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運命を変える付与魔術師(エンチャンター)  作者: 舞
1章 小妖精の町(エルフィーナ)
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7 2人の胸の内と探り合い

「はわわ」


 小さく小妖精は面識がないのか、また王の後ろに隠れてしまった。

 僕もよく顔は見なかったし、あっちも目を開けるほど余裕がなかったから仕方ない。それに、魔物の仲間であろうとも人間なので恐怖心もあったりするのだろう。

 すると、国王様が2回ほど手を叩いた。


「こちらにテーブルとイス2つを持ってくるんだ」


 そして、窓際のテラスにテーブルが置かれて椅子が2つ置かれた。

 何だ?何だ?

 すると、何かを察したように親族のエルフたちが後ろに下がっていく。

 そして、変わりに小妖精の彼女が前に押し出されて窓を閉め切った。

 2人だけの状況にされる。

 すぐさま、彼女はガラス張りになっているテラスの出入口に張り付いて助けを求めていた。

 内側から鍵をかけられて、普通に脱出するのはここから飛び降りる以外に逃げ道は無くなったな。


 気まずいのだろう、僕の方も気まずいのは一緒だ。

 しかし、扉を叩く彼女に周りの皆はそこに彼女がいないかのようにパーティー会場に馴染んでいった。

 おそらく、これは彼女にとっての試練なのかもしれない。


「なあ」


 声をかけると、彼女は涙目になっていた。

 だが、僕が先導しないと前に進まないことは分かっていたので普通に純粋な眼で言った。


「とりあえず、座ったら?」

「うん」


 振り返った彼女の目は涙が浮かぶ眼は透き通った空のように水色だった。

 年はホブンの少し上でフェインの下ってところだろう。パーティーだからドレスを着ているのは大人っぽさの表れだろうが、顔や行動が共に幼さを残している。ここまで格好と見た目が相反することは人間にはいないタイプだ。

 涙ながらに彼女は首を縦に振って僕と反対側の席に座る。


「別に、君に強制的にしゃべる必要はない。人間のくせに偉そうに他人の国を優雅にしてるとか許さないとでも、思ってくれればいい」


 正直、どんな愚痴を言われても構わないと思っていた。

 別に互いが了承して助けたわけではないからだ。僕の生命が終わってほしくない気持ちの独断と偏見で助けただけだ。あの最初に出会った白尾のように・・・

 そう、深く目を閉じようとしたとき彼女がぽつりと呟いた。


「魔力と共に、あなたがどうしてここに来たのか記憶が流れてきたんです。分かっているから聞きますが、あなたはこの国をどうしたいんですか?」

「どうしたいか、難しいけど自分のやりたいようにするのが一番だと思う。別に支配しようとかは思ってないし、仮に支配しても民の反感を買うのが目に見えているからな」

「本心を初めて聞かせてくれて安心しました」


 その発言に僕は、今までであってきた人に本心をぶつけあえる仲間はいなかった。自分が、会話が止まるのが気まずくて素直に感じていることをしゃべってしまった。この国に入って初老の女性に言われたことで激情にはなったが、素直に気持ちを話したりはしていなかった。

 でも、不思議な感覚がした。

 彼女の前では、何でも話せそうな感じがする。能力では無さそうだし、単に安心するべき魔力の波長が彼女から漏れ出ているのかもしれない。

 そして、彼女はふふっと笑った。


「森の魔女は私を治す薬を開発するように言われていたらしいんですけど、自分の分野に誇りを持っていた森の魔女は、断って逃げたらしいんです。そして、真ん中のテーブルで薬師と話しているフェイン様のお屋敷に忍び込んで、フェイン様と一緒に消えたそうです」


 ガラス張りの閉め切った出入り口に目をやると、真ん中のテーブルではフェインが薬師に小さな紙きれを渡していた。おそらく、進化の秘薬の原材料と作り方においてだ。これで、一つ目的はクリアだ。

 彼女の話の戻るが、フェインがその薬の情報を持っているだろうと思って魔女が亡くなったころに呼び出したというわけか。しかし、僕が目が覚めたときには魔女は亡くなっていた。その時に進化の秘薬のサンプルは1つだけできていたのかはわからない。ただ机にいかにも完成品と言わんばかりに瓶詰に蓋をしておいてあったからだ。フェインが記録を読み漁って、適切な量と混ぜる回数なども何回も試行錯誤して僕が白尾を獣人になった時の生命力を出した指の波長に近づけていった。あながち、薬の情報を持っていることは間違いでもなかったんじゃないかな。


「君、名前は?」

「はい、リベールと言います。初対面の時は失礼しました」

「リベール、僕の計画通りに行くなら国から小妖精が消える。君さえよければ、僕の国で小妖精をまとめてくれればと思う。どうしたいかは自分で決めな」

「私は構わないのですが、お父様がどういうか・・・」

「何も一人で決めろとは言ってない。家族と相談して、最後に決断するのは自分で構わない。あと、数日は滞在する予定だから小妖精の町を出る時までに決断することが条件だ」


 そして僕は椅子から立ち上がって、閉め切られていたテラスの出入り口に手で触れて話が終わった合図のように言った。

 ここでは、彼女に初めて見せるかもしれない。


「付与、開けよ扉(ひらけゴマ)


 扉の鍵が来るっと裏返ってテラスの出入り口が開ける。

 僕が寝ているときに、宴会の時に娘に直接、救ってくれたことに関する言葉を言わせると言っていた。

 しかし、僕は謝ってほしい訳ではない。

 むしろ、感謝されてリーベルに村に来て欲しいと言ったら見返りを作ったみたいで後味は悪く聞こえるからだ。

 

 扉が開いて、彼女はまっすぐ家族の方へ走っていく。

 近くにホブンとフェインがしかめっ面をして寄ってきたかと思うと・・・


「第2王女と何を話していたの?」

「右の姉さんと同感です」

「え?秘密だよ。さあ、パーティーの続きだ」


 まだ確定条件ではないので、はぐらかす以外のことが出来なかった。

 あの進化の秘薬がサンプルとして出来ていなかったかも分からなかったように、こいつらには小妖精の町を出るまでは秘密にしておこう。

 

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