2016/9/29(木)~きちんと伝える事の大切さ~
【登場人物】
うみ…本作のヒロイン
山中義昭…最古参で最年長(そして筆者のモデル)
~きちんと伝える事の大切さ~
明日を最後に1ヶ月以上うみさんに会えないと知った翌日。
会議の資料を作りながらも頭の中は会えなくなる寂しさと正確に伝える方法で一杯だった。
もちろんそんな状態で作った資料がどの程度のものであったか、上司からやり直しを命じられた4回という回数が示してくれていた。
どうやら私は恋(便宜上の表現)と仕事は両立できないらしい。
結局、朝7:30に出社して帰宅したのは22:00を過ぎていた。
開けて翌日、残件らしい残件も無く仕事を定時であがると1時間仮眠。
起床後にお風呂→身支度を済ませ、青が目印の常磐線でいざ秋葉原へ!
全然関係ないけど、小学校の社会の授業で習った『いざ、鎌倉!』ってこんな気分だったのかな?と思ったり思わなかったり。
特に電車遅延もなく、秋葉原に到着したのが21時ちょうど。
今日の晩飯は…目の前に黄色く光る北陸発祥のカレー屋さんに決めた!!
カツ2枚とエビフライ、ウインナーが乗っている若者()向けの食券を購入し商品の到着を待つ。
しかし待っている時に苦い過去の記憶が蘇る。
あれは今から12年前…まだ学生の時分だったか。
土曜日のお昼に友達とインド人経営の本格カレーを食べた後、夕方ごろバイト終わりの彼女を迎えに行ってディナーとドライブをする予定であった。
食事終わりに友達と別れ、車で彼女の働いている大型ショッピングモールの駐車場に行き、メールで車を止めている場所を送信。
15分ほどして彼女が笑顔で手を振りながら車に向かってくる。
私も社内から手を振って応え、笑顔の彼女は私の車の助手席のドアを開けて入ってくる。
「待たせてごめんね!」
あんまり済まなそうには見えないけど、一声かけてくれるのは正直嬉しいものだ。
「バイト、お疲れ様」
紳士たるもの、常に笑顔で女性を労う言葉も忘れはしない。
『今日のデートも幸先いい感じだ!』
と確信した瞬間、なぜか彼女の顔が曇りだす。
「?どうしたの??」
不機嫌になる理由がわからず不安になり、ド直球に聞く。
「車も山中君もカレー臭いんだけど…」
よくよく聞くと彼女はカレーが原因で食中毒になった経験があり移行、カレーの臭いがすると気分が悪くなる体質になってしまったらしい。
必死に謝る私に対して彼女は
「山中君が悪いわけじゃないけど、今日は気分悪くなったから帰るね…」
と言い残し、徒歩5分くらいの自宅に歩いて帰っていった。
その後、彼女と別れるまでカレーを一切口にしなかった私。
話を戻してカレーは服や髪に臭いが付きやすい食べ物。
という事はうみさんに会う前に歯磨きと香水とヘアミストをし直さなければ。
カレーを飲むように食べたあと近くのドラッグストアで一式を買い込み、駅前の商業・ビジネス複合ビルの裏で臭いをリセット。
一回失敗しても二回は繰り返さない男、山中である。
そうこうしていると時刻は22時前。
いつものようにアルブムの方向へ歩き出す。
平日深夜のせいか外販をしているメイドさんの数は少なく、必然的にメイドさんへ無駄に絡む派手髪の平野の姿も無かった。
見慣れた路地裏のビルに入りエレベーターに乗る。
目的地はアルブムのある7階にセット。
戦いが始まる直前の空気感を肌で感じつつ、スイッチが入って気分が高揚してくる感じが好きだ。
チロリロチロリロ~♪
7階に到着してエレベーターから出ると聞き慣れた入店音が耳に入る。
「いらっしゃーい」
予想に反してHITOCさんが出迎えてくれた。
「ごめんね、うみ電車乗り遅れて20分ぐらい遅刻するってさ」
なるほど、真面目なうみさんでも人間なんだから遅刻する事はあるよな…と自分に言い聞かせる。
じつはうみさんの遅刻は…いや、これ以上はやめておこう。
HITOCさんと他愛もない話をしていると入店音が男2人きりの店内に響き渡る。
「HITOCさん、遅刻しちゃいました、すみませーん」
続いてうみさんの謝罪の声が聞こえてくる。
「山中さん来てるから早く準備してね」
HITOCさんが答えると
「え?山中きてるの!??」
という驚いたような声が聞こえてくる。
「山中です!!」
何となく乗るしかない、このびgg…大波に。
すると驚くことに私服ですっぴん姿のうみさんがこっちに向かってくる。
私服ですっぴんでもお美しい。
「山中、せっかく来てくれてるのに申し訳ない」
「そんな、私が好きで来てるので謝らないでください」
そんな会話を客席側でしていると、HITOCさんの雷が落ちる。
「いいからさっさと着替えて山中さんの相手をしなさい!」
そそくさと更衣室に向かったうみさんを見送り、HITOCさんと他愛もない雑談をすること15分。
「やーまーなーかーおまたせー」
メイド服に着替え、バッチリメイクしたうみさんがやってくる。
「こんばんは、うみさん!」
軽く挨拶を返し、うみさんとカウンター越しに正対する。
「そういえばこの間のみなかみの誕生日イベントどうだった?」
誰から聞いたのかは知らないが、うみさんからみなかみさんの誕生日イベントについて聞いてきた。
「どうもこうも、1時間以上二人きりの時間があって大変でしたよ」
まぎれもない事実を苦笑いしながら伝えると、うみさんから
「ふーん、二人っきりでよかったねー」
という、ツンデレテンプレートの様な回答が返ってくる。
『あれ?少し妬いているのかな?』
もう少し突っ込んだ話をして反応を見たかったが、そこまでの人間性を築けてないので話の方向性を変える私。
「木村さんが途中から合流して…」
「修さんや広さんと会話しました、修さんと地元同じなんですね!」
この手の話から会話が広がり、HITOCさんも交えてみなかみ誕生イベントの反省点やうみさん誕生日イベントの注意点を話する。
建設的な話をしていると時間が経つのは早く、もう時間は3時前になっていた。
うみさんが遅刻した40分も踏まえ、あっという間にこの時間である。
「今日もゴールドでいいですか」
この時間のドリンクおねだり時にゴールドを開ける癖がついてしまっており自然な流れで注文する。
「ありがとう、山中!」
そういって喜んでくれるうみさんの笑顔を見られれば、ボトルを開けるのも安いもの。
そしてこのタイミングを逃してはいけないと、本題を告げる。
「そういえばうみさんにお話がありまして」
「え?どうしたの?」
普段見せいない神妙な面持ちが、不安をあおってしまったのか真顔で聞いてくるうみさん。
「実は職場都合で10月は来れなくて次は11月になりそうなんです・・・ごめんなさい」
それを聞くと安堵した表情と寂しそうな表情の中間的な表情をしながら
「仕事だったらしょうがないね…
でも11月に会えるなら安心した!」
と、私に気を遣わせないように回答してくれる。
帰り際にも
「もし来れるタイミングあったら来てね!
待ってるから!!」
と言って見送ってくれた。
その言葉を聞いて、何としてでも来てやろう静かに闘志を燃やす9/30(金)の早朝であった。




