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第九十四話








「そうですか、遂にニューカレドニア攻略に入りますか」


 首相官邸で廣田総理は宮様から報告を受けていた。


「ニューカレドニアを攻略すれば此方も交渉はしやすいです」

「豪州の連合軍離脱……実現出来ればアメリカとイギリスに楔を射てますな」


 日本はソロモン戦が終了した段階でオーストラリアと交渉をしていた。即ち連合軍から離脱して枢軸国側――日本側に加わるよう圧力を掛けていた。しかし、オーストラリア首相のカーティンはそれを拒否し徹底抗戦を掲げていた。

 それでも日本は諦めずに粘り強く交渉をしていた。


『ニューカレドニアを攻略すればオーストラリアも枢軸国側に加わるだろう』


 外務省等はそう期待を抱いていたがそれは妄想に近いだろうと廣田や陸海軍はそう認識していた。陸海軍は一応ながら豪州上陸作戦も想定して行動をしている。


「今は三好君に期待しましょう」

「そのようですな」


 そう言う二人であった。







「クソッタレ!! あっという間に散り散りになっちまった!!」


 F6Fに乗る米パイロットはそう愚痴を溢す。彼等は米機動部隊の上空迎撃の任を帯びていた。そして実際に第一機動艦隊から攻撃隊が来襲して迎撃を開始した。

 しかし、零戦隊との空戦であっという間に数を減らしていったのだ。


『トム!! 後ろからゼロだ!!』


 米パイロットは僚機からの無線に咄嗟に機体を左に傾けて退避した。退避した瞬間に機銃弾が虚しく空間を切り裂くだけだった。


「助かったぜジミー……」


 礼を言おうとした米パイロットだが次の瞬間には下方から銃撃され瞬く間に機体は爆発四散するのであった。


「粗方片づけたな」


 F6Fを撃墜した零戦パイロット――飛龍戦闘機隊隊長の岡嶋大尉はそう呟く。周囲を飛行するのは今ではほぼ零戦隊しかいなかった。


「それにしてもこの改良型零戦も良い機体だな。不満があるとすればグラマンと間違えそうなくらいだがな」


 岡嶋大尉はそう言いながら攻撃隊隊長の村田少佐に無線を入れた。


「招かざる客は排除した。後は頼みます」

『了解。攻撃隊の華麗な舞を特と御覧あれ』


 攻撃隊は所定の位置に移動する。そして位置についた攻撃隊に村田機は『ト連送』を発信した。


「中隊長!! ト連送です!!」

「よし、全軍突撃せよ!!」


 将弘は高度を5メートルにまで落として速度を上げた。


「目標は新型空母だ」


 将弘は新型空母を探す。偵察員席に座る結城一飛曹も双眼鏡で探しているとあっと叫んだ。


「敵新型空母発見!! 真正面のです!!」

「沈めるぞ」


 結城一飛曹の報告に将弘はその一言だけだった。

将弘の中隊は一機の艦爆が投下して飛行甲板に火災を発生させている空母イントレピッドの左舷から突撃する。生き残っていた砲座から死物狂いの対空砲火が繰り出される。


「三山機爆発四散!!」

「……」


 列機が落とされるが将弘はただ空母だけを見つめる。そして距離800で投下索を引いた。


「戦果確認だ結城!!」

「……命中!! 魚雷三発命中です!」

「立て続けに三発の魚雷だ。恐らくは持つまい。それに魚雷は新型だ」


 今作戦から使用された九一式航空魚雷は炸薬を330㎏にまで増加させた改4である。事実、イントレピッドは急速に傾斜が大きくなっていた。波間に没するのも時間の問題であった。

 また、サラトガも右舷に五本の魚雷が命中しており沈没寸前だった。幸いにしてエセックスとヨークタウン2は無傷だった。


「三好長官に打電だ。直ちに第二次攻撃を求むとな」


 村田はそう発信させるが、第一機動艦隊もハルゼーが放った攻撃隊が飛来していたのだ。






「零戦隊の迎撃網、突破されました!! 到達まで後五分!!」

「対空戦闘用意」

「対空戦闘用意!!」


 零戦42機の迎撃網を突破した米攻撃隊は第一機動艦隊に迫っていた。


「敵戦闘機は新型のようだな」

「我等も改良型の零戦ですがやはり数の差ですな」


 将和と草鹿はそう話す。そして米攻撃隊は第一機動艦隊から距離30000に到達した。


「河内と因幡が砲撃を開始しました!!」


 第三戦隊第一小隊に属する河内と因幡は主砲による対空射撃を開始する。三式弾の粒子によって数機の攻撃機が落とされたが攻撃隊は臆する事なく前進する。距離20000で第七戦隊第二小隊の鈴谷と熊野、第八戦隊の利根と筑摩も対空射撃を開始する。河内と因幡に比べれば物足りない砲撃だがそれでも甲巡の砲撃なので強力だろう。

 だが米攻撃隊はそれでも前進した。


「距離一万!!」

「砲撃始めェ!!」


 各艦が搭載する両用砲、40ミリ機関砲も対空射撃を開始する。


「今回の米軍はやる気があるな」

「はい、油断なりません」


 遂に25ミリ機銃の射程距離に入り、対空射撃は苛烈になる。


「左舷に雷撃機!!」

「左舷弾幕薄いぞ!! 何やってんの!!」


 五十鈴達第一護衛戦隊は効率よく対空射撃をするがその弾幕を米攻撃隊は抜けた。


「魚雷落とした!!」

「おもぉーかぁーじ!!」


 加賀は三機のTBFに襲われたが難なく魚雷を回避した。しかし……。


「天城上空に急降下!!」

「何!?」


 天城上空に8機のSBDが急降下していた。


「とぉーりかぁーじ!!」


 天城は三発までは回避した。しかし、残りの五発は飛行甲板に命中したのである。


「消火急げ!!」

「飛行甲板大破!! 発着艦不能!!」

「み、右舷から雷撃機四機!!」

「い、如何!?」


 天城は回避する事なく右舷に三発の魚雷が命中した。


「天城大破!! されど航行に支障無し!!」

「………」

「蓬莱被弾!! 魚雷命中は有りませんが飛行甲板に四発が命中して発着艦不能!!」


 更に将和の視界で新たに被害が出た。


「筑摩被雷!!」


 筑摩は魚雷を回避していたが二本を避けきれず右艦尾に命中したのである。


「筑摩、右機械室は全滅です!! 現在速度8ノット!!」

「筑摩より信号!! 舵損傷で取舵しか効かないとの事です!!」

「鈴谷と熊野が衝突!! 鈴谷炎上中!!」

「葛城被雷!! 魚雷三発命中で右傾斜22°!!」


 次々と舞い込む悲報、しかし将和は平然としていた。


(クックック……歴史の修正力はここいらで一気に片をつける気かおい? だがそうはさせんぞ)


 将和は帽子を被り直した。


「落ち着けェ!! これくらいの被害で動揺するな!! 日頃の訓練を思い出せェ!!」


 将和の渇により秩序は取り戻してきたのである。そして米攻撃隊は引き上げたが損傷は以下の通りだった。


 大破

 空母天城 蓬莱 葛城

 甲巡鈴谷 熊野 筑摩


 中破

 乙巡五十鈴

 駆逐艦初月 風雲 巻雲


「さて、まだ加賀、飛龍に五航戦は無傷だ」

「まさか長官……」

「相手がハルゼーならもう一回仕掛けてくる。その前に五航戦から攻撃隊を出して残り二隻を叩く!!」

「ですが長官、ニューカレドニア攻略支援には空母が……」

「馬鹿野郎ォ!! 何のために山口の機動艦隊がいるんだ!! 此処で俺達に更なる被害が続出しても山口が生きていれば勝ちなんや!!」

「翔鶴より発光信号!! 『我、第二次攻撃隊準備完了セリ』です!!」

「はっはっは、やりよるな吉良の奴め!! 翔鶴に信号、直ちに攻撃隊発艦せよ!!」


 斯くして鶴の矢が放たれる事になったのである。攻撃隊は零戦30機 九九式艦爆36機 九七式艦攻36機の計102機であり、残り二隻を叩くために米機動部隊へ向かったのである。また、損傷した艦艇は後方に退避させた。

 一方でハルゼーも再度攻撃隊を出していた。


「あれだけ出して撃沈艦出せないのはどういう事だ!? 次でミヨシを仕留めろ!! キルミヨシ!! キルミヨシ!! キルミヨシだ!!」


 ハルゼーはF6F 32機 SBD45機 TBF30機を第二次攻撃隊として出させようとした。しかし、エセックスの対空レーダーが接近する攻撃隊を探知したのである。


「馬鹿な!? ミヨシの機動艦隊はまだ攻撃隊は来ないはずだぞ!! 一体何処の機動艦隊だ!!」


 そう叫ぶハルゼーだが幕僚達は答えを導き出せなかった。そして加賀ではこの攻撃隊からの電波を受信していた。


「関衛少佐より電文!! 『我、敵機動部隊ヲ攻撃セントス』」

「関……そうか!! 来てくれたのか山口ィ!!」


 電文の意味を察した将和は帽子を投げた。そう、ハルゼーの機動部隊に接近していたのは『第三機動艦隊から分離した』空母龍驤、飛鷹、隼鷹から発艦した零戦45機 九九式艦爆72機 九七式艦攻72機の攻撃隊であった。

 そして分離した空母部隊を率いていたのが将和と同じく航空戦に精通していた第三機動艦隊司令長官山口多聞中将だったのである。






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