第3話
敵軍視点です
タブナジアの国王から女王に変更です。
夜にはいってメリクリウス老将軍は、ようやくサンドリア軍の追撃をかわし、敗軍をまとめることができた。
惨敗とはこのことであった。
出征したタブナジア軍の将兵は10万を数えたのに、このときメリクリウスが確認できた生存者は3万をこす程度にすぎなかった。
ただこの時若いアリオーン将軍は殿軍を指揮してサンドリア軍となおも戦っており、その兵力を合わせればどうにか全軍の半数は生き残っているかもしれない。
だが、全軍の一割が戦死すれば、たとえ勝っても誇りえないというのが兵学上の常識であるというのに、全軍の半数を失うとは30年の戦陣歴を誇る老将軍にとって受け入れがたい事実であり、目がくらむほどの屈辱であった。
「それにしてもなぜ、サンドリア軍は追撃してこないのだ?」
敗北に打ちのめされながらも、メリクリウス将軍は疑問が頭から離れることはなかった。
その疑問の解答を口にしたのは、敗軍をまとめ終え殿軍を指揮して苦戦をかさねてきたアリオーン将軍だった。
赤い髪と空と同じ蒼の瞳えをしたタブナジア王国では最年少の将軍であり、死闘の中で兜を失い乱れた髪と、全身に受けた返り血を帯びた姿で老人に告げた。
「サンドリア軍は本国の方角へ引き上げていきます。かなり急いでるようで、我が軍から奪ったはずの食料や武器甲冑等を置き去りにしております」
メリクリウス将軍は、半白の眉をそめ眉間にしわを作りあげながら、常識に反するサンドリア軍の行動が何を意味するのか考えた。
名将の老いた頭脳は、昔と違い明快な弾力を失っており容易に納得のできる解答をもたらすことができずにいた。
「私が思うに、サンドリア本国で何か重大な事が生じたのではありませんか?メリクリウス将軍」
「重大な事?」
「たとえばアガメムノーン3世の病状が悪化したとか…」
「ふむ、噂が真であれば、ありえそうなことだ」
老将は眼光をするどくし、一人考え込むように俯くとサンドリア王国の内情を思い出していた。
サンドリア帝国第16代皇帝アガメムノーン3世は昨年から病床にあると言う噂があり、後継者の地位をめぐって宮廷内で陰ながら争いが耐えないという。
もしも皇帝が死去したとなれば、すでに勝利をえたクロノス大公が追撃を控えて本国へ帰還するのは当然の事であるし、もしも帰還するのが遅れればクロノス大公が戻るべき場所を失うこととなる可能性もある。
だがそれはタブナジア軍にとって帰路を急ぐサンドリア軍の後背を襲う絶好の好機ではないか?
その様な考えがメリクリウスの頭を横切り、その考えを目の前にいるアリオーンに伝えると、若き将軍は顔を歪め制止するように老将に話しかけていた。
「無益です。サンドリア軍は完璧なまでの勝利を手に入れ並の将ならば浮かれて足元を引くこともできましょうが、今回の将は名将と言われるクロノス大公であり、いかに帰路を急ぐとはいえ逆襲の態勢を整えておりましょう。甘く見ては痛い目を見るだけかと」
「たとえ名将と言われても人の子だ。クロノス大公が食料や武器甲冑等を捨ててまで帰路を急いでいる、とそう申したのはお主ではないかアリオーン将軍。この絶好の機会を逃すようでは、戦での武勲を得ることは難しいぞ」
「………」
アリオーンは沈黙した。
老いて柔軟さと視野の広さを失ったように見えるメリクリウス将軍を、アリオーンはそれ以上制止せず、一万に満たない兵だけを手元に残して、メリクリウス将軍の率いる四万強の兵の再進発を見送った。
どうせすぐに戻ってくだろうと思っていたが、予想より早く的中し夜も明けきらぬ内にメリクリウスは更に半減した兵を引き連れて帰ってきた。
何で兵が半減しているのか?などとアリオーン将軍は問いただすことはしなかった。
「アリオーン将軍、お主の言うとおりであった。わしの不覚で貴重な兵を失い、いたらぬ上にいたらぬ結果となってしまった」
自己の非を素直に認める老人は率直であった。
アリオーンは内心無意味に失った兵の事を思うと怒りを感じていたが、老人を制止するのを途中で止め見送ったのも事実であり、ただ静かに静かに耐えながら自分の先見を誇ることもしなかった。
「それよりも今後が心配です。もしもクロノス大公が帝位につき、サンドリア帝国が強化すれば、我がタブナジア王国にとってはゆゆしき事態。速急にサンドリア帝国の内情をさぐり、必要な措置を講ずるべきでありましょう」
「お主の言うとおりじゃ。ただちに女王陛下に報告申し上げ、わが国としての態度を決していただこう」
老人の声を聞きながらアリオーンは雪と氷をまとった国境の山々を見て、彼は隣国サンドリア帝国がどのような変動が生じるのか安易に判断できずにいた。
なんだか昔読んだ小説の書き方をそのまま真似てるかも?
でも真似てるのは最初の数話だけだと思いたい…




