第五話「相談者」
今度の相談者は守護精霊を抱えていた。
元気がない様子で主人の腕におさまっているのは兎姿の守護精霊である。
それぞれ人や守護精霊は得意な属性というものがあって、特に守護精霊はそれに合わせて毛色などに影響が出るそうだ。
今回の兎は青みがかった毛色をしており、耳が心なしか丸みを帯びている。水属性の子だろうか。
「実は、この子の装具が一部なくなっちゃって。何処を探しても見つからないの」
「だからこんなに元気がないんだね。装具はいつ頃なくなっちゃったかとか、わかる?」
泣きそうな顔をした三つ編みの子は一年生で、まだ守護精霊を授かって三か月だという。うつむき加減にモニカ先輩からの質問に答えていた。
「一週間くらい前の実習授業だと思うんです。出したり戻したり、色々試させられてきっとそこで」
「そっかそっか。わかるよ、落ち着くまで不安定だもんね。大丈夫、必ず私たちが見つけて来るから」
「ありがとうございます……!」
何日も悩んできたのだろうか。相談者はぱっと明るい笑顔になり、頭を下げて応接室を出ていった。
「今度もやり甲斐がありそうな相談だねファナル君」
「……実際、見つかるものなんですかモニカ先輩?」
装具、というのは守護精霊を実体化させる際にそれを補助する魔道具の事である。術者として優秀になれば、守護精霊を常時活動させる事も簡単だ。
ただ、契約したばかりでまだまだ未熟な生徒たちにとってそれは難易度が高い。かといって実体化できない状態では、連携や特性訓練も出来ないため、補助器具をあつらえてその姿を維持していた。
「作った守巫屋に新しいパーツを頼むとかはしないんですかね」
「それは厳しいと思うなぁ。結局、どれも魔道具だし。生徒は借り受けられるけど、買おうと思ったら高価だもの。管理するのも生徒の責任ってスタンスだし」
そういうものらしかった。
守護精霊のタイプによってオーダーメイドで作られるのが基本だそうで、学園用はある程度汎用性を持たせた素体を元にしているとはいえ、紛失に関しては自己責任、場合によっては弁償ものの話のようだ。
「何とかなると思う。あてはあるし」
モニカ先輩はオレンジブラウンの髪を引っ張り上げ、後ろで簡易的に結ぶ。
その前方、机の上でも。
気合が入っているのか、ムクドリのマロンがぴょんぴょん跳ねながら意思表示していた。
二人(?)ともやる気満々のようである。