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チャプターゼロ

 宇宙は広大である。それは全人類が知っている事実だ。

 しかしそれを真に理解している人間はいない。光の進む速度でしか観測できない人類は、宇宙の果てなど見ることはないのだろう。

 どれだけ技術が進歩しても、どれだけ文明が発達しようとも、宇宙の膨張を止められる者はいないのだ。その原因は、人類が非常に「小さい」存在であるからだ。


 宙歴519年。宇宙に旅立った一つの帝国がつけた名前である。戦争に負けた社会主義国家。それが空へと旅立つことを余儀なくされた。3000万人の国民を乗せて。


 その宇宙船は莫大な規模であった。


 宇宙船には最大5000万人が生存できる。食料も自給自足可能で、機械で完結しており人の手は必要ない。生存には十分である。


 しかしそれだけで終わらないのが人類である。我々は次の楽園を探している。自分たちだけの帝国を、自分たちが支配するべき土地を。


 それは難解なことだ。「エネルギー」が以前の地のようにあり、有機物が存在し、液体の水がある。そのような条件下の星は、少数ながら発見されていた。が、未だに定住できていない。それはとてつもない距離だからだ。


「『しかし人類の進歩は止まらない。我々帝国が新たな惑星を支配する日も近いだろう。我々が持つべきは観測する目と、継続するための情熱である。』……はい。今日はここでおしまい。みんなが静かに聞いてくれて先生嬉しいわ」


 そう言って1人の女性が空間に映し出されたホログラムを消した。教室には3人の子供がいて、先生の話を聞いていた。


「せんせー。早く俺らも電脳化させてくれよー。子供だからってひどいぜ!さべつださべつ!」


 そう言い放つのは10歳前後の少女。薄紅色の髪を持ち、翠眼が輝いている。元気いっぱいという様で駄々をこねていた。


「私もー。もうそんなホロ見るような年じゃないよ」


 お行儀よく体育座りをするのは水色の髪をした少女。ピンク色の目は垂れており、気だるさを感じられた。


「サツキ。ヴェラ。あんまりせんせいを困らせたらダメだよ」


 小さな声でそう主張するのは黒髪の少年。一見大人しそうに見えるが、その瞳には好奇心がありありと浮かんでいた。


「そうは言われても、規則は規則だもの。はい、復習です。ルールを破るとどうなるでしょう」

「はい」

「どうぞ、アレクセイ」


 短い黒髪がしなやかに揺れ、何かを思い出すように宙を見た。


「電脳空間での警告と、それを無視した場合には一定期間の使用停止。さらにひどい場合は軍からの懲罰があります」

「はい。正解です。電脳空間でのログは常にAIが監視してますからね。思うだけなら許されてますけど、それを行動に移してはいけませんよ」


「「「はーい」」」


 子供達が元気に返事をした。子供達は気がついていた。自分たちが特別であるということを。


「そして、これは貴族の子孫であるあなたたちだから言えることです。心して聞いてください」


 全員がゴクリと唾を飲む。子供達の好奇心は止まることを知らない。


「10年後。ついに惑星へと到着します。そして貴族であるあなたたちは、着陸する権利を得ます」


 子どもたちの目に光が宿る。


「ですから、今のうちにたくさん勉強して、惑星の統治へと貢献しましょう。もし結果を出せば、天皇陛下より領土を承ることができるかもしれません」

「はい、先生」

「なんでしょう、ヴェラ」

「その惑星の名前は、なんというのでしょうか?」

「いい質問ですね。我々が観測して、人類に適当な環境であると理解した時点では『R47K13』と名付けられていました」


 先生は一呼吸おいて、再び喋り出した。


「そして、天皇陛下は新たに名前を提示しました。我々の領土とするべく。その名前は……『パラジェンシス』。人類の新たな始まりです」


 人類の未来は、確実に近づいていた。


新連載です。モチベ次第で投稿頻度が変わりますので、面白そうだなーと思った方。是非ともブックマーク、高評価、よろしくお願いいたします。

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