第三話「魔術学園」
リーエン魔術学園。
設立からおおよそ200年の歴史を持つ、伝統ある魔術学園である。
王都に位置する最も有名で最も大きなこの学園には、各方面から才能ある者が多く集められており、授業形態も多様で、研究者目線のものから実戦形式まで幅広く揃っていた。
そんなリーエン魔術学園では毎周期ひとつのイベントがある。
30日に一度行われる行事は日常のものではあったが、待ち侘びていた者達にとっては大きなイベントだ。
今回も多くの生徒が集い、一人、また一人と神殿から出てきている。
「ファナル君、今日も来てたの?」
「うん」
「自分の番がくるまでは気になるよね」
授業のため通りかかったのか、モニカ先輩が肩に黄色のムクドリを乗せて声をかけて来た。
「それもそうだけど、もしかしたらまたああいう依頼が来るかもしれないし」
「あー、この間の。今回も多少は出て来るかもね」
「守護精霊って、主人と強い絆と契約で結ばれるって話でしたけど。ああいう事もあるんですね」
「うん。まぁ、ほら。皆強い憧れを持って、16年待っていたわけだから。授かった守護精霊が思っていたのと違うとか。精霊側もカタチを成してすぐじゃ勝手もわからないだろうし、モデルになった動物本能が色濃かったりするらしいよ」
モニカの肩に乗るムクドリは主人の感情を受けてか、小さく鳴いて首を振っていた。
「この子、マロンは大丈夫だけど。精霊側もね。望まれて契約したはずなのに拒絶の感情を受けたら、そりゃ混乱しちゃうよ」
かつて聖王が大精霊と契約したことで、祝福を受けた国民は幼い頃より精霊と共に過ごしているという。
精神の安定しだす16歳の誕生周期に、契約で確定させるのが守護精霊を授かる儀式であり、今回のイベントだった。
その人物の性質や過ごし方、気に入られ方で守護精霊は色んな姿になるそうで、多くは自然界に居る動物や幻獣、精霊の姿をとるらしい。
その姿が望んでいたものと違うだとか、人側の理想を押し付けられ、混乱してしまった精霊の脱走。その捕獲が前回の依頼だった。
神殿から学園へと戻る生徒はそれぞれ、小動物や鳥、エレメンタルと呼ばれる精霊体や妖精などを連れている。
守護精霊を授かった彼らはより本格的な授業へと進むのだ。
「じゃ、私授業があるから行くね。またあとで」
「うん。またあとで」
モニカ先輩は手を振って本館へと去っていった。
精霊の特性に合わせ、より具体的な内容へ。だから、授かるまではあくまで基礎的な事しかやらないし、本来学園にやってくるのもその年齢に合わせた時期に集中していた。
14で来た僕はちょっと早く、これまで学んでこなかった分を詰め込んだり、魔力の扱いを学んだり、忙しくはあっても授業への本格参戦はまだ先の話。
少し特異な能力を持つが故、コントロールのためにも一足先に戦闘訓練を受けているだけの子供が僕だった。