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第11話 大伴

 あれから15分。俺は地獄のような時間をようやく終えていた。


 「はぁ~。なんであんなことをして廊下に立たされるのだよっ」


 筋肉痛だ。膝が痛い。もう動きたくない。俺は、机に伏せていた。そこに美月が現れた。


 「イナ。珍しいね。宿題だけはいつもやってきていたのに忘れるなんて。どうかしたの? やっぱり、昨日のこと?」


 相変わらず鋭い。俺は美月の質問に答えることができなかった。


 「いいよ。わかっているから言わなくても」


 こくり。俺は頷く。正直言って美月のこういう配慮はありがたいことだ。俺にはたくさんの課題が残っている。物部のこと、イヨのこと、英語の宿題のこと、社会の宿題のこと………後半はどうでもいいや。とにかく、どうにか対処していかにといけない。

 俺は、守仁の席を見た。守仁は昼休みなのでどこかに出かけているようだ。ただ、あいつは明らかに無視してくるので何も対策を考えることができない。どうしたものか。

 考えても仕方ないので、俺は屋上に行って風でも浴びてこようと思い、美月に断りを入れてから席を立った。

 屋上はこの学校では全校生徒が自由に出入りできるようになっているため昼休みはよくリア充カップ──大勢の男女が昼食をとっている。ちなみにリア充を羨ましがっていないからな。本当だからな。ゴホン。話を戻すとしてそのため屋上はこの学校でも1,2を争う人気ポイントだ。しかし、今日は天候が悪いので屋外である屋上にはほとんど人がいなかった。2人除いて。

 その2人のうち1人は守仁であった。そして、もう1人は2年生の大伴加奈子先輩であった。

 あいつ。俺は、その光景を見た瞬間1つだけわかったことがあった。大伴加奈子先輩はあの名門一族大伴の出身だ。平安時代に没落するまでは蘇我、物部より長生きした古墳、飛鳥時代を代表する一族の一つである。


 「これで、大伴を味方につけて自分の正当性を図るつもりなのか」


 ここからだと、あの2人の会話はよく聞こえない。仕方なく、俺はこの場を去ることにした。

 

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