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おかあさんの味方【最愛の人に大事な言葉を伝えたくてタイムワープで会いに行く!気まぐれ時間を歴史改変しまくって!】  作者: 藤台団二


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第四章「聖母の変質と、親不孝者の誤算」

歴史改変の代償は、肉体の消滅だけではありませんでした。 超高度文明化した昭和という歪な世界で、母・美智子は海人の知らない「強い女性」へと変貌を遂げていきます。

「お母さんを救いたい」という純粋な願いは、いつしか「自分の知っているお母さんを返してほしい」というエゴへと形を変えていくのか。 時間の濁流に身を任せるコーワードと、画面越しに絶叫する海人。二人の運命が、さらに加速する第四章です。


「……海人さん。この『ホログラフ端末』っていうの、便利ねえ。お買い物に行かなくても、お魚が玄関まで転送されてくるわ」

二十年前の町田市。美智子は、コーワードが適当に教えた未来技術をあっさりと使いこなし、浮遊するキッチンで鼻歌を歌っていた。  かつての彼女は、慎ましく、どこか控えめな「昭和の母親」だった。しかし今の彼女は、最先端のガジェットを操り、自分の人生を謳歌する「自立した女性」の顔をしている。

現代の地下室。海人は、血走った眼でモニターを睨んでいた。 『違う……こんなの、僕のお母さんじゃない! 母さんはもっと、こう……古臭いエプロンをして、煮物の匂いがして、僕の反抗期にオロオロするような、そんな人だったんだ!』

通信機越しに響く海人の慟哭。  コーワードは、自動給茶機から出てきた得体の知れない青い液体を啜りながら、面倒そうに答えた。 「贅沢言うなよ、お坊っちゃん。死ぬはずだった因果は消えた。お袋さんはピンピンして、人生楽しんでる。これ以上の成功があるか?」

『成功なものか! 彼女の性格が変われば、僕という人間が生まれる確率も変わる。……見てみろ、僕の右手が消えかかっている!』

海人の叫び通り、彼の右腕はノイズのように透け始めていた。  歴史を改変しすぎた弊害だ。美智子が「良妻賢母」という型から外れ、自分のために生きる喜びを知ってしまったことで、海人が生まれるはずだった「退屈で平穏な家庭」という未来が消滅しつつある。

「あー……そりゃ困ったな。右手がなきゃ、タイムマシンの操作もできねえし」  コーワードは立ち上がり、美智子の背中に声をかけた。 「なあ、奥さん。あんた、子供とか欲しくないのか? ほら、こう……生意気で、理屈っぽくて、母親思いだけど素直になれないような、そんな息子とかさ」

美智子は動きを止め、少しだけ寂しげに笑った。 「……不思議ね。そんな子がいたら、きっと楽しいんでしょうけど。でも、今の私は、この広い世界をもっと見てみたいの。海人さんが教えてくれたんでしょ? 『あなたは不幸になっちゃいけない。自分の幸せを一番に考えて』って」

それは、第一章で海人が(コーワードを通じて)放った言葉のブーメランだった。  海人が望んだ「母の幸せ」は、皮肉にも「息子である海人の存在」を必要としない形へと進化してしまったのだ。

『コーワード! 今すぐ修正しろ! 母さんを……母さんを、元の「お母さん」に戻すんだ! 適当な嘘でもいい、歴史を再改変しろ!』

海人の命令は、もはや支離滅裂だった。  だが、コーワードは動かない。彼の「ずぼらな神経」は、時間の負荷をスルーするだけでなく、人間のエゴに対しても極めて冷淡だった。

「お坊っちゃん。あんた、さっきから自分のことばっかりだな」 「……何だと?」

「お袋さんの味方になりたいんじゃなかったのか? 彼女が笑ってる。それが、あんたの見たかった景色だろ。自分が消えるのが怖いからって、せっかく手に入れた彼女の自由を取り上げるのかよ。……そりゃ、一番の『親不孝』だぜ」

静寂が通信を支配する。  海人の荒い呼吸音だけが、ノイズ混じりに響いていた。

その時、街全体に激しい震動が走った。  空のネオンが真っ赤に染まり、サイレンが鳴り響く。時間の「いい加減な性質」が、ついに大きなバグを引き起こしたのだ。    歴史の修正力ではない。  コーワードが流し込んだ「無意味な記憶」というゴミが、時間の濁流の中で巨大な塊となり、この世界そのものを押し潰そうとする「特異点」を形成してしまったのだ。

「……おっと。こいつは、さすがに『まあいいか』じゃ済まねえか」  コーワードは、空に開いた漆黒の穴を見上げた。

美智子が恐怖に目を見開く。  その時、海人が通信機を叩き、震える声で叫んだ。

『コーワード……僕のことはいい。母さんを、あの人を守ってくれ! 僕は消えてもいい。彼女が……彼女が笑っていられる世界を、最後まで壊さないでくれ!』

コーワードはニヤリと笑った。 「ようやく、まともな依頼になったな」

彼は懐から、海人が渡した予備のエネルギーセルを取り出した。  廃人になるリスク? 時間の負荷? そんなものは、やる気のない男にとっては「後で考えればいいこと」だ。

「さあて。歴史を改変しすぎて、世界がぶっ壊れる? ……なら、そのガレキの上で、もっとデタラメなパーティーを始めようじゃねえか」

コーワードは、崩壊を始めた空に向かって、全力で中指を立てた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます! 海人のエゴと、コーワードの意外な(?)正論がぶつかり合った第四章。 自分の存在が消えかけてもなお、母の笑顔を守ることを選んだ海人。そして、ついに本気(?)を出したコーワードの運命は!?

この物語の展開に「熱い!」と感じていただけましたら、ぜひ感想や評価をお願いいたします! 次回、崩壊する世界の中での決戦。歴史改変の結末を、どうぞ見届けてください!


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