2016/11/5(土)~閑話休題・連休の過ごし方~
【登場人物】
山中義昭…最古参で最年長(そして筆者のモデル)
~閑話休題・長期休暇の過ごし方~
長期休暇と言えばお墓参りと母方の祖父への挨拶、これが定番となっていた。
両親と一緒に山中家の墓地へ行き、墓石を掃除して線香を炊く。
小学校のころからのルーティーンなのでブランクがあってもそれなりに熟せる。
うみさんと同じ時代に誕生させてくれたことを先祖に感謝し、祖父の家へと向かう。
港町に住んでいる祖父は地元で(元)漁師をしていて、近所でも有名な不良…だったらしい。
らしいというのは母から怖かったという昔話しか聞いたことが無く、いつも某熊のマスコットキャラクターの様に穏やかに座っていた。
また、元はヘビースモーカーであったが、初孫である私が産まれてからスパッと煙草をやめる漢気も持ち合わせていた。
そんな祖父に結婚の報告はしていたが離婚の報告はしていなかった。
恐らく母伝えで聞いているとは思うが、自分の口から伝える事に意味がある。
1/4は祖父の血が入っているので変な正義感というか漢気が芽吹く。
「じいちゃん、前の奥さんと離婚した」
中途半端や回りくどいのは嫌いと薄々感じていたのでストレートに行く。
「そうか…二人で話して決めたのならいんじゃないか」
正確には私から三下り半を突き付けたのだが、誰も知らないので円満離婚という事にしておこう。
「また再婚するときには挨拶来るから」
そのつもりは全く無いが、精いっぱいの強がり。
「いい人が見つかるといいな」
そんな私の強がりを察して、敢えて当たり障りのない言葉を返してくれる。
祖父は本当にカッコいい男だ。
少しくらい空気が包んだ祖父宅の居間。
空気を察した両親が口を開く。
「そろそろ掃除の時間だと思うから帰るわ」
そう、祖父は1日6時間掃除すると揶揄される程の綺麗好きで掃除機を3ヶ月で使いつぶすほどの潔癖症。
それは孫が来ていても変わる事はない。
次はいつ帰ってこられるか…そんな事を考えながら祖父と別れの言葉を交わす。
さて、帰省でやる事はすべて終わった。
ここからは遊びの時間だ。
高校時代の仲間4人のうち2人が地元に残っており、連絡を取る。
この日は日曜日で夜のお客さんが少ない事を見越して、個人の居酒屋を経営している友人のお店集合となる。
時間は19:00。
もう一人の友人の車に同乗させてもらい、お店へ到着する。
市内にあるお店だが、どこか隠れ家的な雰囲気があっていい。
「いらっしゃいませ」
店内に入ると20歳前後のかわいらしい女性店員が我々をお客さんだと勘違いして元気よく挨拶をしてくれる。
「古内(お店の経営者)と約束してた山中と西川(車の友人)です」
そう伝えると古内から話を聞いていたのか、カウンターへ案内される。
店内は日曜な事もあり、お客さんは疎らだ。
「義昭、久しぶりー!」
厨房の見えるカウンター席へ着くと古内が昔と変わらない元気な声で声を掛けてくる。
「古内久しぶり!」
そこからは思い出話に花が咲く。
誰が結婚した、離婚した、転職した。
田舎なので情報が駆け抜けるスピードは光ケーブルが普及した現代のインターネットより早いかもしれない。
凡そ知人関係の話をして一息ついたタイミングで西川が切り出す。
「そういえばさっきの子はアルバイト?」
「バイトで俺の彼女、ちなみに今年19歳!」
昔から年下に持てるやつであったが、13歳差とは。
…ん?
なんか聞き覚えのある年齢差だぞ?
それはうみさんと私の年齢差を超えるカップリングであった。
これは少し希望(なんの?)が出てきたのかもしれない。
こいつの行動や言動をみて、若い女の子にモテる特徴をつかむ。
今長期休暇の最大の目標ができた。
結果としては遊ぶだけ遊んで何も得る事が出来なかったが。
その後も連日、友人とお酒を飲んだり女の子のいる店へ行ったり大人のお店へ行ったり。
ボーナス1回分のお金を1週間足らずで使い果たしてしまった。
『やばい、遊び過ぎた…』
通帳を見て、とても後悔したのを覚えている。
ちなみにうみさんにあってから一回も大人のお店行ってない設定であったが、実際はこの時に1度だけ行った。
もう時効だしだれも気にしていないので大丈夫だろう。
最後の夜、金曜に帰る事を知っていた妹が姪っ子を連れて木曜日の夜に泊まりに来た。
両親は23時くらいに2階の寝室へ行き、姪っ子2人はリビングにしいた子供用布団で寝ている。
妹と面と向かって真剣な話をするのは久しぶりだ。
禁煙の実家で二人して電子タバコを吸いながらお酒を飲み語る。
私の離婚の事、仕事の事、妹の家庭の事。
人生とは思い通りにいかないものらしい。
そう感じさせてくれた最終日の夜であった。
開けて金曜日の朝。
私の長期休暇は残すところ二日となり、午前中に帰りの電車へと乗車する。
両親と妹、姪っ子に見送られるその光景は戦時下の出征の様であった。
そう、あの戦場にもう一度戻る為に。




