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ソシャゲで推し全員に課金指輪を贈っただけなのに、異世界で修羅場が始まった件 ~事後から始まる正妻戦争~  作者: 緋色の雨


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エピソード 2ー1

 リーシア一筋に生きると決意した直後、酔った勢いでセフィナといたしてしまった。もうなんか、誰にどうお詫びすればいいのか分からない。


 俺はベッドから降り立ち、辺りに脱ぎ散らかしていた服を拾い上げて身に着ける。ほどなく、セフィナが艶めかしい声を零して目を覚ました。

 彼女は服を着る俺を見た後、自分の姿を確認して――布団を掻き抱いた。


「酷い、無理矢理迫るなんて。リーシアがいるからダメって言ったのに」

「おいこら、事実を捏造するな! ちゃんと昨夜のことは覚えてるぞ」


 セフィナが悪いとは言わないが、俺が襲った訳ではない。


「……なぁんだ。忘れていたら、よかったのに」


 セフィナはそう言って、ばつが悪そうに前髪を書き上げた。


「酔ってはいたが、記憶を失うほどじゃないな。そういうセフィナは?」

「覚えてるわよ。三回戦の途中までは」

「そこまで言わなくていい。それより……」


 なんというべきか分からず言葉を濁す。セフィナは「私はドクターよ。心配はいらないわ」と、シーツを身に纏ってベッドから降り立った。

 それから棚から錠剤を取り出すと、それを水で流し込んだ。

 ピル――妊娠確率を著しく下げる薬だ。


「貴方に余計な心配は掛けないわ」

「……そうか、すまない」


 もちろん、いざというときは責任を取るつもりだ。だが、俺が複数の女性に手を出している以上、取れる責任には限界がある。ゆえに、取らなくてはいけない責任は少ない方がいい。

 ……というか、最低だな、俺。


 お酒を飲んだのが間違いだったか?

 だが、セフィナとはこれまで通りに戦友として接すると言ったばかりだ。あそこでお酒を飲まずに帰るのは、自分の言葉に嘘を吐くことになる。


 後悔はある。だが、ここで重要なのは、この状況からどうやって責任を取るか、ということだ。


 ここから入れる保険はありますか? ……誰だ、傷害保険に入れとか言った奴。あれは、危害を加えられた方に原因があると保険金が下りない場合が多いんだよ。

 ……いや、そんな豆知識はどうでもよくて。


 ここからどうすれば丸く収まる? そんなふうに思い悩んでいると、いつの間にかセフィナが目の前に立っていた。


「そんな顔をしなくても大丈夫よ。ありがとう、私とリーシアのために真剣に悩んでくれて。後悔はしていないけれど、あの子のことを優先してくれてかまわないのよ?」

「いや、俺は――」


 セフィナに気を遣わせてしまった。そう思って反論しようとするが、それよりも早くセフィナが俺の唇を人差し指で塞いだ。


「私と貴方は親友で戦友、それでいいじゃない」

「だが、それだとおまえは……」


 不意に気付いた。

 前回と違って、セフィナはなかったことにしようとは言っていない。だとすれば、彼女のいう親友で戦友は、肉体関係ありという意味か……?


 恐る恐るセフィナを見ると、彼女は蠱惑的な笑みを浮かべていた。確認してみたい。けれど、確認するのが怖い。どうするべきか悩んでいると、不意にアラートが鳴り響いた。


 その直後、リーシアから『マスター、どこですか?』という声が届く。反射的に悲鳴を上げそうになるのを堪え、俺は服を着ながら『なにがあった?』と尋ねた。


『評議会から、大規模任務の参加要請が届いています』


 それを聞いた瞬間にピンときた。Chord MAHSの期間限定イベントの開始メッセージが、大体そんな感じで始まっている。

 たぶんこの依頼は、アマリリスを救うエピソードに繋がっている


 とはいえ、素直に喜べない部分もある。

 Chord MAHSはダークファンタジーだけあって、重いストーリーが大半だから。プレイする側としてみると神シナリオが多いんだけど、現実となったいまは少し気が重い。というか、いまこの状況で、リーシアと作戦行動を取るのが辛い!


 どんな顔をして会いに行けばいいんだ……?


『マスター、どうしましたか』

『いや、なんでもない。すぐにそっちに向かう』


 それでも行かないという選択はなくて、俺はセフィナに事情を説明して部屋をあとにした。そうして廊下を歩いていると、ちょうど向こうからやってきたリーシアに出くわした。


「き、奇遇だな。リーシアは今日も可愛いな」

「え? どうしたんですか、急に」

「い、いや、なんでもない」


 いかん、浮気の後ろめたさで奥さんに優しくなるダメ男みたいになってる。俺は冷静さを保とうと深呼吸をするが――その懐に、リーシアが踏み込んできた。


「マスター、もしかして――」


 彼女はそう言ってスンスンと鼻を鳴らす。ヤバいバレたと息を呑む。そして永遠にも感じられた一瞬のあと、リーシアは俺を咎めるように眉を寄せた。


「セフィナさんと朝まで飲んでいましたね?」

「あ、あぁ……実は少し相談があってな」

「そう、ですか。あまり無茶をしないでくださいね」


 せ、セーフ! いや、セーフなのか?

 セーフであってくれ! なんて考えていると、リーシアが俺の首に手を伸ばした。まさか、首を絞められる!? と焦るが、彼女が掴んだのは俺の襟首だった。


「襟が曲がっていますよ。もう、仕方のない人ですね」


 リーシアはそう言ってはにかむと、周囲をちらりと見回した後、俺の襟を引っ張って顔を寄せると、背伸びをして俺と大人のキスをした。


「……マスターも、いつも格好いいですよ」


 少し照れたようなリーシアが可愛い。そして、俺は罪悪感で胃に穴が空きそうだった。傷害保険じゃなくて、医療保険に入った方がいいかもしれない。

 

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