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ソシャゲで推し全員に課金指輪を贈っただけなのに、異世界で修羅場が始まった件 ~事後から始まる正妻戦争~  作者: 緋色の雨


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エピソード 2ー7

 日付が変わり、任務の決行の日になった。任務の内容は、滅びし旧文明の都市遺跡、アーク=ノードの第二環に向かい、医療ポッドを回収することである。


 ちなみに第何環というのは、巨大な円環型の都市であることに由来している。中枢ブロックの第零環から始まり、壁の外にある第五環まで存在する円形の都市。

 そして今回の目的地は、学術ブロックと呼ばれる第二環。旧文明の負の遺産、野生化した魔法生物などが徘徊している危険なエリアで、防衛システムも一部が残っている。


 出撃メンバーは俺、リーシア、レーネ、それにガチャキャラではない魔装部隊の兵士達。

 数十名にも及ぶ隊員が第一収容ベイに集合し、せわしなく出撃の準備を進めている。それを指揮するのは、魔装兵のエース、親衛隊隊長という役職を持つリーシアである。

 彼女は俺の存在に気付くと、兵士達に作業を続けるように命じて俺のもとに駆け寄ってきた。


「マスター、まもなく出撃準備が整います」

「ああ。少し……楽しみだ」


 恐らくゲームで言うところの期間限定イベント。新章PVのようなわくわくをリアルで楽しめるかもしれないと考えると少し胸が躍った。


「楽しみ、ですか?」


 リーシアが怪訝な顔をする。


「……すまない、不謹慎だったな。だが、俺はおまえ達の勝利を信じている」

「はい、必ずマスターに勝利をお届けします。……ですが、本当に遠征部隊の帰還を待たずともよかったのですか? アヤカさんの部隊がもうすぐ帰還予定ですが」


 アヤカもまたガチャキャラの一人だ。

 俺がこの世界に転生する直前は、素材集めの遠征任務に参加させていた。彼女達の帰還を待って合流させれば、戦力の増強が見込めるのは確実だ。

 だが――


「第二環は一部とはいえ防衛システムが生きているからな」

「……たしかに、あまり大所帯になるのは危険ですね」


 アーク=ノードの防衛システムは脅威度に応じて起動する。

 具体的にいうと戦闘行動を取った場合や、大戦力で詰めかけた場合などだ。

 ゆえに、大所帯になるのは避けたかった。


 それに、リーシア達は俺が完凸まで育てたキャラだ。十分に働いてくれるだろうと判断した。


 そしてもう一つ。

 これが一番重要なことだが……何度も言うが、俺はユニットの全キャラに課金指輪をプレゼントしている。アヤカは奥ゆかしい大和撫子キャラだから、さすがにそういう関係になってないと思うが、他のメンバーも大丈夫かと言われると自信がない。

 そんな彼女らを呼び戻して、修羅場が勃発する危険を冒したくなかった。

 つまり保身である。

 ……いや違う、任務の成功率を考えた上での判断である。

 だから――


「心配するな。おまえ達なら必ず任務を完遂できる」

「……はい、マスター」


 リーシアが気負わぬ表情で、それが当たり前であるかのように頷いた。

 健気な女の子。小柄な身体で頑張る姿が可愛らしい――とゲームのときは思っていたが、いまはそれよりも頼もしさの方が先に来る。


 そんなことを考えていると、第一収容ベイの入り口にセフィナの姿が見えた。それに気付いたリーシアが、「セフィナさん、なにかありましたか?」と彼女のもとに駆け寄った。

 それから何度か言葉を交わすと、戸惑った様子のリーシアが戻ってきた。


「なにか非常事態か?」

「いえ、それが……」

「私も今回の任務に参加するわ」


 リーシアの後ろを追いかけてきたセフィナがそんなことを言う。

 セフィナは初期メンバーという設定でありながら、少し遅れて実装されたガチャキャラだ。性能面ではまったく問題がなく、彼女の回復能力は戦闘の役に立つ。

 かまわないと俺が口を開くより早く、リーシアが否を唱えた。


「セフィナさんが前線に立って、なにかあったらどうするつもりですか? MAHS患者を治療できる可能性があるのは、ヴェルターラインでセフィナさんだけなんですよ?」


 その言葉を聞いてハッとした。ユニットとして出撃させていたけれど、たしかにストーリー的には基地の中にいることが大半だった。

 というか、リストレインもコネクトレインも魔装も、全部セフィナが開発、調整をおこなっている。そういう意味で、一番失ってはいけない存在が彼女と言えるだろう。

 だが、セフィナは「あら、だったらマスターはどうなの?」とリーシアに問い掛ける。


「マスターは私が護ります。それに……止めても聞いてくれませんから」


 少し不満げな顔で見上げられた。


「なら、私はマスターの側にいるわ。それなら、リーシアが一緒に護ってくれるでしょう?」

「それは……そうですが。マスター、どうしますか?」


 答えに窮したリーシアが助けを求めてくる。


「セフィナ、同行したい理由はなんだ?」

「マスター?」


 リーシアが咎めるような視線を向けてくる。

 恐らく、止めて欲しかったのだろう。


「リーシア、セフィナだって自分の重要性や、任務の危険性は分かっているはずだ。それでも、同行したいと言うからには、それなりの理由があるはずだ」

「……そうなのですか?」


 俺の意見を聞き、リーシアがセフィナに問い掛ける。


「ええ。今回の目的はMAHS患者の治療用ポッドだと言われたのでしょう? しかも、回収したら基地に持ち帰らずに、評議会に提出するのでしょう?」

「……データは提供してくれると言ったはずだが?」

「それじゃ足りないわ。だからせめて、現地で調べたいの。なにより確認したいこともあるし」


 セフィナのアメシストの瞳が、まっすぐ俺に向けられている。

 決して巫山戯ている訳ではない。

 だとしたら……


「いいだろう。俺の側を決して離れるなよ」

「ええ、もちろん指示には従うわ」


 セフィナが頷くのを見て、俺はリーシアに向き直った。


「そういう訳だ。彼女の同行を認めてくれないか?」

「マスターがそう言うのなら、私はただ信じて従うのみです」

「……ありがとう、リーシア。必ず信頼に応えてみせる」


 ――と、格好いい感じに着地したけど……これ、彼女との旅行に、友人枠として浮気相手を同行させるのと同じような構図なのでは?

 俺、刺されずに帰ってこられるかな?

 

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