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運命を変える付与魔術師(エンチャンター)  作者: 舞
1章 小妖精の町(エルフィーナ)
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23 代償の7日間 -Day4- 即死蜘蛛騒動2

「そういや、『即死蜘蛛』って討伐するのにどのくらいかかるんだ?」

「一日、一体が限度だろうな。戦っている途中でも即死に対するプレッシャーや威嚇で精神状態なんて普通なら耐え切れない」

「自分に足りないものを埋められることが出来れば、冒険者として一人前になれるんだよ」


 ケントとメイの言葉にギルドに残してきたニマのことが目に浮かぶ。

 ニマには足りないものを埋めることできないどころか見つけられていないのだろう。

 勇者時代は腐っても仲間だったから心の穴なんて簡単に埋められていたのだろう。

 今になってみれば、それは気休め程度にしかならない一時的なものだったと痛感する。

 しかし、今は魔物たちと一緒になって協力することが出来る。

 

 噂をすれば何とやらだな。

 少し歩いて大通りに差し掛かったところで、フェインと会った。

 方向からして僕が住んでいるルウのお屋敷の方向に作ろうとしているものがあるようだ。

 重い荷物を持っていそうだったので少しだけ言った。


「フェイン、忙しいところ悪いんだけどセイサにお願いしてもいい?」

「いいけど、何かあったの?」

「手短に話すと、ギルドで緊急事態が発生して討伐に行くことになったから今日は帰れない可能性があることを伝えてくれると助かる」

「オッケー、伝えておくよ」


 フェインと少し話をしたぐらいなことにケントとメイは驚くようにして僕に顔を近づけた。

 こんな事どっかで見たような・・・そうだ。

 水源の工事の時に、ルウとセイサと知り合っているところを見て町の皆に驚かれたところだった。

 今まで話していたのが、貴族がほとんどだったので普通の住民ともなればこんな反応をするのが普通かも知れないな。


「「貴族と知り合いなんですか?」」

「顔見知りなだけだよ。2人共は普通に僕を冒険者として認識してくれればいいよ」


 こんなところで貴族と鉢合わせしたことによって討伐依頼に支障をきたすことにならないように軽い言葉で流した。

 それをどう取るかは相手次第だが、何も見なかったことにした結論になったのか何事もなく討伐に向かうことになった。

 


 数分後に森のエリアに入ったかと思うと、村と反対方向から戦うような剣の擦れる音と大きな声がした。誰かが戦っている声が響く方向へと3人は急行した。

 数分前に聞き覚えのある声が聞こえた場所を見つけたかと思うと大きな洞窟の前で、先程にギルドを出たばかりの屈強な黒妖精3人のパーティーが瀕死寸前の状態で発見された。2人は気絶しているだけだったが、僕とニマが話した一人にはまだ意識があった。


「この・・・奥に・・・『即死蜘蛛』・・・がいるんだが、あいつは・・・目を見たら・・・いけない」


 そう言って気絶してしまった。

 3人共意識があり、そう長く見ていないせいか即死状態になっていないことが唯一の救いだ。

 そうして彼が指差した洞窟の奥にはただならぬ空気を感じていた。

 それにどうやら長い間に目を見ていると、即死状態になってしまうらしい。


 3人は洞窟に入る前に、僕が一か所に集まるように言って二人に触れた。


「付与、即死耐性、超攻撃強化、超防御強化。これぐらいしか今はできない」

「ありがとう、では行ってくる。君はここで3人を見ててくれ」


 フェンズの時にだいぶ魔力を消耗してしまったことで限られた魔力量で託すことのできる最大限の付与魔術だった。

 『即死蜘蛛』と戦ううえで優先度が高い即死耐性もかなりの魔力は食われる2人であればなおさらだ。やっぱり明日にするべきだったかもしれないな。

 さて、ケントとメイが戻るまでの間に3人を見守っておくとするか。


 そんな時になって、森の魔獣が嗅ぎつけたのか周りの草が揺れ始める。

 今の魔力量は限界に近くて、魔獣の攻撃を3人の黒妖精たちから守りつつも魔力なしの剣の戦闘技術で自分を守らなければならない。最悪の場合、死ぬことも覚悟した。

 

 ガサ

 そこから出てきたのは一匹の白い狼だった。

 なんだか、デジャヴを感じるが一応のために聞いてみた。


「白尾?」

「はい、あれレスト様ですか」


 すると、一匹の白い狼は見覚えのある獣人の姿へと変貌する。

 それにしても、数日経つ間にまた成長したように思って最初は分からなかったし会うのも久々だった。

 どうやら自由に動けているところを見ると、村の運営は6匹の狼に任せているのだろう。


「村の運営は大丈夫なのか?フェインは今は小妖精の町にいるけど・・・」

「はい6匹の狼とも獣人に進化に成功したので、それぞれの運営を任せています」


 そうか、無事に村の方の進行も進んでいる様子で安心した。

 それよりも、洞窟に入っていたケントとメイを心配する。

 そして聞いたところで、息切れしそうな顔に白尾が心配する。


「大丈夫ですか」

「すまん、魔力が切れていて限界ギリギリなんだ」

「そうですね、私が魔力が切れた時に飲もうと思っていたのですが・・・」


 ポケットから水色に光る液体が小瓶に入っていた。

 見たことなんてなかったし、普通に怪しい薬にも思えた。

 魔力回復薬なんて万能なものかは分からないが白尾の発言に疑心暗鬼になりつつも飲む。


 すると、体が水色に光りだして魔力が体に戻っていくのを感じる。

 この超人的な薬はいったい何なのだ!

 その効能に白尾までもが驚いていた。


「流石は、フェイン様の開発した魔力効能薬ですね!」

「魔力効能薬?」

「はい、こちらで魔力と体力を共に全回復させる薬を研究されていたのです。そして、製作段階で偶然にも副産物として製作された薬がこの魔力効能薬なのです!」

「本当にありがとう。これで戦いに参戦できる」

「そういえば、この森に最近は即死蜘蛛が出ているそうです」

「ああ、洞窟の奥で仲間が2人が戦っている」


 すると、白尾が当然として怒りに満ちた表情で牙をむき出しにした。

 そこで、僕は並々ならぬオーラを持ち合わせていることに少しばかり恐怖した。


「主の仲間に蜘蛛風情が苦労を掛けさせおってどうなるか見せてやろう!」


 そう言って洞窟の奥の方へと走ろうとしたとき白尾のしっぽを掴んで言った。

 暴走する可能性もあったので一度、尻尾を触って怒りを鎮めて落ち着かせる。

 僕も白尾がどこまで強くなっているのか確認したくもなった。


「僕も行くから見せてくれよ。君がどこまで強くなったのか!」

「承知!」


 そして、白尾は僕を肩に乗せて洞窟の奥へと走っていくのだった。

 ケントとメイ、頼むから無事でいてくれよ。

 あの2人に負けることはないだろうが、万が一のことを考えざるを得なかった。

 白尾は僕の命令に赴くままに、暗い洞窟の奥へと走っていくのだった。

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