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文字信仰 4
霧が、押し寄せてくる。
なんと愚かだったのだろうと、消え入りそうな意識の片隅で、己の無鉄砲さを呪う。
まさか、自分の存在そのものが、呪いだのなんだのと評されているとは思いもせず、最愛のひとに思いを馳せる。
「必ず……必ず、助けに行きます、エスメリア」
霧は濃い。
身体が蝕まれていくのを、はっきりと感じた。しかし、それだけだ。もう、動くことはできない。
彼女は、どんなに心細い思いをしているだろう。
冷たい牢獄に入れられたに違いない。
食事を取ることもできず、毛布も与えられず、心細さに泣いているに違いないのだ。
スノウは、目を閉じた。
助けを求めることすらできず、命を落とすわけには、いかない。
目的地は、もうすぐそこだ。
そこに、いるはずなのだ。
最後の力を振り絞り、スノウは獣の小さな手を、持ち上げた。




