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eye love you  作者: 高嶺清麿
3/5

第三話:絶望

二人の過去の話その2です

 浩二をボディーガードにしてから入院者数74人。私はどれだけの人に憎まれたのかと自暴自棄状態になりそうだった。


 あたりまえのようにいじめは無くなり、浩二とはもう彼氏と彼女の関係になった。

 ついには、学校で一番仲が良いカップルとして有名になる程になった。


「愛美高校生になったら結婚しそぅじゃねえ」

 と、いじめっこの一人が言う程仲が良いらしい。


 そして私達は中学を卒業した。

 中学卒業祝いは、カラオケで行われ、酒持ってこいって騒ぎになるぐらいだった。

 しかも私も浩二もインディーズ系が好きでカラオケもほとんどが知ってる人が少ない歌ばっかりだった。

 最近浩二が歌ってるのはインディーズのラブソングばっかなのです。

「今夜僕は君の為だけのぉ、追い風になる事を誓うょ」

「恋人よぉ、恋人よ」

「人の愛に触れた時は、優しい気持ち溢れてるから」


 ラブソングのオンパレードに私のハートもキュンとなった。

 ちなみに上からSHACHIの祈りウタ、かりゆし58の恋人よ、鴨川の愛のウタ。みんな知ってるかな?



 しかも浩二は歌が上手いからマジヤバい。もう…かっこよすぎだよお。

 

 歌い終えた浩二にベタボレしていると、浩二がいきなりチュウしてきた。

「はゎゎ、どぅしたの」

「マジ可愛い」

 急に浩二が私に覆い被さった所で、私は何をされるのかもうわかったから、抵抗もしなかった。



 その瞬間、私は処女では無くなった。

 入った時の幸せは、世界一かもしれない。私はもうこのままなら赤ちゃんも作っていいと思った。

 幸い、カラオケのソファーは赤い革だったから血は目立たなくて、浩二はあれを持ってたから妊娠はしなかった。

 カラオケに行く前からやろうと思っていたらしい。

「浩二…。マジ大好きだよ」

「俺も大好きだよ」

「ずっと一緒だよ」

「うん」

 二人は愛を確かめるようにチュウをした。



 私と浩二は同じ高校に行き、ずっとラブラブしていた。

 そのラブラブさにみんなドン引きしていたのか、私も浩二も告られる事は無く、順調に愛を育んだ。




 そして、特大イベント、家族に挨拶するというイベントの季節が来た。

 私は恐さの分、浩二の手をギュッとして和らいでいた。




 まずは、私の両親から。



 浩二を家族の前に出した瞬間、父が涙ぐみ、握手をしながら『ありがとう、ありがとう』と呟いでいた。

 浩二がいじめを止めてくれたというのを聞いてから、何度も礼を言いたかったらしい。

 とりあえずクリア。




 続いて、浩二の家族。

 浩二の家族は、両親と妹。


 私が家族の前で姿を見せた瞬間、浩二の両親や妹、琴美さんもニカッとした。

「いんゃぁぁ、よかったよぉ、浩二の事だからまるでスケバンの椿塚のような奴かと思ったよ」

「お父さん、桜塚やっくんですよ」

 私が訂正すると、お父さんがまたニカッとし。

「そうだなぁ、桜塚だな桜塚ぁ!!カカカカカ!!」



「うるせえよ!!」

 浩二がさすがにキレた。

 やっくんと呼んであげてください。


 琴美さんも兄同様バンドが大好きで(特にマキシマム・ザ・ホルモンらしい)、話が合いすぎて、浩二に『愛美さんうちがもらう!!』と断言していた。




 結果、どちらも家族公認の仲となり、後は愛を育むだけになった。

 



 高校も現役で卒業し、二人とも就職して、同棲もし始めた。


 浩二はゲーム会社、私はお菓子会社のパッケージのデザインを担当する事になった。


 運がよかったのか。浩二と私の休日が重なる日があって、その日は部屋でラブラブしたり、どこかに出掛けたりしていた。



 そして結構お金も溜まった頃に、結婚式場の予約をした。大きいホテルの中で行われ、部屋の中はすごい綺麗で、盛大な結婚式になるようにした。


「浩二、楽しみだね」

「うん、もしここで俺が死んでも、化けて結婚式やるから」

「縁起悪い事行っちゃダメ。てか、私が死なせないから…」



 一瞬父の死がフラッシュバックして蘇る。

 まさか…。という不安が頭をよぎる。でも…。そんなの嫌…。もう大切な人が死ぬなんて嫌…。



 次の日、新作のスナック菓子のデザインが決まらずにもう百以上のデザインを考えていた。

 スナック菓子のデザインは、スーパーやコンビニで一際目につき、ちょっと食べてみるかって思わせるようなデザインじゃなきゃダメだから…私はとりあえずいろいろ考えていた。


 時計を見ると、午後十時。会社にはもう誰もいない。今日は徹夜かぁー。

 私が決意のあくびをすると、携帯の着信音が鳴った。琴美ちゃんからだ…、なんだろう。



「もしもし」

『あっ、愛美さん…。お兄ちゃんが…』

「えっ…」



 私は机の上にあった車のキーを握りしめ、オフィスを出た。

 駐車場に付き、何回も何回もキーを回すと、エンジンが付き、アクセルを強く踏み急発進させた。



 嘘。絶対嘘。浩二が…。




 病院のある部屋に着くと、涙を浮かべた浩二の両親と琴美ちゃんがこっちを見ている。

 申し訳なさそうに会釈をしている医者に応え、ゆっくり、ゆっくりと進む。

 頭まで掛け布団を掛けられている人型の塊…。まだ嘘だと思いたい…。




「車線をはみ出した、居眠りトラックと正面衝突したそうだ」

 嘘だという希望を崩したのは、唇を噛み締めながら状況を伝えたお父さんだった。



「愛美さぁん」

 今まで我慢してたのか、琴美ちゃんが私に抱き付く。



「嘘でしょ…」

 私は涙をボロボロ流しながら力を振り絞って呟く。

「嘘って言ってください」

 私は医者に言ったが…、医者は首を横に振った。

「あなたがもっとちゃんとすれば…浩二は死ななかったはずです」

「…!!」

「ちょっと、愛美さん…」

 琴美ちゃんも停めるが、私は止めなかった。

「あなたがちゃんと処置をすれば、浩二は…」

「私はちゃんとやりました」

「じゃあなんで浩二は死んだの!?あなた医者でしょ!?人の命を助ける為にあなたたちがいるんでしょ!?なのに…」

「私だって桐原に助けられた人間なんです!!」

「えっ…」

「桐原がいなかったら私は医者になってませんでした…。他にもあいつに色々助けてもらった。だから頑張ってたんですよ!!恩返しするのがチャンスだと思って今までの知識、技術をすべて使ってたんです…。なのに…くそぅ」



 医者はボロボロ涙を流しながらその意志を伝え、その後、座り込んだ。

「原田くんはよくやったよ…」

 お父さんが医者の肩をポンと叩いて言った。




 私には、絶望しか無かった。


 絶望の分だけ涙が出てくる。


 どれだけ涙を流しても浩二は戻って来ないけど…。




 

「イャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」

 私は病院内に響くような叫び声をあげて、ずっと泣いていた。




 桐原浩二。享年23歳。死因、事故死。



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