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2016/8/5(金)~初めてのうみさん(後半)~

【登場人物】


うみ…本作のヒロイン


ユリア…うみさんとは小学校時代からの友人でアルブムのキャスト


木村拓夢…ぽっちゃり体系で最古参の一人


平野明哉…ウィッグを被った最古参の一人


山中義昭…最古参で最年長(そして筆者のモデル)


中田…この日だけいたうみ推し


中田の友人…特筆すべき点が無い中田の友人



~初めてのうみさん(後半)~


時刻は草木も眠る丑三つ時。

しかし流石は眠らない街、東京。


他のお客さんがカラオケを歌っているので店内は耳を塞ぎたくなる程の騒がしさ。

そして(一部だが)胸の谷間を強調したメイドさん。


転勤で関東に出てきて早8年…やっと都会の一員としての自覚が芽生えかけていた。




話を戻して、ここはアルブム。

中田と友人が加わり、6人でうみさんのどこが魅力か語り合う。


平野は自身の派手髪と同じ事をアピールしつつ、かわいさにも触れる。


「派手髪でかわいいところー」


木村は本心を出さない。


「一緒にいて楽しいところ」


なんやねん、就職の面接かなんかか?



次は私が言う番になったが、じゃんけんは後出しが最強の理論を思い出し

中田にキラーパスを出す。

※会議やMTの進行役をする事が多く、話題を振るのは得意であった


「かわいいですよね!」


うん、そうだよね。

それは知っている。


しかし、会話を広げる回答にはならない。

仮に広がったとしても2手(どこが?)で終了してしまう。



よく接客業で言われるのが、『いらっしゃいませ』にお客様は

『いらっしゃいました』とは答えない。

向こうから話をしてもらうために、発する言葉を考えよう。



そんな私が満を持して発言する。


「まじめで応援したくなる雰囲気」


どこがまじめ?なんで応援したくなる?他の子との違いは?

これは3手先まで考えられた私の模範回答であった。



もちろんうみさんは、私の回答に興味津々。


「え?なんで?どこが真面目なの?」


初日に見た時間外に洗い物をしているところを根底とし

他のキャストは店長?ボーイ?から指示されるまで洗い物をしない事実を説明。

最後に真面目な若者を応援したい純粋な気持ちを伝える。


「本当に嬉しいんだけど…」


うみさんが泣きそうな表情で喜んでくれている。


ポンコツな頭だけど必死に考えて良かった…と感慨に浸っていると

やたら胸を露出したメイドさんがやってくる。


「うみ、やったじゃん!」


声の主は先月お会いしたユリアさんだった。


「うみ、学生時代にあんま褒められた事ないから」



ユリアさんはうみさんより出勤が多く、木村や平野とは顔見知りの様で

私の事も認識してくれており、自然と中田の紹介をする。


簡単に説明が終わったタイミングで手にグラスをもった状態で


「じゃあ、ごゆっくりー」


どうやらユリアさんも自身のお客さんが来ていた様で

飲み物を作りにこちらへ来ていたようだ。


もう少し、学生時代のうみさんの話が聞きたかったのだが…



その後は6人うみさんのかわいさを共有して、気づけば3時20になっていた。



突然だが、ついにその時はやって来た。


うみさんが飲んでいたSロゼが無くなり


「飲み物貰っていいですか?」


と聞いてくる。



その場に瞬発力の神様がいても負けないくらいのスピードで答える。


「Sゴールドで…」


「え?いいんですか?」


おっと、予想外の返答が来た。

このパターンは用意してなかったぞ…


「応援している証明です」


この頭と口、自分で思っているよりもよく動くようだ。


「ありがとうございます!」


お礼を言われた後、うみさんはボトルを準備し栓を開ける。


「3,3,2,2,1,1,ポーン!」


とてもいい音だ。


うみさんが用意したグラス2つにうみさんと私のSゴールドが注がれ

一緒に乾杯をして飲む。


私の人生でこれほど幸せな瞬間があっただろうか。。。



そうこうしているうちに、時計は4時を過ぎる。


閉店は5時、会計は4時50分、オーダーストップは4時30分。

タイムテーブルは頭に入っている。


そんな私の余裕が平野の一言で崩れ去る。


「チェキの締め切り時間だね」


そんな時間があった事を初めて知る私。


「みんなでチェキを撮ろう!

 うみさんとうみさん推し5人で!!」


何となくわかっていたが、平野は根はいい人らしい。



うみさんを中心に座らせ、周りをオタク4人がぐるっと囲い

うみさんを一番かわいく撮れると自負しているユリアさんに撮影してもらう。


そうして出来上がったチェキにうみさんが落書きをして平野に手渡す。


すると平野が


「みんなにも共有するからSNSのアカウント教えてー」


とコミュ力抜群な事を言い出す。


皆でアカウントを交換して平野が個々にチェキを撮影した画像を送る。



「ありがとうございます」


善意で画像をくれた平野に感謝しつつ、Sゴールドを飲み終わったタイミングで

お会計の時間となる。


「またうみさん推しで集まって飲みたいですね」


会計後にうみさんがポイントカード記入しているタイミングで

誰が言うでもなくそんな雰囲気になり、想い人と友人を一緒に手に入れた気分になる。


うみさんからポイントカードを手渡され、退店の為にエレベーターに乗り込む。


「今日は本当にありがとうございました!」


我々5人に向けてうみさんが挨拶をしてくれる。



なんてまじめでいい子なんだ…


閉まるエレベーターの扉に対して理不尽な感情を覚えつつも

今日の出来事を反芻して記憶に留める。


「じゃあ、また明日!」


エレベーターが1階につくと、平野が本気か冗談かわからない挨拶をしてくる。


「また明日!」


翌日も来る私は、その平野の言葉に力強く答えた。



それぞれが駅やホテルに向かって歩き出す中

私は次の日のアルブムに備え、予約していたカプセルホテルへ向かった。

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