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虹とロン毛(笑)

作者: かいちょ
掲載日:2026/09/21

失業中のギタリスト、ロン毛。


23歳。


仕事はない。あるわけない


金もない。あるわけない。


そして、彼女もいない。いるわけない。


ロン毛「……今日も暇だな」


ギターを背負い、エナドリを持ち、目的もなく街を歩いていた。


ロン毛「誰か俺の才能に気づいてくれないかな…小説家なら才能使えっかな〜……」


その瞬間――


ゴンッ!!


ロン毛「いってぇぇぇ!!」


電柱に思い切り頭をぶつけた。


ロン毛「……最悪だ」


電柱「おい」


ロン毛「……?」


電柱「大丈夫か?」


ロン毛「…………」


電柱「おい?」


ロン毛「電柱が喋ったぁぁぁ!!」


電柱「うるせぇな」


ロン毛「なんで!?」


電柱「俺が聞きたいよ」


ロン毛「頭ぶつけたせいか……?」


電柱「たぶんそうだろ」


ロン毛「適当だな!」


こうしてロン毛は、自然や物の声が聞こえる不思議な能力を手に入れた。


数日後。


ロン毛は公園でギターを弾いていた。もちろんエナドリも片手に。


ロン毛「ゆらゆら~踊るっ火の粉燃えろ燃えろ♪」


風「今日のギター、ちょっといいね」


ロン毛「あんがと」


風「返事するんだ」


ロン毛「もう慣れた」


そこへ、一匹の鳥が飛んできた。


鳥「ロン毛、上」


ロン毛「ん?」


空を見上げる。


そこには大きな虹がかかっていた。


虹「ロン毛さん」


ロン毛「……誰?」


虹「私」


ロン毛「どこ?」


虹「空」


ロン毛「いや、分かるか!!」


虹「虹だよ」


ロン毛「……虹も喋れるのか」


虹「うん」


ロン毛「なんで俺に話しかけてきたの?」


虹「ずっと見てたから」


ロン毛「俺を?」


虹「うん」


虹「ギターを弾いてるロン毛さん、楽しそうだった」


ロン毛「……」


虹「それに……」


ロン毛「それに?」


虹「ロン毛さんの性格、私に合ってる」


ロン毛「……なんか照れるな」


その日から、二人は話すようになった。


そしていつしか


恋人になった。


虹「ロン毛、今日はどこ行く?」


ロン毛「どこでもいいよ」


虹「じゃあ夕焼け見たい」


ロン毛「えーだるっ、しね〜まあいいや。」


虹「本当?」


ロン毛「うん」


虹「約束ね」


ロン毛「はいはい」


しかし、その日の夕方。


虹「ロン毛くん、まだ?」


ロン毛「ごめん。忘れてた」


虹「……」


ロン毛「めっちゃ寝てた」


虹「そっか……」


ロン毛「そんな怒る?怒るなら起こしてくれたらいいのに」


虹「怒ってないよ」


ロン毛「ならいいじゃん」


虹「……うん」


別の日。


虹「ロン毛くん、私のこと好き?」


ロン毛「好きだよ」


虹「どこが好き?」


ロン毛「えーわかんねー」


虹「……」


ロン毛「何?」


虹「それなら誰でもいいんじゃない?」


ロン毛「まあね」


虹「……」


また別の日。


虹が他の自然たちと話している。


ロン毛「何話してたの?」


虹「夏の朝と話してた」


ロン毛「なんで?」


虹「普通に話してただけだよ」


ロン毛「俺がいるのに、他の奴と話す必要ある?」


虹「……え?」


ロン毛「俺と付き合ってるんだから、もう少し考えてよ」


虹「ただ話してただけだよ?」


ロン毛「そういうところだよ、それだからお前はダメなんだよ」


虹「……ごめん」


ロン毛「謝ればいいと思ってる?」


虹「……」


少しずつ変わる虹


ある朝。


虹「ロン毛」


ロン毛「何?」


虹「最近、ちょっと寂しい」


ロン毛「俺だって忙しいんだけど小説書いたり、本読んだり」


虹「……」


ロン毛「お前いっつも自分のことばっかりじゃない?」


虹「そういうつもりじゃ……」


ロン毛「じゃあ何?」


虹「……なんでもない」


ロン毛「だったら最初から言わないでよ」


虹「ごめん」


ロン毛「ほら、また謝る、うぜーからやめて?」


虹は何も言えなくなった。


その様子を見ていた電柱。


電柱「……ロン毛」


ロン毛「何?」


電柱「お前、最近ちょっと酷くないか?」


ロン毛「何が?」


電柱「虹に対してだよ」


ロン毛「俺は普通に接してるだけだけど」


電柱「虹、最近よく泣いてるぞ」


ロン毛「泣きたいなら泣けばいいだろ(笑)」


電柱「そういうところだよ」


ロン毛「電柱に恋愛の何が分かるんだよ(笑)」


電柱「少なくとも、お前より人の気持ちは見てる」


ロン毛「……」



決定的な出来事


ある日。


虹がロン毛にプレゼントを持ってきた。


虹「ロン毛くん」


ロン毛「ん?」


虹「これ、プレゼント」


ロン毛「何?」


虹「かわいいコップ!ロン毛に似合うかなーって」


ロン毛「へぇ」


ロン毛はコップを眺める。


ロン毛「これ、売れないかな?」


虹「……え?」


ロン毛「メルカリとか」


虹「……」


ロン毛「冗談だよ」


虹「ロン毛」


ロン毛「ん?」


虹「私たち、別れよう」


ロン毛「……は?」


虹「別れたい」


ロン毛「なんで?」


虹「あなたが私を大切にしてくれないから」


ロン毛「大切にしてるだろ(笑)」


虹「してないよ」


ロン毛「俺、結構我慢してるんだけど(笑)」


虹「何を?」


ロン毛「虹と付き合って、関わってあげてることめっっちゃ我慢してる(笑)」


虹「……」


ロン毛「だって俺、本当ならもっと普通の女の子と付き合えるし、ただリアルにいい女いないだけだよ(笑)」


虹「……そう」


ロン毛「虹ってちょっと面倒くさいんだよ(笑)」


虹「……」


ロン毛「すぐ泣くし(笑)」


虹「……」


ロン毛「すぐ怒るし(笑)」


虹「……」


ロン毛「俺が悪いみたいにするし(笑)」


虹「……私が悪いの?」


ロン毛「そういうところだよ(笑)」


虹は黙った。


しばらく空を見つめたあと、静かに口を開いた。


虹「……私、ロン毛と付き合ってから、自分のことが嫌いになった」


ロン毛「……」


虹「何を言っても否定されて」


虹「悲しくなっても『面倒くさい』って言われて」


虹「私が傷ついても、『俺を怒らせたほうが悪い』って言われて」


虹「いつの間にか、何も言えなくなった」


ロン毛「……」


虹「最初は好きだった」


ロン毛「……」


虹「今も、嫌いになったわけじゃない」


ロン毛「じゃあ」


虹「でも、もう一緒にはいられない」


ロン毛「待ってよ」


虹「……」


ロン毛「俺、変わるから(笑)」


虹「本当に?」


ロン毛「うん」


虹「じゃあ、私がいなくても変われる?」


ロン毛「……」


虹「私のためじゃなくて、自分のために」


ロン毛「……分からない」


虹「それなら、今は無理だよ」


虹の姿が少しずつ薄くなっていく。


ロン毛「虹!」


虹「何?」


ロン毛「俺……お前のこと好きだったんだけどなー」


虹「『だった』?」


ロン毛「……うそうそ(笑)好きだよ(笑)」


虹「うん」


ロン毛「戻ってきてくれよ!」


虹「ごめん」


ロン毛「……」


虹「私、自分を大切にすることにしたから」


虹は静かに空へ消えていった。


そして


ロン毛は一人、空を見上げていた。


ロン毛「……行っちゃったwwww」


電柱「お前が悪い」


ロン毛「分かってるよwwww」


夏の朝「ロン毛」


ロン毛「何?」


夏の朝「人を好きになるなら、その人を自分の思い通りにしようとするんじゃなくて、その人がその人らしくいられるようにしてやれよ」


ロン毛「……」


風「まあ、今のお前には難しそうだけど(笑)」


ロン毛「風まで言うのかよ」


電柱「当然だろ」


ロン毛「……俺、最低だったな」


電柱「やっと気づいたかこのバカ。」


ロン毛「……」


ロン毛はギターを取り出した。


そして、虹に向けて一曲弾き始めた。


曲が終わる。


ロン毛「……虹」


返事はない。


ロン毛「……また会えるかな」


その瞬間。


雲の隙間から、ほんの小さな虹が現れた。


ロン毛「……!」


虹「ギター、ちょっと上手くなったね」


ロン毛「虹!」


虹「でも、復縁はしないから絶対wwwwwwww」


ロン毛「まだ何も言ってない!」


虹「顔に書いてある」


ロン毛「……」


虹「友達なら、考えてもいいよ!」


ロン毛「じゃあ友達から――」


虹「復縁はしないよ♪顔も見たくないよ♪」


ロン毛「はい……」


虹「じゃあね、ロン毛くん♪」


ロン毛「……またな」


虹は空の向こうへ消えていった。


ロン毛「……」


電柱「よかったな」


ロン毛「何が?」


電柱「振られた理由が分かって」


ロン毛「……うるせぇ」


電柱「あと、次の恋愛ではちゃんと相手を大事にしろ」


ロン毛「……努力する」


電柱「『絶対』じゃないのか?」


ロン毛「……絶対」


夏の朝「珍しく素直だねwwww」


ロン毛「うるさい」


空には、虹が残した七色の光がほんの少しだけ残っていた。


人を好きになることは、その人を自分のものにすることじゃない。


ロン毛はその日、初めてそれを知った。

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