2017/1/28(土)~生誕イベントと不毛な戦い」~(中盤)
HITOC…アルブムの店長的ポジション
うみ…本作のヒロイン
ユリア…露出全振りが特徴のメイドさん
ピンクさん…ユリア推しのエロトーク全開お兄さん
まってぃ…ユリア推しで声の小さい人
大東山偉紀…イケボ大学生
木村拓夢…ぽっちゃり体系で最古参の一人
平野明哉…ウィッグを被った最古参の一人
山中義昭…最古参で最年長(そして筆者のモデル)
~生誕イベントと不毛な戦い~
現在の時刻は1時40分。
病んで突っ伏した木村を尻目に、平野は席を立ち他の客と雑談を開始した。
この誰にでも躊躇なく話しかけるのが出来るのは平野の長所だと思う。
いや、今はそんなことせずにそんなことせずに責任取れよ…と思ったのは私だけでは無い様だ。
「ちょっとマジであり得ないんだけど…」
木村に気づかれないようにユリアが耳打ちしてくる。
私はうみさんが見ている手前、疑われるような行為はしたくなかったのでDMでユリアに対して
「とりあえずうみさんが戻ってくるまでは我慢ですね」
と返すのが精いっぱいであった。
そんな状況をつゆほども知らず、親切心から
「大丈夫ですか?」
と優しく声を掛けてくれるキャストやお客さんもいて、すごく申し訳ない気持ちになってしまったのを覚えている。
木村は一般的な人と比べて怒りやすいが平野と違って最低限の礼儀はわきまえており
「大丈夫です」
と答え、むくりと体を起こす。
しかし目は完全に怒りモード全開だ。
少しでも気が紛れるように会話を振るも、そっけない回答しか来ず。
高い金払ってボランティアするって、来世はハーレム系ラブコメの主人公に生まれ変わるくらいの徳を積んでると思う。
ユリアと四苦八苦していると2時前、エレベーターが開き一人の黒の紳士が入店してくる。
大東山であった。
エレベーターからは木村の顔が見えず、地獄のような空気を察する事は困難であっただろう。
HITOCさんに挨拶した後、顔見知りの我々を見つけると
「おつかれさまですー」
と私が女だったら即落ちしそうなイケボで声を掛けてくれた。
3人とも
「お疲れ様です」
と返すも明らかに様子が違う木村。
既に見慣れた光景で動じる事も無い様子の大東山。
ちょうど木村がトイレで席を立ったので、俺TUEEEE系アニメを見る時のように興味津々な目をしながら
「なんかあったんすか?」
と聞いてきたので、ユリアとこれまでの流れを簡潔に説明する。
状況を認識した大東山は苦笑いを浮かべるしかなかった。
そしてトイレから戻ってくる木村。
本当は大東山が隣に座って助けてくれると嬉しかったのだが、私の隣が空いておらずピンクさんまってぃ側の席に案内されていった。
視界の端で平野と挨拶をしていたのは記憶に残っているが、それ以上は思い出せない。
そうこうしていると、2時10分となりうみさんの誕生日を祝いに来ていたお客さんが帰宅。
うみさんがトイレに行ったあと、卓に戻ってくる。
トイレで私のDMを読んでくれた様で、了解と返事をくれた。
そうしてゴキブリの様に平野も自席に戻ってきた。
「なにか飲み物もらっていいですか!」
お願い口調なのに語尾が強い謎。
ここは木村に花を持たせるところなので、無言を決め込んでまっていると想像よりも一瞬遅れて
「…食パンで」
と不機嫌オーラ丸出しで木村が発言。
この空気で平野に分けるのは微妙だなと感じ
「私はお酒飲むので二人で飲んでください」
と助け船を出す。
平野も分かってか分からずか知らないが
「僕もお酒でー」
と乗ってくれたので助かった。
うみさんと2人で乾杯し、少しだけだが2人で話す時間を設け少しずつ機嫌を取り戻す木村。
ホッと一安心の私。
しかし試練は連続してやってくるもの。
3時を少し過ぎたタイミングでユリアが卓に来てランチェキの配布を開始する。
普通にランダムで引かせてくれればそれでよかった。
それ以上は望んでいなかった。
しかしその淡い希望はユリアの次の一言で消し飛ぶ。
「私もうみも山中さん好きだから当たりチェキあげるねー」
お前何考えてるの?脳みそ大丈夫?
冗談は顔だけにしろよ。
「いや、悪いんで大丈夫ですよ。
公平に分けましょう」
と返すが、聞く耳を持たないユリア。
その光景を見ていた平野が泣きそうな顔をして
「僕には当たりないの…?」
と問うと
「平野にはない」
と言い放つユリア。
確かに面倒ごとだけ押し付けられて大変だったのは理解できるし、自分が卓に付いたらすぐ違う卓に行ってしまってプライドを傷つけられたのも分かる。
でも…でもだ。
平野から返答は無い。
気になって隣の平野の顔を覗き込むと目を真っ赤にして泣いている。
そしてガクガクと震え出した。
その光景を見たうみさんはフォローに入る。
「デジカメで撮ったから複製できる。
だから泣かないで。」
泣かせた張本人のユリアはフンッという表情で平野を見下ろしている。
木村は目に生気が戻ってきた。
私はフォロー方法を必死で考えていた。
そしてこの日のフィナーレへと続いていく。




