機を載せては如何ですか?」

「ほぅ、白石のも妙案だ。それで行こう」


 斯くして空母三隻、護衛艦艇八隻(甲巡足柄 八雲 乙巡長良 球磨 第十三駆)が速度を上げて米機動部隊へ突き進むのである。その間にも旗艦龍驤は第一機動艦隊の状況を受信していた。


「三好隊長の危機だ。攻撃機は全部吐き出せ!!」


 山口は飛行甲板まで降りて攻撃隊隊長の関少佐と握手をする。


「必ず帰ってこい」

「無論です」


 そして第三機動艦隊の矢は飛び立ち米機動部隊上空まで飛来したのであった。


「敵戦闘機は任せる!!」

『了解した!!』


 龍驤戦闘機隊長の兼子正少佐は零戦隊を率いて上空にいるF6Fと交戦に移行する。関は米機動部隊をよく観察する。


「まだ護衛艦艇は多くが浮いている……なら先に護衛艦艇を叩く!!」


 飛行中に第一機動艦隊から攻撃隊が発艦したのは関機も受信していた。ならば第一機動艦隊に引導を渡すのが適役だろうと判断したのである。


「狙うは護衛艦艇!! 全軍突撃せよ!!」


 関機はト連送を発信、関は機体を上下反転させそのまま急降下爆撃を敢行した。関が狙ったのはアトランタ級軽巡洋艦の三番艦サンディエゴであった。


「撃ェ!!」


 関は高度500で250キロ爆弾を投下、 250キロ爆弾は前部二番砲塔に命名した。二番砲塔は文字通り吹き飛び、一番、三番砲塔も使用不能となる。


「よーし!!」


 列機も更に三発を命中させてサンディエゴは炎上した。そこへ魚雷を搭載した九七式艦攻一個小隊が突撃、魚雷を投下して離脱した。サンディエゴは回避出来ずに三本がそのまま命中し急速に傾斜していくのであった。


「クソ!! ジャップめ!!」

「上空にヴァル!!」

「何!?」


 エセックス上空に三機の九九式艦爆が急降下をしていた。


「回避ィ!!」


 エセックスは二発まで回避に成功した。しかし最後の一発は中部飛行甲板を突き抜け格納庫でその力を解放した。


「ヌオォォォ!!」


 激しく揺れるエセックスにハルゼー達は耐える。飛行甲板と格納庫には攻撃隊が発艦寸前だった事もあり誘爆していたのである。


「ダメコン隊はどうした!?」

「駄目です、ダメコン隊でも手が付けられない状況です!!」

「クソッタレ!!」


 そして攻撃隊は漸く引き上げるが米機動部隊は散々であった。


「軽巡3、駆逐艦7が撃沈されました」

「残りは空母2、重巡2、軽巡3、駆逐艦8です」

「……その上、エセックスは大破炎上中か……」

「……ハルゼー司令……」


 ハルゼーは幕僚達の言いたい事は分かっていた。だがそれを口に出すのは悔しかった。しかし出さないといけない、ハルゼーは一度深呼吸をしてから発した。


「……艦隊は直ちに回頭、現海域から離脱する」


 艦隊は回頭して海域から離脱しようとする。だがそれは遅すぎた命令だった。エセックスの対空レーダーが再度接近してくる攻撃隊を探知したのである。しかも方角は第一機動艦隊からである。


「……おのれェェェ!! ミヨシィィィィィ!!」


 ハルゼーが叫ぶがどうにもならない。飛来した瑞鶴飛行隊長の嶋崎少佐は上空を飛行する18機のF6Fを見て確信した。


「勝ったな」


 攻撃隊は米機動部隊に襲い掛かる。空母を守る護衛艦艇は必死に対空射撃を展開するが第三機動艦隊から飛来した攻撃隊により多数の護衛艦艇は沈めれ防空網に穴が生じていた。零戦隊はF6Fをあっという間に駆逐し暇をもて余して護衛艦艇に機銃掃射していたりする。

 艦爆隊は炎上するエセックスと逃げようとするヨークタウン2に急降下爆撃を敢行してエセックスは二発命中したのが致命傷となった。

 ヨークタウン2は爆弾三発が命中、そこへ艦攻隊が突撃し魚雷五本が命中したのである。


「ハルゼー司令、最早エセックスは……」

「総員退艦だ!!」


 ハルゼー達は攻撃隊が引き上げる中、総員退艦をするのである。


「今に……今に見ていろミヨシィィィィィ!!」


 洋上を漂うボートでハルゼーはそう叫ぶのであった。

 エセックスとヨークタウン2の撃沈報告は加賀の将和の元に届いていた。


「そうか、米機動部隊の空母は全て沈めたか」

「はい。ですが此方の航空隊の被害は多いです」


 今回の空母部隊の激突で航空隊は零戦34機 九九式艦爆53機 九七式艦攻59機を喪失していた。それでも水偵や伊号潜の救助活動により零戦19機 九九式艦爆21機 九七式艦攻23機のペアパイロットを救助しているのである。

 また艦隊も損傷艦艇は多数出ていた。大破だけでも空母天城、蓬莱、葛城の三隻が出ていた。他にも甲巡鈴谷、熊野、筑摩が大破している。


(艦隊の再編が必要だな……だが今は……)


 まだニューカレドニア攻略作戦は継続中なのだ。


「損傷艦艇はトラックへ退避。明石がいてるから暫くは骨休みが出来るだろう。残りはこのままニューカレドニアへ前進する」

「はッ!!」


 そして第一機動艦隊は前進しニューカレドニアを数度に渡り爆撃を敢行し3月5日に上陸船団はネフー湾に上陸し橋頭堡を築くのであった。


「攻略中の護衛はお前に任せる」

「はい、任せてください」


 将和は山口とそう言葉を交わす。


「かなりやられたようですな」

「あぁ。其れほど強力になってきているというわけだ」

「空母もそうですが航空隊も再編が必要ですな」

「あぁ、彗星は内地に帰還次第配備だな」


 九九式艦爆の後継機である彗星は内地で量産態勢に移行している。なお、性能は13.2ミリ旋回機銃以外はほぼ史実の彗星三三型である。


「敵空母は出てこんと思うが……気を付けろ」

「無論です」


 そして第一機動艦隊はトラック諸島へ帰還し先に帰還応急修理していた損傷艦艇と合流して3月20日に内地へ帰還したのであった。

 時間は少し前に戻す、ニューカレドニアに上陸した陸軍はネフー湾の橋頭堡からヌーメアへ前進を開始したのである。

 3月8日、第29師団はカアラ・ゴメヌ、第43師団はプエボまで占領し両師団は海岸沿いに沿って進撃する。両師団は12日までにプオンブー、ティワカまで占領した。

 しかし、ネプーイとポワンディミエでニューカレドニア防衛軍と激突する。


「何としても死守だ!!」


 ネプーイには第25歩兵師団が、ポワンディミエには第32歩兵師団が配備され両都市で激しい戦闘が繰り広げられたのである。また、ヌーメアには第五機甲師団が配備されていた。


(クソ、ハルゼーが破れたのは誤算だ……だが何としても死守しなくては……)


 ヌーメアの司令部でクルーガー中将はそう思う。しかし、日本陸軍も負けてはいない。ネフー湾沿岸に航空基地を建設し小規模ながらの航空戦隊を派遣していた。

 また、リフー島沖に山口中将の第三機動艦隊が展開しており航空支援は容易かった。


「味方だ!!」

「海軍さんの攻撃隊だ!!」


 援護を受けた両師団は徐々に追い散らそうとする。しかし米軍も残っているP-38等が勇戦していた。


「クソ、アメ公もまだ手強いぞ」


 P-40を撃墜した兼子少佐は周囲を警戒しながらそう呟く。一進一退の攻防に陸軍は戦車第9連隊の投入を決意、ネプーイに向かった。また、米軍も第五機甲師団をネプーイに向かわせていた。

 斯くしてネプーイにて太平洋地域最大となる戦車戦が展開される事になるのであった。







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[気になる点] 多数の護衛艦艇は沈めれ防空網に 多数の護衛艦艇は沈められ防空網に
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