嵐のような出来事
俺はふと我に戻った。今まで暮らしてきた町が一瞬にして焼け野原にされたのだ。色々な思い出が詰まったこの街が一瞬にしてなくなったのだ。思い出を作っていくのはとてつもない時間がかかる。しかしその思い出が壊されるのは一瞬だった。テレビでも言っていたな努力するのは難しいですけど、諦めるのは簡単なのですと、俺はそのことをなぜか思い出していた。この無残な町を見ながら・・・
そして俺は一番大切なことに気づいた。
「春香そうだ春香は・・・」
「春香どこだ春香ぁぁぁぁぁぁぁ」俺の声が無残な町の中でこだまする。
「たしかクラリスが俺の思っている人には何か技をかけとくとか言っていたよな」必ず春香は生きているはずだ。
そう思いながら俺は一生懸命探した。もうここで死んでもいいと思うほどのな。だけど見つかったのは春香がいつも大切にしていた母さんがくれたネックレスだけだった。
「神様いるなら返してくれよ俺の大事な春香を返してくれよ・・・」俺は今にも消えそうな声でそういった。すると後ろから声が聞こえた。
「神様ならいるよ」クラリスだった。
「神様がいるなら春香を返してくれよ・・・」
「春香ちゃんだっけ妹さんは生きているよ」
「それは本当なのか?」
「うん、でもね何かおかしいんだ」
「どういうことだ?」
「普通はねエンジェルオーラの効果はねダメージをカットする技なんだ」
「かけられた人がどこかへ行くということはありえないんだ。でもねこの近くに春香ちゃんの気は残念ながら感じられないんだ」
「ふざけるな!なぜ俺が1日の間にこんなに多くの不幸に合わなくちゃいけないんだ。いい加減にしてくれよ」
「全てはお前が現れてからだお前さえこなければこんなことにはならなかったんだ」俺は今の気持ちをクラリスにぶつけた。しかし返答は以外なものだった。
「それは少し違うよ。悪魔たちが狙っているのは君なんだよあっくん」
「え・・・なぜ俺が狙われるんだ?」
「君はね天使と・・・」
クラリスが俺に話そうとしたまさにその瞬間だった。空が突然真っ赤になりすごい音が聞こえる。
「次は何だよ」俺は以外に冷静だった。いろいろなことが起きて頭がおかしくなっているのだろうか。
「なぜあいつがここに・・・」クラリスの顔を見ると強張っているのがわかった。
真っ赤になった空から何か声が聞こえる。
「やっと見つけたよ。太陽神アポロンの子よ」この声を聞くとなぜだろうか吐き気がする。
「ほーこいつがアポロンの子か、全然力を感じないがなガハハハハハハハ」次に聞こえたのは馬鹿でかい声だ。多分こいつは男で最初のほうが女か。
「おや、忌々しいあいつの妹がいるじゃないか」
「本当だなここであいつもろとも殺っちまうかガハハハハハハハ」
「おい、クラリスこの声は一体何なんだ?」俺は正直不安でいっぱいだった。なんたって殺っちまうとか言っている奴がいる。俺は普通の人なら負けるなんて思ったことはない。しかし今は確実に殺されるそう俺の直感が言っている。
「この声は悪魔の声だよ。しかも上位クラスのね。正直こんなことになるなんて思ってもいなかったよ・・・でも大丈夫あっくんは僕が絶対守るから」そういうものもクラリスの足は震えている。俺の推測だがまだクラリスはそこまで強くないのだろう。
「聞いたか?リリスあいつあっくんは絶対僕が守るからだってよ笑っちまうぜガハハハハハハハ」
「そうねラバル少し遊んであげようかしらね」
「俺達が出たら一瞬だからこいつにやらすかガハハハハハハハ」そう言うと空から何か降ってきた。
「ミノタウロスやっちまえガハハハハハハハ」
「ブオオオオオオオオ」牛みたいな奴が吠えながらこっちに走ってくる。
「大丈夫なのかクラリスあんな化物に勝てるのか?」
「分からない、でも僕は勝つよあっくんを守らなくちゃいけないんだから」そう言うとクラリスは何か呪文を唱え始めた。
「大いなる光よ、聖なる力よ、今我に力を」そう言うとクラリスの持っているホーリーソードが光りだす。
その光が辺りを包んだその瞬間クラリスが何か言葉を言った。
「グランドクロス」そう言うと剣からすごい光と共に強い衝撃を感じた。その衝撃は十字型を描き牛めがけて飛んで行った。
「ブオオオオオオオオオオオオオオオ」とてつもない声が聞こえる。当たったことは確かなようだ。が、まだ奴は生きていた。胸のあたりをさっきの技でえぐられているがそのままこちらに向かって走ってくる。
「そんな、僕の全魔力を使ったのに」クラリスがそう言うと地面に座り込んだ。
「おい聞いたかよリリスあれが全魔力だとよお兄様とは大違いだなガハハハハハハハ」
「可愛くていいじゃないかラバルすぐに片付けれそうだしね」
「そうだなガハハハハハハハ」空からあたかも勝利を確信しているような自信の満ち溢れる声がする。
「ごめんね、あっくんを守るって言ったのに」
「まだ負けたわけじゃないだろ?なにか手はあるんだろ?」
「もうないよ・・・あったらやってるもん・・・グスン」クラリスの目から涙が溢れる。
俺は無力だ目の前に俺を守ろうとしてくれている女の子一人も救えない。
「泣くなよくそ俺はどうすればいいんだ俺にも力があれば・・・・少し待てよ」そう思えばあいつらが俺のことを太陽神の子とか言っていたことを思い出した。
「さっきあいつら俺のこと太陽神の子とか言っていたよな」
「う、うん」
「もしかして俺も何か力を使えるんじゃないのか?」
「無理だよあっくんは確かにアポロンの子だけどそんな簡単に力って言うものは使えないんだよ」
「いいから力の使い方を教えてくれクラリスはもう魔力とか言うのがないんだろ?もう技を使えるとしたら俺しかいないだろ!」そんな話をしてる間に牛はもう目の前にいた。
「ブオオオオオオ」と吠えながら手に持っている斧を力いっぱい俺たちに振り下ろす。
「力の使い方を教えてくれ早くこのままじゃ俺たち殺されちまうそれでいいのか」その言葉を言った時にはもう斧が俺たちに当たろうとしていたところだった。
しかし、突然目の前が真っ赤になったなぜ真っ赤になったかって?牛の血でさ。
「ブオオオオオオオオオオオオオ」と牛の悲鳴が聞こえる。目の前に牛の腕と見られるものが転がっている。もちろん辺りは血の海だ。
「何が起きたんだ?」
「オラ起きろ大丈夫か敦」と聞き慣れた声がする。
「お前、五十嵐じゃねえかなぜここにいるんだ?」
「説明はあとだとりあえずこいつを倒してからにするぞ」そういうと五十嵐の大剣が空を切る。もう片方の手も地面に落ちた。残りの手を切り落としたと思えばすぐさま牛めがけジャンプする。
「これで終わりだ」そう言うと五十嵐の大剣が牛をまっぷたつにした。
「おいリリスあいつはだれだ?」さっきの威勢のいい声ではなくなにか困惑しているような声で言っているように聞こえる。
「知らないわよラバルこっちが聞きたいわよ」女の方は苛立っているようだ。
「チッ時間だリリス帰るぞ」
「わかっているわよ」そう言うと真っ赤だった空は元の暗闇に姿を変えた。
嵐のような出来事だった。
「大丈夫か敦?」
「あぁ、俺は大丈夫だがお前何だその格好は」俺は不思議そうにそう言う。
「これか?まぁ俺にもいろいろあってな今は悪魔を倒しているんだ」
「悪魔を倒すだと?」こいつまで狂ったのかと思ったが今の戦闘を見せられたら信じるしかない。
「お前のことを信じるよ」
「何だそんなに驚かないんだなお前のことだからもっと驚くかと思っていたぜ」
「まぁなこんな光景を見せられたんだ信じるしかないだろ」そう言って聞きたいことを五十嵐に聞くことにした。
「五十嵐お前に少し聞きたいことがあるんだがいいか?」
「俺の分かることならな」
「お前・・・その天使っているとおもうか? ここに気絶しているクラリスって女の子は天使らしい」
「ん、この子は天使なのか?」五十嵐が驚く様子もなく淡々と答える。
「そうらしい」
「まあ天使とかたくさんいるしな」
「たくさんいるのか?」
「あぁたくさんいるぞ俺みたいな能力に覚醒した者たちが集まるところのリーダーは天使だしな」
「まだあるのか?分かることなら答えるが」五十嵐は大剣についた血を拭きながらそういった。
五十嵐がいてくれてよかった、今までで一番そう思った瞬間だった。
「なぁ敦さっきから思っていたんだがお前その子怪我はしてないのか?気絶しているようだが」
「多分大丈夫だろう、天使だしな。てか五十嵐助けてくれよ春香が春香がいないんだ」俺にはこれが一番大切なことだった。
「春香ちゃんがいないのか?」
「あぁクラリスが言うには生きているらしいんだけどこの近くにはいないらしい」
「クラリス?あぁその子か天使が生きていると言ったなら生きているんだろうな。天使にはそういう技もあるしな。しかし場所がわからないのは俺にもよくわからないな俺の技はそういう系には優れていないんだ」
「そうなのか・・・」
「学校のやつならそういうたぐいの技を持っている奴がいるから聞いておいてやるよ」学校?俺は不思議に思ったが話を続けた。
「すまない五十嵐、助けてもらった上に春香も探してもらうなんて・・・」
「いいってことよ、それよりお前これからどうするんだ?」分からないことだらけでこれからのことなんて考えてなかった。今見てきた不思議な光景から現実に戻されたような気分になった。
「わかんねえ、まずクラリスが目覚めるまでは俺にはどうすることもできないしな」
「そうか、なら俺も待っておくよクラリスちゃんが起きるまでな。俺達のリーダーもお前のことを紹介したら喜んで仲間にいれてくれるさ」
「そうなのか俺も知りたいことがもっとあるからな一回お前のその学校ってところにいかせてもらうよ」
「お前何言っているんだ?学校って俺達の通っている学校だぞ?あそこの生徒の約80%は能力者だぞ?」
「!?」俺は体中の力が抜けた気がした毎日通っていた学校がまさかそういう類の学校だとは夢にも思わなかった。
「そうだったのか・・・」
「あぁそうだぞ」
「夜が明けたら一旦学校にいくとするか」これがいい気がした、俺の選択は間違っていないはずだ。
「わかったクラリスちゃんが目覚めたらいくとするか」そう言うとピカピカに輝く大剣を地面にさし五十嵐は座り込んだ。
もう夜が明けようとしていた。




