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ソシャゲで推し全員に課金指輪を贈っただけなのに、異世界で修羅場が始まった件 ~事後から始まる正妻戦争~  作者: 緋色の雨


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エピソード 2ー11

 魔法生物との戦闘は終わりが見えているが、まだ戦闘中であることに変わりはない。そんな状況下において、周囲をアスペリアの部隊に包囲されている。

 その不利な状況下に、一部の者達が動揺を始める。


「――皆さん落ち着いてください。いつも通り、冷静に対処すれば大丈夫です」


 リーシアの穏やかな、それでいて安心感のある声が戦場に響いた。

 根拠がなにかであるかなんて関係がない。リーシアがいままで積み上げてきた信頼が、その圧倒的なまでの戦歴が、魔装部隊の面々達に安心感を与える。


「――彼女の言うとおりだ。落ち着いて、まずは魔法生物の対処に当たれ!」


 続いてリアナが発破を掛ける。

 崩れかけていた士気が持ち直し、兵士達は魔法生物との戦闘を再開する。


 それを見守っていると、不意に視界の隅になにかが映った。

 それを理解するより早くエーテルギアを起動、一歩飛び下がる。それとほぼ同時、深紅の髪が視界の隅に映った。そう思うと同時、目前で衝撃波が生まれた。

 寸前まで自分のいた場所で、リーシアの剣とヴァネッサの鉄甲が鍔迫り合いをしている。


 リーシアの緋響と、ヴァネッサの暴餓葬脚(ぼうがそうきやく)

 リーシアは、自らもモチーフ武器も完凸で、レベルも最大まで上げている。ヴァネッサはガチャを引く前の状態で、実力差は明白だと思っていたのだが――強い。


 ……そういえば、ガチャ画面での性能は、完凸時の性能だったな。いまの彼女が、そのスペックを誇っているのだとしたらまずい。


 そんなことを考えていると、ヴァネッサはリーシアの押し返す力を受けて飛び下がった。そうして武器を構えると、俺の方を睨み付けてくる。

 リーシアがその視線を遮るように動くが、俺はその横からヴァネッサに声を掛けた。


「ヴァネッサ、なんのつもりだ?」

「それはこっちのセリフだ。おまえ、アマリリスを護ると誓ったのは嘘だったのか!」


 その言葉には裏切られた者特有の憎しみが込められていた。

 不意に思い至ったのは、アマリリスに戦闘訓練を施していること。まだ始めたばかりだが、ヴェルターラインの者ならば知っている。そしてアスペリアなら、ヴェルターラインの内部にスパイの一人や二人は送り込んでいてもおかしくない。

 つまり、ヴァネッサが怒っているのはそれが原因?


「待て、あれはアマリリスが望んだことだ」

「巫山戯るな! 子供がそのような望みを抱くものか!」

「そのような望み? なにを、言っているんだ……?」


 ボタンを掛け違えているような違和感。

 そうして答えあぐねた瞬間、ヴァネッサは怒りを爆発させた。


「そんな腐った組織なら、アタイが滅ぼしてやる!」


 鉄甲を打ち合わせたと思った次の瞬間には、ヴァネッサは俺の目の前にいた。圧倒的な速さ。やられると思ったその瞬間、リーシアが目の前に割り込んだ。


「邪魔だどけぇ!」

「――っ、なんて力っ」


 ヴァネッサの一撃を受けたリーシアが吹き飛ばされた。そして今度こそ、ヴァネッサと俺のあいだに隔たる存在はいない。彼女は拳を振り上げ――


「させないのよ!」


 死角からのレーネの一撃。ヴァネッサはそれをその場で回避し、カウンターの一撃を放った。レーネはとっさに冥響で受け、少し吹き飛ばされながらも衝撃を抑え込んだ。


「レーネ、大丈夫か!?」

「私は大丈夫なのよ! それより、リーシアなのよ!」


 言われて視線を向ける。

 リーシアもまた、叩きつけられた瓦礫を背に起き上がるところだった。


「リーシア、大丈夫か」

「私は大丈夫です。それより――レーネさん、彼女のグラトニアは出力が桁違いです。まともに当たらないようにしてください」

「分かってるのよ。だから、リーシア、貴方に援護を任せるのよ」

「了解」


 リーシアが頷くと同時、緋響が狙撃モードに変化する。

 スナイパーライフルを腰だめに構えたリーシアがすかさず発砲。ヴァネッサが上半身を捻って開始した。その瞬間、レーネが冥響を振るう。


「――ちっ」


 ヴァネッサは不完全な態勢から鉄甲を振るい――レーネの一撃を弾き返した。互いに耐性を崩したところに、リーシアが二度目の射撃をおこなう。

 だがその一撃は、発砲より早く身体を捻ったヴァネッサに回避される。


 ――強い。

 完凸仕様だとしても、リーシアとレーネの二人を同時に相手取って互角は強すぎる。


 あぁでも……そうだ。

 さっきリーシアが言っていた。

 グラトニアは魔装と違って安全装置がない。つまり、危険と引き換えに、絶えず最大出力で戦闘をすることが可能な武器として扱われている。

 それが反映されているのだとしたら――


「無理をせず長期戦に持ち込め! グラトニアなら長く戦えないはずだ!」

「了解です、マスター!」

「相変わらず、無茶を言うのよ!」


 二人がそれぞれに応える。直後、ヴァネッサが「出来るものならやって見やがれ! そのまえにぶちのめしてやる!」と動きの苛烈さを増した。

 直後――


「――レン、二人を下がらせろ!」


 リアナの声が響く。俺はその意味を考えるより早く、コネクトレインを使って二人に下がるように命じた。直後、二人が飛び下がると同時、ヴァネッサの足下で手榴弾が爆発する。


「――ちっ」


 ヴァネッサは直撃を受けながらも、煩わしげに破片を払い除ける。魔力で自身を限界まで強化している彼女は、手榴弾の直撃すら無傷で凌いで見せた。


 だが、そこに、二つ三つと、続けて手榴弾が投げ込まれた。ヴァネッサは煩わしげに飛び下がる。だが、手榴弾は爆発せず、多量の煙を周囲に撒き散らした。


「煙幕弾?」

「ここで相手をするのは不利だ。撤退するぞ」


 リアナが指示を出し、治安維持部隊が撤退を開始する。それを見たリーシアが、「マスター、どうしますか?」と指示を求めてくる。

 もう少しヴァネッサの話を聞きたかったが――仕方ない。


「俺達も撤退する。アスペリアの部隊を振り切れ!」


 俺たちは煙に紛れ、その場から離脱する。それから遮蔽物を盾にしてアスペリアの目を逃れ、ついには目的の施設へと辿り着いた。

 いよいよ目的の装置とご対面だ。

 

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