第二話:ボディーガード
この話は二人の過去の話です。
私、大里愛美はいじめられっこだった。
特になんの理由もなくただ“いじめ”られた。
机に刻まれたメッセージは、テストの時はすごい迷惑だった事は今でも覚えている。
小学校から始まってたいじめを止めたのは、中学二年生の時に父親の転勤で転校してきた男子生徒。名前は桐原浩二。
浩二は転校が慣れてるのか、自分の席の周りともう仲良くなって翌日には数人といつも行動していた。私はそんな浩二がすごいなぁと思って憧れを抱いた。
私はいつも校門の前に行くと気分が悪くなる。
生徒指導の先生の挨拶も、私の耳に届く前にかき消される。
でも、行かなきゃ。
母の涙を、母の夢を…。私が叶えなきゃいけない。
私は門をくぐった。
父が事故で死んだのは五歳の時。
その時は、家族で遊園地に行った時だった。
「パパ、ジェットコースター恐かったね」
「まあな」
「ジェットコースター落ちたらみんな死んでたよね」
「演技が悪い事を言っちゃダメだよ」
そんな会話もしちゃってた。
その帰りに、父が運動した車が、橋の下に落ちた。
車線をはみ出していたトラックをよけた時だった。
あの時飲んだ海水より…。
涙の方がしょっぱい事に気付いた。
母は父の仏壇の前で、涙をたくさんこぼしていた…。
人って不思議だよね…。
涙を見ると、泣きたくなっちゃう。
でも、泣かない人もいるんだね。
そう思いながら私はいじめられている。今日は、便器の水を飲めだって。
飲んで何になるの…?
教室に戻ると、黒板消しを当てられた。痛いてよりも、制服が汚れるのが嫌だった。
暗闇の服が徐々に明るさを取り戻す。偽物の光だけど。真っ白になってゆく制服を見て、私の記憶も真っ白にしてほしかった。“いじめ”という単語を、消してほしかった…。
「バーカ」
「早く死ねばぁ」
真っ白になった制服を着た私を蹴り飛ばす。制服からチョークの粉が出て来た。ここは災害が多いから逃げるぞ!!と言ってるように見える。
そのいじめを笑い飛ばすクラスメート。
そこからかな。私の手首に傷跡が刻まれたのは…。
チャイムが鳴ると、いじめっこやクラスメートが我に返ったように席に戻った。ガタガタという椅子の音が私の神経を蝕む。
次の授業は怖い先生だかんね。
先生が教室に来る。誰がやったのかわからないけど、黒板消しがちゃんと黒板にセットしている。みんなは先生に怒られるから、ちゃんと授業の準備もしている。
怒号のターゲットにされたのは、真っ白い制服の私。
「大里!!早く席につけ!!」
みんなが一斉に私の方を向く。
あれ、なんでここにいるの?としらばっくれる感じで私を見る。その視線には、愛情など無い。
1人だけ、私を見てない。私になんか興味無いんだね…。
「なんで真っ白なんだ!!まったく、こうゆう生徒がクラスの風紀を乱すんだ!!」
違う…。先生…わかって…。
そんなん想いを、とぼけたクラスメートの笑い声がかき消す。
「じゃあ授業始めるぞ」
ドゴッ。
全然聞いた事が無い音。黒板消しが落ちた音でもないし、ボールが当たった音でもない。
その音とは…。
「桐原、何やってるんだ!?」
「桐原君…」
浩二が、いじめの首領をグーで殴っていた。みんなが笑っている間に、殴る準備は出来ていたようだ。
いじめの首領はフワッと浮いた後、周りの机や椅子に背中で体当たりして、ダメージを喰らった椅子や机は数センチ動いた。
みんながざわめき、先生はあたふたとし、浩二の友達は浩二に近寄り、私は立ち尽くしていた。
そして浩二は…。
「あっ、わりぃ」
と謝罪していた。
首領は保健室、浩二は生徒指導室へと連れてかれ、授業は自習となった。
自習の時間はチャンスタイムとか言って、裁縫セットにあるまち針でダーツをしていたのに、首領がいないのもあるのか、気持ち悪いぐらい何もされなかった。
その日を境に、私のいじめは無くなった。
数週間後、私の家に浩二が来た。
「これ、まだ募集してるの?」
はぁ!?と思って、浩二が差し出した紙を見てみると…。
「ボディーガード募集中!!」
と私じゃない人の直筆で記されていた。
「これって…」
「俺は大里を守りたい。腕っぷししかないけど、俺の隣にいてくれませんか?」
なんと意外性のある告白。
あの字は浩二の直筆だった。
私は浩二がすごい可愛くて可愛くてついOKした。
私と浩二はボディーガードという形で付き合う形になった。
付き合う事になった二人。そして、