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おかあさんの味方【最愛の人に大事な言葉を伝えたくてタイムワープで会いに行く!気まぐれ時間を歴史改変しまくって!】  作者: 藤台団二


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第二章「時の濁流と、不適合者の叫び」

愛する人を救うためのタイムワープ。しかし、その代償は想像を絶するものでした。 「時間」という実体のない怪物は、緻密な計算などあざ笑うかのように、すべてを曖昧に飲み込んでいきます。

精神を蝕む時の奔流に耐えられるのは、鋼の意志を持つ者か、あるいは——。 コーワードという男の「いい加減さ」が、狂った世界で唯一の希望となる皮肉な旅路。 歴史改変の裏側に隠された、残酷で、けれど切実な物語をどうぞお楽しみください。


「時間」というやつは、世間で思われているほど厳格なものではない。  むしろ、食い散らかした残飯をそのままにするような、ひどくズボラで、何でも飲み込む「いい加減な怪物」だ。

高橋海人たかはしかいとは、地下室のモニターに映し出されるノイズの塊を睨みつけていた。  最愛の母・美智子を救うため、彼は人生のすべてをタイムワープ技術に捧げてきた。だが、研究を進めるほどに絶望的な事実が浮き彫りになる。

タイムワープには、明確な「向き不向き」があるのだ。

過去へ跳ぶ際、意識は異常な速度で流れる「時間の濁流」に晒される。一秒が万年に感じられ、次の瞬間には一億分の一秒に圧縮される。この不規則で暴力的な時間の進みに、人間の神経は耐えられない。適合できない者が跳べば、脳は情報の負荷で焼き切れ、戻ってきたときには廃人……言葉も、感情も失った「空っぽの器」に成り果てる。

「……僕じゃ、ダメなのか」

海人の適合率は、絶望的に低かった。彼は生真面目すぎた。一分一秒の狂いも許さない彼の神経は、時間の「いい加減さ」に過剰反応し、瞬時にパニックを起こしてしまう。

「おいおい、そんなに眉間にシワ寄せてると、跳ぶ前に脳みそが腐っちまうぜ?」

背後から、緊張感のかけらもない声が響いた。  そこにいたのは、海人が金で雇った協力者、コーワードだった。

コーワードという男を一言で表すなら「適当」だ。  シャツのボタンは掛け違い、カップ麺の残り香を漂わせ、締め切りも約束も守ったことがない。社会的には救いようのないクズだが、彼には唯一無二の才能があった。    「時間のいい加減さ」に、誰よりも適合する「ずぼらな精神」だ。

「コーワード、わかっているのか? 今回のダイブは二十年前だ。失敗すれば君の意識は……」 「へーへー、廃人だろ? 聞き飽きたよ。まあ、今だって似たようなもんだ。昨日何食ったかも覚えてねえしな」

コーワードはあくびをしながら、自作の装置『マザーズ・リベンジャー』の円環の中へと歩を進めた。  海人は拳を握りしめる。母を救いたいのは自分なのに、その役目をこの「いい加減」を絵に描いたような男に託さなければならない。

「いいか、目的は一つだ。僕の母、美智子に会って……」 「『大好きだ』って伝えるんだろ? 暑苦しいねえ。ま、適当にやってくるわ」

起動スイッチが押された。  凄まじい放電とともに、地下室の空気が歪む。

コーワードの視界から、色が消えた。  次の瞬間、脳内に数千万人分の絶叫が同時に流れ込み、肉体が原子レベルで引き裂かれるような衝撃が走る。普通なら、ここで精神が崩壊する。時の不規則な拍動に翻弄され、自己を喪失するのだ。

だが、コーワードは違った。 (……あー、なんかうるせえな。昨日見たパチンコ台の演出みたいだ。適当に流しとくか……)

彼は抗わなかった。時間のいい加減な性質に、自分の意識をそのまま同調させた。  不快な負荷を「まあいいか」で受け流す。その異常なまでのずぼらさが、彼を廃人の淵から救い出していた。

——光が収束する。

目を開けると、そこは昭和の商店街だった。  古臭い看板、埃っぽい空気。コーワードは鼻を鳴らし、ポケットからクシャクシャになった煙草を取り出した。

「さてと……お坊っちゃんのお袋さんは、どいつだ?」

人混みの中に、一人の女性を見つけた。  買い物袋を抱え、穏やかな笑みを浮かべて歩く美智子の姿だ。

コーワードはふらふらと彼女に近づく。海人のような情熱も、切実な悲しみもない。ただ、依頼された仕事を片付けるような、投げやりな足取りで。

「よお、奥さん」

美智子が足を止め、不思議そうに彼を見た。 「あら、私に何か……?」

「あんたの息子から伝言だ。『大好きだ』ってさ。……あー、あと何だっけな。まあいいや、とにかく死ぬんじゃねえぞ。歴史とか何とかが、めちゃくちゃになっちまうからよ」

あまりにもいい加減な言葉。  だが、その瞬間、周囲の空間が微かに震えた。  「時間の怪物」が、コーワードの放った適当な言葉を飲み込み、無理やり歴史の筋書きを書き換え始める。

海人が望んだ形とは違うかもしれない。  けれど、コーワードという「不純物」が介入したことで、歴史の歯車は派手な音を立てて狂い出した。

「さあて、一発改変したところで……どこかにパチンコ屋でもねえかな、この時代」

神経を焼き切るような時の旅から帰還したばかりの男は、そう言って、ありもしない娯楽を求めて歩き出した。  背後で、本来起きるはずだった事故の因果が、霧のように消えていく。


最後までお読みいただき、ありがとうございます! 「タイムワープの不向き」という設定を加えたことで、海人の葛藤とコーワードの特異性がより際立つ展開になりました。 緻密な海人と、ずぼらなコーワード。この正反対のコンビが、いい加減な時間の性質をどう利用(あるいは翻弄)していくのか。

もしこの新しい展開や、コーワードのキャラクターを気に入っていただけましたら、ぜひ感想や評価をお願いいたします! 歴史改変はまだ始まったばかり。次回、さらにめちゃくちゃになる時間軸にご期待ください!


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