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運命を変える付与魔術師(エンチャンター)  作者: 舞
1章 小妖精の町(エルフィーナ)
39/45

35 小妖精の町から出発の時

 代償の7日間は最終日にして全てが解決した。

 この7日間のうちに僕はいろんな魔物たちと行動を共にした。あるときは僕が付与魔術を駆使して助けたり便利にしたりと、魔物の冒険者たちと討伐したりしたこともあった。それとは同時に、魔物にも人間とは同様にプライドや負けられない戦い、仲間や友達といった関係が存在することも知った。


 僕の計画では、この日の夜に帰る予定だ。

 その為には、僕は一番早くに来なければならないので荷物を持ってある小屋の前で待つ必要がある。

 そして、ルウやセイサには一言添えて集合場所である小屋の前に到着すると僕より先に二人が待っていたことはとても意外だった。


「早いな、集合の1時間前だぞ」

「主、リーちゃんが早く行きたくてしょうがなかったのだ。私もこのような綺麗な服の着せ替え人形にされるぐらいなら早く王宮を出たかったのもある」

「ところで、リーベルに聞きたかったんだけど村は裕福といえる場所ではないぞ。全て自分でやらなきゃ駄目だし泥作業も一部の場合はやむを得ないかもしれない。覚悟を決めた後に言うことではないけど、それだけは分かってくれよ」

「私を自由にしてくれたのはあなたです。どんなことがあってもついていくことを誓います」

「主、私も森で助けられなければ今の生があるとは思ってない」


 二人共、僕のおかげで今ここにいることにはどうも感謝してくれているようだ。

 どちらかというとパンドラは結構ギャルに近い服装で動きやすい格好で印象もかなり変わっている。対してリーベルの方はお淑やかをイメージしているのか艶々でフリル系が目立つ服装でパンドラとはほぼ真逆の印象を感じさせる服装になっている。

 周りの人からすれば、たぶん二人が友達だなんて思いもしないだろうな。


 とりあえず、今日に町を離れる予定はここにいる二人とセイサとルウと思っている。昨日の計画で、小妖精の移住とミイナとメルとホブンとフェインは転送済みだ。

 これで、町がさらに広がっていないと良いんだが・・・

 そういやミイナの親父さんたちの仲間は仕事が早いって聞いてるから広がっているかも知れない。

 まあ、ともかくみんなが来る時間まで待つか。

 そう思って待っていると、黒妖精たちが道を譲るようにしてある人がやってきた。


「リーベル」

「お父様」

「王国は姉さんや兄さんに任せて頑張ってきなさい」

「はい!」

「そしてレスト、君にはたくさん重荷を背負わせてしまったな。娘共々も含めてよろしく頼む」

「了解しました!それとリーベルに会いたくなったら僕の村にもぜひ来てください」

「うむ、当分の間は自由にならないだろうが機会があれば行かせてもらうことにするよ」


 そう言って王様は王宮へと戻っていく。

 たぶん、相当忙しい中で娘のお見送りとして来てくださったことに僕は後ろから一礼した。


*

「そういや、思ったことなんだけど・・・」


 セイサやルウが待っている間に、沈黙というのも十分気まずい。

 そうさせないようにするために、僕は一つの考えを話そうと口を開いた瞬間に二人が僕の方を向いた。


「小妖精、子竜、人間、友妖精、黒妖精たちがいるわけだけど一緒に住む我々も名字を統一しないか?」

「主よ、名字とはんだ?」

「リーベル、パンドラに説明してあげて」

「えっと、私でいったらリフェースのように親から受け継がれる名のことよ」

「そう、魔物はどうか知らないんだけど人間には名字と名前でセットなんだ」

「でも、私にはリフェースがあるしレストにも名字あるんじゃないの?」

「実は親にはあったことがないし、名字さえも知らないんだ。だから、家族とは言わないんだけどパンドラも含めて共通の名字があった方がいいなって思ったんだ」

「でも、ここに何か名字になるものはないよ」

「いや、そうでもないかもよ」


 僕の目線はリーベルの胸元近くへと集中していた。

 すると胸元を見られていると思ったのかリーベルの平手打ちをほっぺたにクリティカルヒット!

 

 ブヴェラ・・・

 地面に転げ落ちると、普通ならこうなるのが定石といったところだろうが僕は別に胸を見ようとしていたわけではない。

 しかし、そんなことを知る由もないリーベルは重い声で言った。


「そんなにあたしの胸を見たい?」


 恐怖を感じた。

 だけど、パンドラはどうやら僕が何を言いたいかは理解したようだ。


「リーちゃん、別に主は胸を見たんじゃなくてそのペンダントが気になっていたんじゃないかな」

「これは私が小さいときに自分で掘った宝石をペンダントにしたの」

「主、起きてよ」

「すまない、何も言わなかった僕が悪かった」

「主は緑色のペンダントを見て何を思ったんだ」

「いや、その宝石がエメラルドだったし名字がエメラルドなのは悪くないと思ったんだ」


 赤く平手打ちした部分は少しばかり腫れてはいたがリーベルは謝ろうとしなかった。

 こうなる場所を見ると僕に対して遠慮がなくなっているのも、何かしらの表れだろうかと思ったところでゆっくりと起き上がった。

 すると、後ろから声がした。


「エメラルドって名字はいいんじゃないか?」

「セイサ、ルウ」

「すまん、シノフに屋敷の所有権を渡す時間で色々と立て込んでしまって・・・ってその頬どうした?」

「いや、ちょっとバランスを崩して地面に頬をぶつけただけだ」

「まあ、とりあえず回復(ヒール)


 魔法でとりあえず赤く腫れあがっていた頬が元に戻る。

 さて、全員が揃ったところで小屋のドアを開ける。

 その小屋には一言だけメモ書きとコンパクトに改造された転送装置が置いてあった。

 僕はその指示通りにして1人ずつ転送装置で村へ送っていった。

 そして最後に僕は自分でスイッチを押したと同時に転送装置に飛び乗った。

 

 みんなは元気かな。

 そう思いつつも転送装置の光に包まれていく。

 さて、新たな魔物との人生であるエメラルド・レストが生まれた町へ戻ろう!

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