第四話 裏
本国への道を急ぐクロノス大公こと私は、敗者の憶測にかまってはいられなかった。
馬上にまっすぐ身を立て冷静な表情をたもちながらも、馬を走らせる私は内心愚痴りまくりだった。
使者からの報告が遅れるように前線よりの陣頭にしたにも関わらず、プロメテウスが報告に来たことだった。
夢の中とはいえ、ゲームの設定に忠実すぎる内容に舌打ちをした。
設定では最初に選択肢は存在しないが、2巡目になるとプロメテウスからの報告を聞くのを拒否することができるのだが、もしも【聞かない】を選択すると怒ったプロメテウスが「そんな聞き分けの悪い総司令官には、お仕置きだ!!」と叫び、画面が真っ黒になったと思った瞬間、オープニング画面に切り替わるという素晴らしいお仕置きが用意されていた。
もしかしたら【帝国物語】で登場する人物の中で、プロメテウスが最強の人物かも知れない。
神の所業としかえいない、お仕置きができるのだから。
やっぱり帝都に戻らず、このまま追撃やら進撃しとけばよかったかも?
本編と外れた別ルートのエンディングの数々思い出しながら眉間に皺を寄せた。
帝都に戻るか、戻らないかの選択が別の物語を思い出しているが、帝都に戻らないということは二度とサンドリア帝国に戻れないことを意味していた。
サンドリア帝国に戻れなくなったクロノスは、そのまま軍を進めて他国の王になったり、または軍を解散させて流浪の身になり様々なルートのエンディングが用意されていた。
だが、私はその数々のエンディングを「満足できるほどに見た」という単純な理由から帝都に戻ることにした。
ゲームの設定通りに忠実に物語が進んでいく。
皇帝陛下危篤、という帝都からの報告を受け完勝していたにも関わらず、敵軍を追撃するのを止め、帝都への道を急いでいる。
少しでも遅れることは許されないものだった、そして皇帝陛下である父帝を待たせてはいけない。
七日以内に帝都に到着しなければ、クロノスの命は亡き者にされてしまうのだから。
☆☆☆
六日間の急行軍によって私はサンドリアの帝都に到着した。
いや~、本当に疲れました。
帝都が見えてきたとき思わず心の中で呟くほどに、頑張って急いだ結果予定より一日早く帝都に到着できた私は安堵のため息を吐きだした。
ゲームでのクロノスの行動を思い出しながら動き、皇宮へアレスをはじめ数名の軍高官を連れ馬をはしらせた。
石畳の街路を抜けると皇宮の正門でプロメテウスが開門を呼びかけ、私はゲームで何度も見て知っていたが「夢の中の癖に、リアルぽくなると無駄にデカイ門に見えるのね?」と妙に感心していた。
門扉が開き、近衛兵が声を高らかに内門に私の来場を告げ終えている。
皇宮内はゲームで見知っている光景があるかと思えば、夢の中とはいえ妙にリアルに目の前に広がり、ゲーム画像のときとは違った印象や迫力に目と心を奪われながら進んでいくうちに、気づけば侍従や廷臣たちが群がる広間に立たされていた。
「父…いや、皇帝陛下のご病状は?」
私は用意していたゲームの設定どおりにクロノスのセリフを言えば、侍従の返答も無感情に、そして忠実に決められたセリフを口にしていた。
「遅うございました。陛下は既に息をお引取りになり、殿下との対面かなわず、臣らも真に残念でございます」
本当は残念とは思ってない癖に、よくそのセリフが言えるよな…
私は内心とは裏腹に、設定通りクロノスとして次の行動を起こすことにした。
顔を青ざめ疲労と失意に打ちひしがれてるように見せ、周囲に群がる廷臣たちを無視するように弱弱しく、ただひとり父帝の病室に歩み入っていく。
ウハハハ、六日間の急行軍の成果で顔を青ざめるくらい朝飯前よ!!
あまりの名演技ぷりに、噴いて笑い声が出そうになるけれど必死に我慢よ、我慢!!
一応これは憑依ものです。
主人公は未だ、これは夢だと思い込んでいます。
これを夢だと思わなければ主人公は本国に戻ったりしません。
あと戦記ものになる予定は今のところないです。




