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2016/9/10(土)~1回目の誕生日(前半)~


【登場人物】


うみ…本作のヒロイン


山中義昭…最古参で最年長(そして筆者のモデル)



~1回目の誕生日(前半)~




誕生日…それは20歳を超えるとどうでもよくなるイベント。

そして独り者にとってはクリスマス、バレンタインと双璧を成す絶望イベント。


何名かの友人・知人からお祝い連絡は受けるが、基本的には自身の存在を否定されるだけの1日である。


唯一のメリットは自身が何歳か記憶し直す、そんなところくらいか。


※ちなみに転勤前の職場の女性先輩と後輩から連絡が来ていたのは内緒の話



8月最終週、うみさんと誕生日を迎えるべくシフトを担当している後輩にそれと無く相談してみる。


「佐藤さん(後輩)、誕生日があるので9/9を早番にして10を有休、11法定内休日って出来ますか?」


「確認するのでちょっと待ってください」


後輩は作成前のシフト表を確認し、満面の笑みで

※希望休や有休を先に入力するのが一般的であった


「大丈夫ですよ!メイドカフェの女の子とデートですか?(満面の笑み)」


学生時代にテニスの全日本の強化選手に選ばれていただけあって、爽やかだ。


そしてなぜその話を知っている…


「里美さんと真美さんから聞きました」

※~山中総研 メイドカフェ戦略会議~参照


失念していたが歩くスピーカーの様な方々に相談してしまっていた。

そう遠くない未来に職場中に広まっているな。



少しの懸念を頭の片隅に覚えつつも、念願としていたうみさんと誕生日を迎える計画は順調な滑り出しを迎える。



次にうみさんの予定を確認する。

前回、OKの旨で回答を頂けていたので簡単に


「うみさん、お疲れ様です。

 先週話していた私の誕生日の件。

 9/9は22:00から出勤でしょうか?」


送信完了っと。


ピロん!


お、流石若い人。

返信がめちゃくちゃ早い。


「山中、お疲れ。

 9/9出勤だから大丈夫だよ。

 楽しみだね♪(恐らく本来はついていなかった)」


ピークの過ぎた格闘選手が引退前に世界一に返り咲いた時の様なガッツポーズを決め、謎の踊りを踊る。



一頻り感動を終えたところでフッと頭に過る、客側の誕生日って何をすればいいんだ?


お祝いされる側だから何も考えなくていいのかな?

それともサプライズ的なものを行った方がいいのかな?


どうしていいのか全く分からない、困ったな。。。


ピピピピー(ブーブー)


ん?電話?香苗さんから?


頼りたくは無いが、たまたま仕事の用事で香苗さんから電話がかかってきたので、それとなく聞いてみる。


「香苗さん、こういった事情でどういう風に立ち回っていいかわかんないんですよね」


「まずはいつも通りの事をいつも通りに行う

 そこから余裕のある範囲でうみちゃんに何かしてあげればいいと思います」



そうだ、仕事もメイドカフェも戦い方は変わらないのだ。

根本的なところを忘れていた事を認めつつ香苗さんにお礼を伝える。


「香苗さん、ありがとうございます」


「いえ、私でよければいつでも相談にのりますよ」


相変わらず、付き合いのいい子である。




話は進み、今日は9月9日。

今日の仕事が終われば、うみさんと誕生日を迎えられる。


デスクに向かう顔も思わずニヤけて…いや、精悍な顔つきになる。


そして会う人、会う人から半分茶化しの入った質問を受ける。


「山中さん、今日はメイドさんのところに行くんですか?」


「ホテルとか予約してるんですか?」


仕事の邪魔だし、うみさんにそんな邪な感情は抱いていない!


と書いてはいるが、主観的にみてもにやけながら


「今日はメイドさんのところに行って、一緒に誕生日祝うんです」


と言っていたと思う。



しかし、敵は思わぬところにいた。


「山中、明日確認するから会議用の資料今日中に仕上げといて」


上司からの無茶ぶりである。


普段なら文句を言いながらも3時間くらい残業して作成するのであるが、今日はそんなわけにもいかない。


かと言って、プライベートを優先して仕事を疎かにするのは愚かな事。


導き出したのは宮本〇〇と同じ、二刀流。


デスクトップPCで資料を作成しつつ、ノートPC(Daas)で資料には載せないデータの分析などの情報収集をしファイルサーバで共有する。


人間、追いつめられると意外と出来るものだ。

結局1時間は残業してしまったが、まだ17:30。


うみさん出勤まで時間はたっぷりある。


歩いて10分、車で5分の家に帰り、山中ルーティーンを決め、18:30に最寄駅から秋葉原へ向かって出発。



何事もなく安心するのもつかの間、突然お腹が空いている事を自覚する。


『この時間なら…あの店が…』


20時過ぎに秋葉原へ到着した私は、先月も行った洋食屋さんへ直行した。


21時閉店で20時半がラストオーダー。

しかも人気店なので、メニューによっては売り切れの事もあるらしい。


入店すると人はまばらで、如何にも閉店前の雰囲気。


「いらっしゃいませ」


前は可愛い女の子が出迎えてくれたが、今日はナイスミドルなおじさま。


席に案内されあと、少しメニューを見るふりをしておじさまを呼ぶ。


「ハンバーグ、唐揚げ、スタミナ焼き定食で」


前回食べたのと同じ定食を注文し、調理場を見ながら時間を潰す。


狭いスペースの中ですごく手際よく調理している。

流石プロだ。。。


「唐揚げ、スタミナ焼き定食で」


「すみません、スタミナ焼き今日は終了なんです」


後ろからスタミナ焼き売り切れの声が聞こえてくる。


「ハンバーグ、唐揚げ、スタミナ焼き定食、お待たせしました」


目の前に本日ラストのスタミナ焼きをのせたお皿が置かれる。


後ろのお客さんに悪いなーと思いつつ口いっぱいに頬張り、ご飯をかき込む。



これほど幸せな時間があるだろうか?



全て食して会計をし、いざアルブムへ…と思ったけど少し時間が早いので秋葉原をうろうろ。



大通りに出て暫く歩いていると見慣れた緑髪の男がメイドさんとしゃべっている。

あれは間違いなく平野だ。


少し見ていたら2分くらい話して、別のメイドさんに話かけに行く。


『やっぱり平野は顔が広いんだな』


ほぼほぼ立っているメイドさんすべてにアクションを起こした平野。

軽く尊敬する。



そんな平野観察をしていると、時刻はそろそろ22時。

さて、決戦?の時間だ。


その足をアルブムの方向へ向け、颯爽と歩き出す。


エレベーター前で本日の勝利を神と女王陛下に誓い、いざ誕生日のアルブムへ。

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