2016/8/5(金)~初めてのうみさん(前半)~
【登場人物】
うみ…本作のヒロイン
山中義昭…最古参で最年長(そして筆者のモデル)
~初めてのうみさん(前半)~
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人生で、あの選択さえなければ…という出来事はいくつかあるが
この日は間違いなく、その一つであっただろう。
離婚して以降、表面では楽しく面白くふるまう事もあったが
心の中では靄が掛かったようにスッキリしない状態が続いていた。
このまま何となく仕事をして、一人孤独に死んでいく。
何が楽しくてこの人生を生きているんだろう。
靄の向こうに朧気ながら自分の人生の終着点が見えていた。
彼女の存在はそんな靄を晴らしてくれる救世主なのか。
それともまやかしの希望を与える悪魔なのか。
この答えは本作が完結する際に書きたいと思う。
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7月最終週、私は体が宙に浮くのではないかと思うほどウキウキであった。
理由は一つ。
8月1週目に研修があり、8/6、8/7と8/13、8/14が休みだったのだ。
『これは4日ともうみさんに会えるチャンス…』
これも偏に、人生を頑張っている私へ神様がくれたプレゼント。
そう思っていた。
ただ、結論から言えば8/6と8/7はアルブムに行きはしたもののうみさんが不在で
会う事が出来ず、肩透かしを食らう。
パチンコで81%継続のRUSHに入っても肩の力が入っていると
単発で終わる事も珍しくない。
そんな事例を真似たような2日間であった。
なお、誰とあって何の話をしたかはポイントカードを見てもわからなかった。
神に祈りは通じなかった様だ。
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ちなみにポイントカードは1000円で1P、50Pで1枚となっており
貯めた枚数によって特典が変化する。
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そして満を持して8/5の夜…北関東の自宅を出てアルブムに向かう。
髪型はもちろん、ひげ、眉毛、鼻毛まで入念に処理し
シャワー後に香水を2プッシュ。
口は歯磨きの後にマウスウォッシュ。
服は清潔な印象を持ってもらうために白のポロシャツ、靴は某メーカーの人気シリーズ。
ロールプレイングゲームで例えると、レベル99にしてラスボスに挑むとまではいかないが
スキルをマックスにする等、考えられる中で最高の準備をしたつもりである。
そして23:00、決戦の地 秋葉原に到着する。
いつもの道順でいつもの歩幅で、いつも通り。
B型男性の大好きなルーティーン。
エレベーターに乗り、7階のアルブムへ。
エレベーターの階を示す表示が一つずつ上がっていく。
永遠とも思えるエレベーターの動きが止まり、扉が開く。
聞き慣れた入店の音。
来た、俺の戦場だ!!
(心の)勢いは凄まじかったが、予想外の事態が起こる。
「いっらっしゃいませ~!」
そこには7月の夜に見た、この一か月待ちわびた
うみさんがお出迎えで対応してくれたのだ。
「こんばんh」
そんな私の挨拶を遮るように、うみさんが言う。
「最近見かける人だ!」
『は?え?なんでうみさんが私の事を!?』
うみさんが私を認識していたことが死ぬほどうれしかった。
まだ世の中捨てたものじゃない、そう切実に思った。
「誰か女の子に会いに来たんですか?」
サッカーで言えば足を出しただけでゴールになるような
そんな質問がうみさんから投げかけられる。
「うみさんです。
最初に見た時からお話してみたいと思ってました!」
もう、これしか言えない。
今の幸せを120%感じたくて、余計な事に思考力を割けない。
「え?本当ですか?嬉しいです!」
「よ、良かったです」
人間、嬉しいときは単純な反応しかできない。
うみさんのその答えに昇天する様な気持ちであった。
「今、2人お客さん来ているから一緒でもいいですか?」
「大丈夫です」
そうして席へ案内される。
うみさんも私も想像できなかった。
儚いようで濃かった2年4か月の物語がここからスタートする。




