第8話 野菜嫌いが農業大学に進学した理由
野菜は嫌いだが、農業は嫌いではない。
これを書くと、たまに不思議な顔をされる。
「野菜嫌いなのに、なんで農業大学に行ったの?」
と。
さて、農業大学に通っている(収容されている)人間の、
大学に通った理由として多いのは、
1、祖父の畑を継ぐため
2、好きな野菜を自分で育てたいから
3、昔やった農業体験が忘れられないから
だいたいこのあたりだ。
だが私の場合は、そのどれにも当てはまらない。
正直に言えば、深い理由はない。
なんとなく進学先を考えて、
なんとなく選んだのが農業大学だった。
最初から農家になる強い覚悟があったわけでもない。
ただの社会人になるまでの時間稼ぎだった。
それと、農業は技術職で、
手に職をつけられそうだと思ったからだ。
さて、そんな農業だが、
やってみると意外と楽しい。
ここで唐突に、
農業の魅力を紹介するコーナーである。
(マイナスイメージばかり植え付けているので)
農業の一番の魅力。
それは――
丹精込めた野菜を収穫して食べること―――。
ではない。
世話をした結果が、
数字としてはっきり出るところだ。
収穫量。
サイズ。
見た目。
味。
頑張ったかどうかが、割と露骨に結果に出る。
さらに、
気温、天候、災害といった
人間にはどうにもならない乱数がある。
その中で、
どう対処するかを考える。
このゲーム性が、
私の性に合っていた。
だから私はこう答えている。
野菜は嫌いだが、
野菜を育てるのは好きだ。
つまり――
野菜は嫌いだが、
農業は嫌いではない。




