第二話 幽霊友達との日常?
〜あらすじ〜
高校二年生のちょっと不器用な青年、廻間颯斗は高校に入ってから友達が一人もできていなかった。そんなある日、学校からの帰り道で出会った幽霊の女の子と颯斗は友達となるのだった……。
あなたはもし颯斗の立場だったら、どうしますか?
「あの〜、名前はなんて言うんですか」
「柚葉よ。あなたの名前は?」
「俺は颯斗、廻間颯斗です」
「へぇー、颯斗ね。……まぁ、よろしくね颯斗」
「こちらこそよろしく」
一瞬の沈黙が流れる。気まずいようで、どこか心地いい。
「……えーと、俺の家に来る?」
「そうねぇ、せっかく友達になったんだし、もう少し話したいわね」
そうして俺は柚葉と二人で家に帰った。
「ただいま〜」
「お帰りなさい。颯斗、今日は学校どうだった?」
お母さんがいつも通り今日学校で何があったかを聞いてきた。俺は靴を脱ぎながら言葉を返した。
「今日もいつも通り、一人で弁当食べたよ。あっ、でも今日友達が出来たんだ」
「まぁ、颯斗。良かったわね、お母さんも颯斗が高校に入ってお友達が出来ないからとても心配してたのよ。本当に良かったわぁ。お友達は大切にしなさいよ」
「うん、わかってる」
お母さんはゆっくり目をつぶり、胸に手を当てた。
「じゃあ、部屋に行くから」
俺はそう言って、二階にある自分の部屋に向かった。
俺は部屋に入るなり、いつも通り私服を出してベルトを外し、ズボンを脱ごうとした。
「ちょ、ちょ、ちょっと。颯斗、私がいるの忘れないで」
柚葉は頬を赤くし、両手で顔を覆い隠していた。
「あっ、ごめんなさい。ちょっと脱衣所行ってきます」
俺は慌てて脱衣所へ逃げ込んだ。
――幽霊なのに、そういうところは普通なんだな。
俺は制服を脱いで脱衣所の台の上に畳んで置き、バスタオルを取り出してその隣に置いた。
そして俺は風呂に入り終えた後、私服に着替え、部屋に戻った。
「少し遅かったじゃない」
柚葉は俺のベッドに腰をかけて座って待っていた。
「ごめんなさい、今日あったことを思い返してたら遅くなりました」
「そう? それなら別にいいけど、颯斗は確か幽霊を見るのは私が初めてなのよね」
「そうですけど……でも、母さんが何も言わなかったから幽霊なのはわかりましたよ」
「えっ、私が幽霊なの確信もないのに家に連れてきたの? もしも私が幽霊じゃなかったらどうするつもりだったの?」
「え? そんなの別に母さんに友達だって紹介すれば、普通に歓迎してもらえますよ」
「同い年の女の子をこんな時間に前触れもなく、家に歓迎するのもちょっと変わってるわねぇ」
「そんなことないと思いますよ」
柚葉は少しため息をついたあとにこう言った。
「あなたちょっと普通に話しなさいよ。まるで普通に話してる私が馬鹿みたいじゃない」
そうだ、友達っていうのは敬語で話したらするようなものじゃないんだ。
俺はなんてバカなんだ。
「……ごめん、これからは気をつけるよ」
「それでいいのよ」
柚葉は頷きながらそう言った。
柚葉はベッドから移動して俺の机に座った。
「ごめん、颯斗のベッド取っちゃってた」
「別にいいよ」
俺はベッドに寝転がると途端に眠気に襲われ、眠りについてしまった。
……俺はスマホのアラームの音で目を覚ました。
急いで制服に着替え、一階へ降りてリビングの椅子についた。
昨日は夕食を食べずに寝てしまったので、朝食は昨日の夕食となった。
そういえば、柚葉はどこに行ったんだろう。
もしかして、昨日俺が寝ちゃって怒って出て行った?
朝から少し重い気持ちになりながらも学校を遅刻するわけにはいかないためカバンを背負い、母さんに挨拶をした後家を出た。
――(学校)
学校に着くと、いつもの教室の空気は少しだけ違っていた。
胸の奥には、昨日の柚葉の笑顔がまだ残っている。
「おはよう、颯斗」
教室に入ると、相沢さんがいつものように挨拶をしてくれた。
でも、昨日とは少し違う――視線の奥に、興味と好奇心が混ざっているのを感じた。
席に座ると、ふと窓の外に目をやる。
あの角でぶつかったときのことを思い出す。
――あれは、ただの偶然じゃない。
昨日から俺の世界は少しだけ変わったんだ。
「なぁ、この間もあの七不思議があったらしいぜ」
背後から聞こえたのは、同じクラスの佐伯さんの声。
普通の人間には見えない、幽霊が俺の前に現れたことを知る者は誰もいない。
――でも、秘密を抱える気持ちって、なんだかちょっと悪くない。
一人じゃないって、こんなに心が軽くなるんだな。
その時、教室の端で小さく光る影に気づいた。
……柚葉だ。昨日のあの笑顔のまま、教室に入ってきた。
「おはよう、颯斗」
その声は、昨日と同じで、でもどこか嬉しそうだった。
俺は少し笑って答えた。
「おはよう、柚葉」
「ねぇ、廻間さんなんか変じゃない? 誰もいないのに笑顔で女子の名前なんか呼んで気持ち悪い」
そんな声が周囲から聞こえた気がしたが、俺にはそんなことどうでもよかった。
その後、普段通りに学校生活を送った。
だけど、いつもと違うのは俺には柚葉という友達がいることだ。
(放課後)
「なんで週番でもない颯斗が前のホワイトボードの文字消してるの?」
「だってみんなは部活とかで忙しいだろ。こういうのは部活に入ってない俺のやることだ」
「颯斗って、ほんと今日一日見てて思ったけど相当なお人好しよね」
「別にいいだろ。クラスの奴らを見てると、何だか幸せな気持ちになるんだ」
「なるほどね。それにしても颯斗って本当に人の友達いないんだね」
「うん、高校に入って初めてできた友達が柚葉だから。友達になるって言ってくれたときはすごく嬉しかったんだ」
柚葉は少し頬を染めた。
「まぁ、これからは私が友達として颯斗と一緒にいてあげるから安心しなさい」
「うん、ありがとう」
俺の目からは堪えきれず涙が溢れた。
その後、俺は柚葉と家へ帰った。
――翌日(学校)
朝のホームルーム後の休み時間、さっそくクラスは賑やかになった。
「あの、七不思議聞いたか?」
「えっ、あれでしょ歩く人体模型」
「そうそう、それ。俺今日放課後見てみようかな」
「時間の無駄でしょ」
「それもそうだな」
七不思議の話。
以前の俺ならそんなのいるあるはずないと思っていただろう。
だが、柚葉がいる以上七不思議が本当に存在していても不思議じゃない。
まてよそうなると七不思議じゃなくて何で呼ぶんだ?
まぁ、いいか。
「なぁ、柚葉」
「なに?」
「今日の放課後、歩く人体模型見に行かないか」
「いいわよ。楽しそうだし」
「決まりだな」
――(放課後)
俺は柚葉と話しながらいつも通りノートに今日のメモを書いていた。
「そろそろ、みんなも帰ったし、人体模型見に行くか」
「そうね」
人体模型を見るために、生物実験室に向かった。
……すると、悲鳴が聞こえたあと、生物実験室から同じクラスの橘さんが慌てた様子で出てきた。
「ねぇ、颯斗。あの人誰?」
「同じクラスの橘優斗だよ。それにしてもあんなに慌ててどうしたんだろう」
その直後、橘さんの視線の先、生物実験室の出入り口からカツン、カツンと足音とともに人体模型が出てきた。
人体模型を見た瞬間背筋が凍りつくような感覚が走った。
腰を抜かした橘さんを人体模型は持ち上げて横に投げ飛ばした。
人体模型は橘さんの方へ近づいて行った。
人体模型が橘に向けて腕を振りかぶった。
――まずい、このままじゃ……!
俺は全力で駆け出した。
「橘さんっ!」
間に合わないと分かってても足が勝手に動いていた。
「颯斗、待って!」
背後からの柚葉の声が震えていた。
「そのままだと霊力の差がやられる! ……でも、一つだけ方法がある!」
俺は振り返らずに叫んだ。
「何でもいい、教えてくれ!」
柚葉は必死に言葉を続けた。
「あなたの"生命の流れ"を霊力に変換するの! でも……代償として――寿命を削る!」
「どのくらいだ!?」
「強さによるけど……今のあなたの力なら、半年」
一瞬だけ、頭が真っ白になった。
だけど――橘さんが震える姿を見て、迷いは消えた。
「半年なんて安いもんだ」
「俺の仲間に手を出すな!」
――反呪
瞳の奥から溢れ出すように、白銀の光が空気を震わせた。
その光は冷たく、けれど温かい――命の境界を燃やすように揺らめいていた。
白銀の閃光が弾け、爆ぜた衝撃が空気を裂いた。
人体模型はその衝撃でのけぞり、バラバラになった。
激しい痛みが全身を走り、足の力が抜けて膝をついた。
「ぐっ……!」
駆け寄った柚葉が俺の肩を支える。
「颯斗、大丈夫?」
「……うん。少し、力を使いすぎただけだ」
「あなた、本当に馬鹿なんだから……」
柚葉はそう言いながらも、どこか優しく微笑んでいた。
俺は力を振り絞って立ち上がると、気絶している橘さんを持ち上げた。
「えっ、颯斗。その子どうするの?」
「ここにほっとくわけにはいかないだろ。保健室に連れて行くんだよ」
「それもそうね」
俺は橘さんを保健室へ連れて行き、保健室の先生には適当なことを言っておいた。
俺は教室に戻ってカバンを取り、乱れていた教室の机を整理して鍵を閉めた。
「颯斗、あなたほんとに世話焼きよね」
「別にいいだろ。みんなが楽しく過ごせるなら俺はそれでいいんだから」
職員室に鍵を返して学校を出た。
「今日はちょっとヤバかったわね。颯斗は大丈夫?」
「寿命のことなら大丈夫。でもそれより今問題なのは何で柚葉が俺の力のことを俺以上に知ってるんだ?」
「それは二日前あなたは霊力の使いすぎで寝ちゃったでしょ。その時にあなたに憑依してあなたの力について調べたの」
「えっ、そんな簡単に憑依できんの?」
「あなたが信じてくれたから。だから私は、あなたの中に入れたの」
「そうか。とにかく俺は柚葉と出会って毎日が楽しくなった。……だから、これからもよろしく」
「私こそ、今まで一人で彷徨ってたけどあなたと出会ってとても楽しくなったわ。ありがとう颯斗」
白銀の光の残像が、まだまぶたの裏に残っていた。
不思議と、怖くはなかった。
これからの日々が、少しだけ楽しみに思えた。
こうして俺と柚葉の風変わりな日常が始まったのだった……。
これは、ただの七不思議なんかじゃ終わらない――俺と柚葉。そして風変わりな仲間たちとの物語の始まりだった。
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