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運命を変える付与魔術師(エンチャンター)  作者: 舞
1章 小妖精の町(エルフィーナ)
12/45

8 運命を変える数時間前

「今日は王宮に泊まっても構わないぞ。娘を救ってくれた礼だ」


 王様のお酒が回った発言に、僕は信じられなかった。

 でも、お酒が入っているのは本心から言っていることと相違ないので甘えさせてもらうことにした。

 部屋は客間の代わりとして使っている部屋だが、普段使っている部屋の数倍は広いのでいつかはこんな家に住んでみたいと思ってしまう。

 それから、再びパーティー会場に戻って終わりまで楽しんだ。

*

 それからは、パーティーは何事もなく終わった。

 すぐ、王様から娘のことで相談があるかと思ったがそんなことは触れもしなかった。

 しかし、後から聞いた話ではリーベルが話していたことについては酔いが回ることもあって正常な判断ができないので保留されたそうだ。普通であれば、このようなパーティーは開催する予定がなかったもので僕がリーベルを救って小妖精の解放を王が受諾したことによる2重のパーティーだったからだ。

 焦る必要はない、僕らが小妖精の町を出る時に決断してくれれば何の問題もない。

 それに、この町ではすることは少なからずやらなければならないことがある。

 風呂の中でそう思っていた時、ホブンが湯の中に浸かって気持ちよくなっているときのことだった。

 まず、僕が言った。


「ホブン、お前はこの町についてどう思う?」

「どうって平和でいい街じゃないですか」

「そう、それにしては黒妖精と小妖精以外の種族を町では見ないのは気のせいなのか?」

「言われてみれば確かに・・・」


 僕も湯に入って、気持ち良くなった。

 そもそも、この町に入ってから王宮の中を見るだけでも黒妖精と小妖精は当たり前のように住んでいる。しかし、そこには流通されるものや他の種族から仕入れたものや運んでくる人種さえも見たことがない。小妖精の町だからこそ、小妖精と黒妖精しか入れないのも町としてどうかと思う。


「でも、それで困っていないからいいのか?」

「不満がある民たちもいないから町としては良いのではないでしょうか?」

「それについては私が説明しよう」


 脱衣所の扉が開くと、そこにいたのは裸の王様だった。

 普通に、町の情勢について聞くのは王様が一番詳しいことを知っている。


「君たちもホブン君を連れてくるときに苦労したことを思い出して欲しい。弱い魔物を入れてくることは禁止とか言われていなかったか?」

「言われたけど、魔物を制限する理由はなんだ?」

「あまり触れたくはないが話すか。最近のことで雑妖精の村が魔人によって滅ぼされた事件があった。数年前に町が大飢饉に襲われたことがある原因が魔人の破壊によって引き起こされたものだった。土地が踏み荒らされて直接手は下さなくとも建物の下敷きになったりと死亡した例も少なくない」

「だから、初対面の時に滅ぼされた話をしなかったんですね」

「だが、その教訓によって強い種族を森から取り入れることが出来れば攻撃にも対抗できるかもしれないと考えることも一つの政策にした。でも、今回のことで一つ学んだ。見た目だけで強さは判断すべきではないことだ。今回からは森のいろんな種族を入れて豊かな町になることを検討してみようと思う」


 そうなってくれれば、我々以外の国からも交流してくれる種族が増えてくれるかもしれない。

 その固まった考えの影響で黒妖精と白妖精だけしか入れない町になってしまったのだろう。しかし、滅ぼされた町なのにここまで復興したとなると素直に凄いと感じてしまう。

 ホブンは少し滅ぼされた時の思いを胸にとどめながらも歯を食いしばっていた。

 僕はホブンの手に肩を置いて言った。


「君の気持ちが分かるとは言えない。でも魔女や姉、僕のように大切なものに出会えたことには感謝して滅ぼされた村の分の命まで生きよう」

「う、うん」


 さて、王様まで入ってきたところでゆっくりと浸かって話しているうちに隣の扉の音と女性たちの話声が聞こえてくる。もちろん、王宮の作りで覗くことはできないようになっているが話し声は聞こえてくる。3人共、静かに聞いていた。


*

 女湯の会話・・・


「フェイン様、相変わらずいいスタイルですね」

「リーベル様だって、これからすくすく成長しますよ」

「フェイン、リーベル、早く洗って湯船につかりますよ」

*


 3人とも聞き覚えのある声だ。

 ふぇいん、リーベル、あとはリアフか?

 すると、王様大きく高らかに笑った。


「リアフはあの時はお酒で酔っておったが、普段は内面を隠しておるからな」

「お父様、余計なことを言わないでください」

「はっはっは、余計なことではなく事実を言ったまでだ」


 リアフってお酒入らなければ、あんなにしっかりしてるんだ。

 この王様、まだ酒が回っているようなテンションになっている。いや、普段はこういう感じで仕事になると真面目になるパターンの奴だ。

 これも遺伝なら、確かに父親と性格は似ている。


「ホブン、そろそろ上がるか」

「そ、そうですね」


 僕とホブンは喧嘩している間に湯船から上がって脱衣所に戻った。

 家族としては性別が違っても心の中まで似ていることって多いもんだなと感じた。

 着替えて、部屋に戻ってから他愛無い話をしながら時間は過ぎていく。


 しかし、僕にとっては夜が本番だったりする。

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