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運命を変える付与魔術師(エンチャンター)  作者: 舞
1章 小妖精の町(エルフィーナ)
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幕間 残っていること

 ミカンとパンドラの帰還後には大量の木の実、動物の肉なんかを大量に持ち帰ってきた。

 流石にこの量を上層部の者たちで分けるのは困難なために、フェインとメルが共に均等に分配と仕分けをして言って小妖精たちや隣の蜘蛛たちの村にも分けるつもりだ。

 小妖精たちはすぐに届けて大変喜んでくれた様子だったが、こうして時が過ぎている間にも僕にはやらなければならないことが残っている。

 まずは、蜘蛛の村への挨拶だ。


 村に向かうといっても大量の木の実や小分けにした動物の肉を持っていくこと、それと蜘蛛側との交易の強化や通り道の整備を要求するつもりだ。

 気味が悪いせいか近くの蜘蛛の村に行くといったところで付いて来る者は誰もいなかった。

 仕方がないので統括している白尾と共に近くの村へと足を運ぶことになった。


「蜘蛛の巣が道中でも多いな」

「一応、通り道は確保してもらっているんですが通りにくいのは問題ですね」


 白尾もどうやら、獣人の姿では通りにくいらしく白狼の姿で向かうのが通りやすいほどに蜘蛛の巣が木と木の間にトラップのように張り巡らされていた。

 しかし、その整備されていない蜘蛛の巣を抜けるとそこには糸で作られた巨大な洞窟とその中では蜘蛛たちが自分たちの家を作るためにせっせと働いていた。


「ごめん下さい!」


 白尾が一言だけ叫ぶと奥から一際、大きい蜘蛛が出てきた。

 僕が持っている動物の肉や大量の木の実を見て奥側へと通してくれた。

 僕と獣人と大きい蜘蛛の三竦みがそれぞれ座って早々悪いが、言葉が分からないと不便なために僕は雲に付与を施した。


「付与、翻訳」


 よし!それじゃ話そうかな。

 しかし、蜘蛛においては僕が施した術が気になったのか僕の顔を見つめて言った。


「変なことを伺うけど、白尾様の隣におられる君は誰だ?」

「僕はレストと言います。簡単に言えば白尾の上で村を統治している人間です」

「それは済まん事じゃった。我らを受け入れてくれたことを感謝いたします」

「即死蜘蛛の影響とはいえ、住む場所を失うのはお互いに苦労するでしょうから」

「人間なのに、魔物の気持ちを考えて下さる方は初めて出会いました」


 軽い世間話から始まったけれども、白尾はいろんなことを考えながらここを統治しているせいか一切話さなかった。彼なりに思うこともあるのかも知れないし、僕が思いっきり口を挟む場ではないことを自覚しつつも気になっていたことを一つ聞いた。


「こちらも一つ質問いいですか?」

「構わないです」

「ここに来る途中に蜘蛛の巣が張り巡らされていたのは餌を捕食するためですか?」

「それもありますが、人間を寄せ付けないためです。あなたのような人においては大丈夫ですが巣を見つけられると同胞の犠牲が出てしまいますので・・・」


 蜘蛛の巣が張り巡らされていて通りずらいなんて話が切り出しにくい形になってしまった。おそらく彼らもそれを分かって危険から身を守るためにしている行為だから整備するなんて考えは無理かなと思った時に白尾が口を開いた。


「分かっています。では、このような提案はどうでしょう?私たちの村との道の部分だけ蜘蛛の巣を撤去して他の部分の蜘蛛の巣を増やしてみてはどうでしょう?」

「でも、人間にその道を見つけられたら巣に入られるかもしれませんよ?」

「そうならないように入口にでかい蜘蛛の巣を張って小さい蜘蛛たちが出入りできるようにすれば解決はします。それでも無理なら私を呼んでくださることで解決します。それでもだめでしょうか?」

「そこまでして下さるなら、反論の余地はありません」


 そこまで統治することを約束させるなんて、覚悟があっても到底できるとは思えないな。

 白尾にとっても切れない縁でもあるように僕にとっても切れない縁でなければならない。

 その為に僕は言った。


「白尾、この巣には糸って作れたりするのか?」

「はい、一応用途において使い分けや性質の変化もできたりします。それが何か?」

「いや、服を作る材料としてもらえないかなと」

「なるほど!」


 白尾が思いついたように大きい蜘蛛に向って目を輝かせながら言うと、蜘蛛の方も目を輝かせながら言った。


「我々は服を作っているので原料として糸をもらえないでしょうか?」

「蜘蛛は生理現象で糸を身体から作り続けているので消費してくれるのはありがたいです。処分できずに困っていましたから」


 これが利害の一致といえる奴なのかもしれない。

 しかし、これなら糸が無限供給することが出来るからミイナにも手間を掛けさせないで済みそうだ。

 その為にも、白尾を含めてここを守ってもらう必要が出来たというものだ。

 僕は動物の肉と大量の木の実を渡してから言った。


「今後ともよろしくお願いいたします。心ばかりの品ですがお納めください」

「はい、あなたのことは私の心の中にとどめておくことにします。また、いらしてください」


 どうやら、蜘蛛との良好な関係は長い間に続きそうだ。

 そうして、考え事をしながら歩いていると帰りに蜘蛛の巣に引っ掛かりすぎたのは言うまでもない。


*

 次の日は朝からバタバタしていた。

 ワープポータルの正式開通を使ってリアル王がこの村に来日するというので、リーベルと小妖精の代表のエイコさんと共に話し合いをする予定になっていた。

 ただ、正式開通するにあたって黒妖精が村に来たり小妖精が町に言ったりするので問題が起こることのないように全ての村と町の平等をまとめておこうというものだ。

 リアル王が来る前だというのに、エイコさんは僕に深く頭を下げていた。


「この村において置いてくれただけでありがたいのにこんなことまでして下さるとはなんとお礼をすればいいか・・・」


 返しに困る。

 別にこちらとしては大したことをしてないんだけどどうしてこんなに感謝されることなのか?

 疑問は残るところでリーベルのドレスが試着完了したために、僕の近くに寄りつつも同時にエイコさんの両手を強く握ってから言った。


「エイコさん、私も王宮の窓からひどい扱いを受けているのは見てきたから同じ気持ちだよ!」

「リーベル様、共に頑張りましょう」


 それから、間もなく客間にリアル王が入ってきた。

 護衛はつける必要がないせいか彼は一人でやってきたところで、僕は言った。


「リアル王、ご足労いただき感謝します」

「いや、先ほど見た限りあの技術は凄いな。村を見ても良き雰囲気が感じられた」

「さて、本題に入ろうか。リーベル」

「はい、お父様。私たちの村とはいい関係が結ぶことが出来ましたが、小妖精と黒妖精の平等性においては解決していないと思われます」

「レスト、君なら分かるだろう。君が最初に来たときにその関係を強引に結ぶ約束をしたのは君ではないか?」

「では、聞きます。なぜ、それを民たちがいた発表で言わなかったのですか?」

「・・・」


 民たちに話すチャンスがあったはずなのに、なぜ公にしなかったのかは甚だ疑問だった。

 民たちからすれば、別の村に小妖精が移住することになって黒妖精の町となっただけで小妖精との関係値は未だ変わらないと思っているだろう。

 しかし、王宮の中の人間だけが理解しているだけでは解決はしていない。

 何も、王宮の貴族の人間だけが来るわけではないから今すぐの正式開通は無理そうだ。

 思い詰めた深い理由がありそうなリアル王に、僕は言った。


「別に理由を聞こうとは思っていません。ただ、これ以上に問題を起こさなければいいのです」

「分かった、公にすることは約束しよう」

「では、それまでのワープポータルの正式開通は遅らせることにします」

「発表したらセイサを介して報告しよう」

「了解です」


 これでとりあえず、大丈夫だろう。

 リアル王は、何回か話して分かったことだが傲慢すぎず責任感の強い王だと分かっている。

 万が一にも、約束を違えることはないだろう。

 その後にリアル王は話が変わったように言った。


「そういえば、レストよ。大種族五栄圏(ファイブ・グロース)って知ってるか?」

 

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