天才女医に影響を与えた医学博士の曽祖父が遺した物
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」を使用させて頂きました。
私こと芹目アリサが癌手術を得意とする外科医として大成出来たのも、思えば高名な医学博士だった曽祖父の薫陶を受けたのが切っ掛けだった。
駆け出しの執刀医だった頃に曽祖父の脳腫瘍を全摘して健康寿命を大幅に延ばせたのも、今日の私の名声の第一歩だ。
だが、その曽祖父も今はこの世の人ではない。
眠るような大往生だから参列者は誰も泣かなかったし、四十九日法要も平穏に済んだけど。
そんな今だからこそ、私はある思いを胸に自宅の地下へ降りたんだ。
「こんばんは、曽御祖父さん。今日、貴方の四十九日法要が無事済みましたよ。」
研究室の棚に並ぶケースの一つを手に取った私は、培養液の中に浮かぶ脳腫瘍に語りかけたんだ。
患者の了解を得て確保した腫瘍達も、随分な数になる。
その全てが、今も変わらず生命活動を続けている。
勿論、この曽祖父の脳腫瘍もだ。
「私の研究者仲間が、脳腫瘍を素体とするAIの開発を推し進めているのですよ。暫くすれば、また曽御祖父さんとお喋り出来る時が来るでしょうね。」
曽祖父の脳腫瘍を素体としたAIは、果たしてどんな人格なのだろう。
生前の曽祖父と同じなのか、或いは別人なのか。
それを確認出来る日が今から待ち遠しい限りだ。