2016/8/6(土)~閑話休題 秋葉原の一日~
【登場人物】
山中義昭…最古参で最年長(そして筆者のモデル)
~閑話休題 秋葉原の一日~
平野、木村、中田と別れた後に予約していたカプセルホテルに向かったのだが
恥ずかしながらカプセルホテルは未経験で、正直ワクワクしていた。
仕事で年に数回、ビジネスホテルに宿泊する機会があったが
ビジネスホテルには独特のワクワク感があったので、カプセルホテルにも期待していた。
コンビニでジャンクな食べ物とお酒を少し多めに買って行き
部屋に入ったら盗聴器や盗撮されていないか確認するスパイごっこ。
そして安全が確保できた後のパンイチで部屋をうろうろ。
別に自宅アパートでも出来るような事を時間と金と手間を掛けてやる意味は無いと思うが
その場の雰囲気というやつなのだろう。
しかし、そんな私の期待は良くも悪くも外れる。
受付をして鍵を受け取り、貸し出しの着物に着替えてエレベーターに乗る。
着いたところは四方を囲われた2段ベッドが並んでいる空間。
出入りする部分には扉が無いので、物音や会話は丸聞こえ。
セキュリティやプライバシーなんてあったもんじゃない。
『…とりあえず寝よう』
過ぎた事を悔やむよりも、まずは目の前の眠気と対峙するのが先だ。
高さ70cm、幅50cm、奥行き2mほどの空間に入り軽く設備を確認。
テレビとコンセント、充電アダプターとケーブル。
それに無料の水が置いてあった。
食料さえあれば籠城できる秘密基地感があり、少し気持ちの高ぶりがあったが
まずは睡眠と自分に言い聞かせる。
晩秋に現れるミノムシの様に包まり、今日あった人の事を思い出していると
自然と意識が遠のき、8時ごろ眠りについた。
ポリポリポリ…ポリポリポリ…
『うっせーなー』
私の安眠を遮る不快な咀嚼音。
どうやら隣の部屋?の人がせんべいを食べているようだ。
いらだちの感情を滲ませつつ、時計に目をやると12時過ぎ。
『そういえば何も食べてないから食事しよう』
その場にいてもストレスが溜まるだけと判断して外出を決断。
服を着替え、フロントに鍵を一時返却し外へ出る。
当たり前だが、夏場のお昼なのでとろけそうなくらい暑い。
『秋葉原を一周してお店に入ろう』
秋葉原には最近来るようになったので、どんなお店があるのかよく分からない。
どうせ食べるなら家の近くにあるチェーン店で無く、秋葉原にしかないお店がいいので
自分の足で見つける事に。
秋葉原駅の電気街から万世橋、神田明神、末広町、UDXと比喩表現なしに秋葉原をグルグル。
分かった事はカレー屋さんとラーメン屋さんが多いらしい。
ただ、私の心のブルを突き刺したのは
【キッ〇ン 〇ロー】
という洋食店であった。
時刻は14時ちょっと前。
『よし…行くか』
微妙に緊張しながらお店へ入るとかわいい店員さんがお出迎えしてくれて
席に案内してくれる。
見渡すと古くて狭いけど、丁寧に清掃されていて清潔感がある店内。
シェフはThe洋食店のイメージにぴったりな帽子をかぶったおじさん。
料理は大衆店の品ぞろえであるが、唐揚げ、ハンバーグ、スタミナ焼きなど
男心を擽るには十分であった。
『すみません、唐揚げとハンバーグセットのライス大盛りで』
イメージとしてはバーで女の人にカクテルを御馳走する感じで注文したけど
恐らくは…いや、自重しておこう。
シェフは注文を受けると、私の目の前で調理を開始する。
料理好きにはたまらない光景だ。
次々出来ていく私の注文は一種の魔法の様であった。
そして待つ事10分、注文の品が私の前に届く。
プレートに美味しそうに盛られたハンバーグと唐揚げとサラダ。
ちょうどいい炊き加減のごはんと大根と玉ねぎ入りの素朴な味噌汁。
『いただきます!』
唐揚げを噛んだ時に出る肉汁。
『うまい!うますぎる!』
迸る衝動を抑えきれずに、次々と胃の中へ放り込む。
本当ならシェフの方に美味しいって伝えたかったが
人気店なのかお客さんがいっぱいで厨房は多忙を極めている様子。
邪魔になるといけないので、パパっと食べてお会計を済ませて
『また絶対来よう』
そう誓ってお店をでる。
その後もう一度、秋葉原を大きく1週する。
気づいたのはメイドさんがめちゃくちゃ多い事。
あと女子高生のコスプレ?本物?をした女性に結構声を掛けられた。
とても魅力的ではあったが、美人局や捕まる可能性を考えると
自重という選択肢しか出てこなかった。
しかし機会があれば、、、(自主規制)
そうこうしているうちに気づけば16時。
『もうひと眠りしておかないと、深夜でキツイな』
当たり前すぎる事を考えつつカプセルホテルに戻り、鍵を受け取り服を着替えて布団に入る。
幸い、せんべいを食べてた人はいないようだ。
『今日はどんな出来事があるかな…』
そんな幸せな事を考えながら意識がなくなる。
それはこの後に起こるちょっとした悲劇の前兆だったのかも知れない。




