第2話
俺はなんやかんやの交渉相まって、彼女を説得することに成功した。彼女は天馬珠理ロングヘアーの黒髪の若い女性。何より気は少し強そうだ。
「ってことで俺は珠理の護衛として家にいることにするよ。」
ちょっと不服そうな顔をしていたがまぁ気にしない。彼女と2人で大阪の街並みを歩いていた。AIロボットからの視線を感じつつ、俺は彼女のためにずっとAIロボットを睨み続けていた。
「あの歩きづらいんですけど。貴方はAIに恨みでも持たれてるのですが? やっぱ居候はなしで……」
「ちょっと待ってくれよそれはないぜ。だってさ、家はあるけど帰りたくないんだよな。」
彼女はその言葉を聞いて納得したのかそのまま歩みを続けた。珠理はチョロいのかもしれない。彼女の住むアパートの近くに来た時俺は驚愕した。余りに昔のお粗末すぎる一室に、周りにはAIのえの字すらない。長閑な風景に林が生えているだけでなく草花も生えている美しい場所だった。
「この場所は綺麗だなほんとに。久々にこんな綺麗なところをみたよ。」
俺は素直に彼女にこの風景のこと伝えた。
「綺麗でしょ。この大阪の中で私が一番好きな場所。ここの素朴さだったりが昔のお婆ちゃんの家にいた頃を思い出すの。」
話を聞く中で疑問に思ったのはこの日本にはそんな場所があるのかということ。確かに九州とかはAIも少ない、他地区に住んでいるのなら納得はいく。そう考えるはいなや、彼女は自身の部屋の103号室の扉を開き、こちらをこまねいていた。中に入ってみると、1kの部屋に布団とパソコン、備え付けのようなテーブルと椅子が2つ。そのうちの1つはさぞ椅子と言うには失礼すぎるゴミがあった。
「貴方は椅子に座ってじっとしていてください。私は今から買い物に出かけてきます。」
「いやでも俺が護衛でついて行くよ。さっきのXJACKのこともあるし……」
彼女の戦闘能力は乏しい。もしなんかあったら俺はここではどうしようもできないしな。そう言って押し通して彼女の買い物についていった。スーパーに入ったが魚や肉は百年前と比べてもかなり質は上がっているらしいし、何より安い。人件費が大幅に削減できるようになり、ブランドものですらワンコインで買えてしまう。 結局何も起きずに買い物が終了し、帰路についていた。何もなかったな……結局。
「なんで家が有るのに居候なんて言ったんですか?」
彼女の方から口を開いて聞いてきた。
「俺の家はな呪われてんだよ。何より前の住居人が死んだとか死んでないとか。そんなんで寝るに寝れないから居候の身になろうかなって。変だよな。」
まぁこれは嘘でもなく事実だ。正直あんまり幽霊とかは信じてはいないがいかにもその様な類のものを家では感じたのだ。
「逆になんで俺を家に入れてくれたんだ。普通入れなくないか。だってこんな変なやつだぜ。」
別に俺は身長178cmぐらい髪は黒髪でぼさぼさ。黒服一着のみを着回しているだけの人だ。まぁ悪くはないだろう多分。
「私は実家をから逃げ出して来たんですよ。家ではずっと外を出ることはかなわなかったから。成人した18のタイミングで家から抜け出して、親戚のおばさんが大家をしているこのアパートに来ただけ。」
その後も帰りながら彼女の話をいろいろと聞いた。彼女はアイデア系の仕事をしていて今の時代なら当たり前だがリモートワークで働いているとのことだ。彼女は20歳と若い年齢ながらこの大阪の中心部で頑張っている。何よりAIにも襲われて。変なやつにも居候されて。家に着いたあともう夜なので彼女は夜ご飯を作ってくれることになった。俺はリビングに立つことは認められず。大人しく椅子に座って待っていた。彼女が出してきたのはオムライスだ。
「俺オムライスが一番好きなんだよ。もしかして俺の好み知ってる?」
「別に得意なだけなので。」
そういえば彼女は家で手伝いしていたから、料理には自信があるとか言っていたな。オムライスを食べていると彼女の柔らかな視線を感じつつ。俺はオムライスを平らげた。あとは風呂に入り、俺は椅子で一夜を過ごすことになった。
夢を見た。
変な夢だ。俺は天界から何かを見ているような。浮いている感覚だった。ある人は誰かを愛していたそんな人を失いたくなくて全てを出し尽くした。思いは虚しく、尽くしても尽くしても埋め合わせても変わらない。その人は遠ざかっていった。ただ一つの方法を除いては。そこは光輝いてよく見ることができない。そんな光に妨げられてまた目を覚ました。最近はいつもこんな夢を見る。今日に限ってはこの椅子で寝たせいだろう。
起きると彼女は俺をずっと見て少し微笑んでいた。
「やっぱり俺のことをす……」
「そんなこと無いので早く起きてください。」
彼女はすぐに訂正をして俺のご飯を作ってくれていた。ご飯にみそ汁シンプルこの上ない。素晴らしいくらいに美味しい。これでお店でも出せるんじゃないかって感じだ。今日は仕事があるので俺も頑張らないといけない。
「今日は仕事があるから出かけます。」
「外での仕事なのですね。気をつけて帰ってきたらインターホンお願いしますね。」
はいはいと言う感じで俺は見送ってくれる彼女に手を振り。仕事場に向かった。今の時代に外の仕事をしている人なんて1%にも満たないだろう。早速俺の仕事場に着いた。個人経営のスーパーの内部にある。
「柴田幾世さんこんにちは。 MERSのランビィです。今から扉を開きます少々お待ち下さい。」
ここはAI対策組織MERS、暴走化、身勝手に動いたAIの排除、AIの動きを再統制する組織だ。世界でも大阪にしか無い。いわばAIが人間を危機に陥れた時の人類最後の砦と言える場所だ。俺達はAIからの解放を目指し動く武闘派集団だ。さらにこの組織は2つの部隊に分かれていて、AIを直接排除、防衛等をメインでする部隊通称CRASH。AIを統制し、データハックから、守る部隊通称FIREFALLの2つになっている。俺はその部隊のCRASHが担当の部隊となっている。ちなみにランビィはどんなやつかはいまいちわかっていない。一応味方のAIらしいが。そうして中に入るやいなやいつもどうりの風景に興ざめした。はっきり言ってここはあまり好きではない。この場所はみんなが同じように動いている。こいつらもAIなんじゃねえかと勘違いしてしまうくらいだ。
MERS内部は巨大なモニターが3つ設置されており、100人程の人が等間隔に並んでいる。近くには会議室、統制官室、訓練場の計4つの場所で成り立っている。彼女のアパートに戻った時に教えてあげようと色々と思い出していたが、そんな時にある奴から声が掛かった。
「おいNo.4、生きていたんだな、家もあるのに住むば場所探してるって言うから変だとは思ってたよ。俺的には柴田幾世は何処かで野垂れ死んだと思ったよ。まぁお前のことだから死ぬに死にきれないだろうけど。」
奴は笑いながら答えた。奴の名前は奥田、下の名前はあんまり仲良くないから分からない。160cmしかない小さな体に30代ぽい見た目、まるで猿かのような雰囲気を醸し出していた。ただ俺のことは気にかけてくれている。住むあてのない俺を一緒に飯に連れて行ったり奥田の家に止まらせてもらったりした。
そしてそんなに彼はFIREFALL部隊の副統制官を務めるまでの実力を持っている。周りの人が言うには彼は先を見る目が優れていて、未来すら見えるとか。何も彼のお調子者の性格からそんな噂が広がったらしいが。
「幾世さ、お前は不死のマリオネットって知ってるか?こいつらは人間でもAIでも無い化け物だ。こいつらはどんなに倒れさても立ち上がるから政府の最強の部隊らしいぜ。」
不死のマリオネットは俺たちからしたらおとぎ話でしかない。たが実際に見たことあるという人も少なくはおり、日本全体の都市伝説みたいなものだ。
「幾世、今日の本来の目的を忘れるなよ。今日はNo.の会議だからな。」
そうだ忘れていた。今日の本来の目的はNo.の会議に出ることだ。俺を呼ぶ放送が鳴り響きながら俺は慌てて会議室へと向かった。