第五話 裏
背後でオーク材の扉が閉ざされる音が聞こえた。
父子の対面に異物が介入することを防ぐように気を使った侍従の心遣いでもあった。
ゲーム設定でのクロノスの父である皇帝アガメムノーン3世は、冷厳で猜疑心の強い人物だった。
他人を信用することができず、己の娶った妻である皇后でさえも猜疑心のあまり僻地へと追いやり、未だに帝都に戻ることが叶わずにいる。
クロノスの二人の兄、二番目の兄は戦場の中で父帝の猜疑心によって使わされた者に暗殺され、もう一人の一番目の兄は皇太子に立てたにも関わらず、父帝に反逆を疑われ毒殺されてしまった。
私はこれから起きることにある程度予想を付けながらも巨大な暖炉のそばを歩み過ぎ、父帝の寝台へと足を進めていた。
父帝の枯木色の顔を一瞥しただけで、目をそらし近くに置かれているソファーに座り込むんだ
私は、これから起こるであろう『試練』と言う名のイベントの一部を思い出していた。
ゲーム設定通りのクロノスは、額から汗を流し、内心は安堵感で目がくらんでいた。
戦場にあっては怖れを知らぬといわれたクロノスは、どれほど父帝を恐れていたか…
彼は幼少の頃より上二人の兄とは違い、叩き込まれた暴君としての父の恐怖により呪縛から解き放たれると内心喜ぶのだが、それは過去のこととして、大きく吐息し両目を閉ざし忘我の淵に身心をひたした。
だがそれも短い時間であった。
想像もしない、死んだと思われる父帝の声が聞こえるまで…
本編通りだとクロノスは、その後父帝に手をかけ殺してしまうのだが、ここに開発者の心意気と言うかお茶目心が2巡目以降いかされており、この病室に入った後、最初の本編では出てこなかった選択肢が出され、本編とは違う選択を選ぶとその瞬間バットエンドになってしまう悪ふざけのようなものがあった。
【クロノスは父帝の死に対してどの様な対応をするか? A喜ぶ/B悲しむ】
ここでAを選ぶの者は結果がどうなるか知らないうちは普通に選ぶだろう。
Aを選択し喜んだ後、父帝は起き上がることはせずそのままクロノスは病室を退室するが、それから日を置かずしてクロノスは父帝の使わした兵達に捕まり、父帝に対して反逆の意思ありとして斬首されてしまう。
…あれだな、ある意味これも衝撃的なエンディングの一つだよね。斬首ってなによ?って思うけれど当時それを見た私は噴いて大笑いした。
まてよ?もしかして今私もここで笑ったり喜んだりすれば、あの衝撃的なエンディングと同じ道をたどることになるんじゃ…
だ、大丈夫だ!まだ笑ったり喜んだりした仕草は一切まだ出していないはず!!
そもそもクロノスとして少しは悲しむ仕草をまだ何もしてなかったような?
ヤヴァァァイ!!流石に夢の中とは言え斬首なんて、なんて夢見の悪い!!
私はエンディングの一つの内容を思い出し、そのルートにのってないか恐怖し顔を青ざめ両目を閉ざし体を小刻みに震わせながら必死に病室に入ってからの自分の行動を思い出していた。
普通のゲームだとバットエンディングとかは一つか二つくらいだけど?
設定の【帝国物語】は数多くのバットエンディングがある予定です。
ですから主人公はゲームの主人公クロノスになりたいとは一度も思ったことはない。




