2016/8/6(土)~山中の災難な夜(後半)~
【登場人物】
うみ…本作のヒロイン
木村拓夢…ぽっちゃり体系で最古参の一人
平野明哉…ウィッグを被った最古参の一人
山中義昭…最古参で最年長(そして筆者のモデル)
~山中の災難な夜(後半)~
1時間遅れで合流した私は場の空気を読むことから始めた。
『極楽〇土がー、代々木公園でー』
音楽プレイヤーをリピートしているかのような平野の話題に
死んだ魚のようなうみさんと木村の目。
『とりあえず、話の話題を変えねば』
自身と周囲の人の為に、この意味の分からない会話を終わらせる事を決意。
その決意は私の力ではなく、木村の口から出た一言で実現した。
「うみって動画投稿サイトに自分が歌ってる姿アップしてるんだよね?」
木村よ、なぜそんな話題を知っている。
そしてここぞとばかりに切り出して来るあたり、狙ってたな。
棚ぼた的に話が切り替わり、うみさんの歌が上手だという方向に。
うみさん自身は謙虚に対応していたが、隣にいたユリアが
「うみ、歌めっちゃうまいよ!」
と発言した影響で、平野が300円で女の子に1曲歌ってもらうオーダーをうみさんに伝える。
少し困惑しながらも、うみさんが選曲して歌い出す。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
アニメ好きならほとんどの人が知っている某アニメのOP。
控えめに言って涙が出てくるほどの上手さ。
何なら隣の平野は普通に泣いている。
『このビジュアルでこの歌声、、、芸能界が放っておかないな』
などと一人で考えていると、他の卓でカラオケが入ったようで
店内はクラブ(いった事無いが)の様な盛り上がり?騒がしさ?に。
会話を楽しみたい私からすれば、少なくとも歓迎するような状況では無いが
目の前のうみさんは大声を出して盛り上がっている様子。
『まーうみさんが楽しんでいるなら良いか』
静観を決めた直後、後ろの卓から怒鳴り声が飛んでくる
「お前、うっせーんだよ」
どうやら声を出していたうみさんに向けられた発言の様だ。
「怖いんだけど…」
小声でうみさんがつぶやく。
若い女の子にそこまで言わなくても…と思い振り返ってみると…
そこには1時間前に私に絡んできた4人組が座っていた。
ビビったの3割、何か起こして店に迷惑かけたくないの7割で
4人組には何も言わずに、うみさんのフォローを行う。
「他の卓の事は忘れて、ここで盛り上がりましょう!」
平野や木村もその空気を察して、アニメの話や動画投稿サイトを中心に話題を展開。
1時間くらいゆったりとした会話が続き、今日もこのタイミングが訪れる。
「飲み物貰っていいですか?」
木村が開けた目の前のPポムは既に空になっており、ドリンクのおねだり。
すかさず平野が口を開く。
「Sロゼで!」
「ありがとうございます」
うみさんが答える。
うみさんがSロゼを準備している間にふと気になる。
前回もPポムとSロゼが開いていたが何故だろう?
それとなく、平野と木村に聞いてみると
「Pポムが一番おいしい」※木村
「Sゴールドはおいしくない」※平野
との事。
『ここでの戦い方は決まったな』
余裕をぶっこいてそんな事を考えていたが
今となってはSゴールドマラソンの始まりだったのかも知れない。
ダラダラとアニメの話をしていたら気づけば時刻は3時過ぎ。
平野の開けたSロゼが空く。
「飲み物貰っていいですか?」
本日2回目のうみさんからのおねだり。
「Sゴールドで!」
人が息をするがごとく、自然と注文できた気がする。
「山口さん、ありがとう!」
また名前を間違えられた。
でも喜んでもらえたなら重畳極まりない。
その後もダラダラ会話をしていたらお会計の時間に。
「ゴールド、ありがとうございました」
帰り際にそう言ってもらって、とても幸せな気分に。
そして2日間の戦いを終え、帰宅の途につく。




