第七話「解決と実行」
結局、装具の一部を持っていたのはカラスの守護精霊の子だった。
主人の方針でかなり自由にしていた子で、呼び出す以外は実体化したまま気ままに過ごしていたらしい。
その子のお宝を奪う形になってひと悶着あったものの、主人の説得でどうにか返してもらう事が出来た。
パーツは脚パーツの一部で、あれこれ試している間に留め具が外れてしまったのか。足りない中、不安定な状態で実体化したため脚の状態も悪く、兎の子は元気がなかったのだろう。
「というわけで、無事解決できた事だし行きましょうか」
「ええっと、どこへですかモニカ先輩」
僕らは相談者にパーツを渡した後、それぞれ寮へ戻り点呼やら食事を済ませ……消灯時間のあと抜け出していた。
向かっているのは本館の先、研究棟の方面だろうか。
「何言ってるのかなファナル君。私たちの契約、忘れたの?」
「契約……。ああっ」
「もう、ぼんやりして。今日はチャンスでしょう?」
僕らが向かう先。僕らの目的。
共犯者契約の理由。
研究棟にある保管庫への侵入と目標の確保。
それが、僕とモニカ先輩を繋ぐキーワード。
お互いの目的のため、協力しようと密かに結んだたった一つの契約だった。
魔術学園は教育の場と研究の場という側面を持っている。
実習で使う実務的なものから、ここで成長した研究者が扱う禁忌物、失敗作。それらを安置した場所がある。
管理者は高名な術者で「侵入し奪える実力があるのならやっても構わないさ。命を失う覚悟があるのならね」と嘯き、僕らはそれに乗じる予定だ。
もちろん、教師側含めそんな妄言を真に受けて門戸を開くわけもなく。普通にやろうとすれば止められるし、保管庫の施錠は色んな意味でしっかりしていた。
それでも用事があれば開く場所である以上、狙い目はある。例えば、守護精霊契約のため依り代や魔道具を運び出す日だとか。
「ファナル君、もしかして本当に忘れてたの?」
「そんなわけないです。でも、今日いきなりとは」
「甘い甘い。パーツ捜索という名目でマロンには偵察して貰ってたんだ。今、守護精霊契約で運び出した魔道具が外に並べられてて、警備の段階がひとつ下げられてる」
驚いた。そこまで用意周到に動いていたなんて。
モニカ先輩は普段こんなノリだから忘れてしまうけれど、何だかんだ調査や準備に抜かりない人だった。
猿型の精霊を追い込んだ時も、今日のパーツ捜索だってすぐに計画を立てて密かに準備を終えている。出会った当初も、そうした実行力に感心したはずだったのに。
いつの間にか僕は、相談者の依頼をこなす日々に満足してしまっていたのだろうか。平和ボケって奴かもしれない。反省しないと。
「だからあんなに気合が入っていたんですね」
「うん?」
「いえ、髪を後ろに結ぶのが珍しかったので」
「……ファナル君、変なところ見てるのね」
モニカ先輩は半眼になって結んだ髪に手をやっていた。
そんな隠す事もないのに。
そんなわけで、僕らの共犯者契約。その実行がついにやってきたのだった。