40話 1つの勝利
カナトは結局、ベルナンドを見つけることはできなかった。
「やめておけ……カナト。ベルナンドは全く本気を出していない。魔族四天王、獄炎のベルナンドの実力はこんなものではない。私達と本気で戦っていればカールストンの街も無になっていただろう」
「そうじゃな……わし等も本気で戦えなかったわい。ベルナンドは今回は様子見と挨拶で来たんじゃろう」
ジブリルとギオルギは冷静に今の戦いを分析する。
獄炎のベルナンド……さすが魔族四天王と呼ばれるだけの実力の持ち主。
今のカナトでは全く、ベルナンドと戦えるレベルにないということを痛感する。
ジブリルとギオルギを相手に余裕を見せていたベルナンド……その実力を認めるしかない。
「ナナの所へ戻ろう。きっと心配して待っているはずだよ」
4人の神々とカナトは空中を飛翔して、城壁の上でこちらを見ているナナの元へと向かう。
ナナは4人の神々とカナトを見て、笑顔になって大きく手を振っている。
城壁に着地するとナナが胸の中へと飛び込んできた。
「心配したのじゃ……無事で良かった」
「おいら達も頑張ったんだよ。カナトだけ心配されるなんて、ズルいな」
そう言って、クッカは満面に笑みを浮かべる。
ジブリル、ギオルギ、ターヤンも嬉しそうだ。
ギオルギはさっそく酒を飲んでいる。
ターヤンは嫌がるクッカを抱きしめて笑っている。
「我を含めて5人の神々が集まったのは久しぶりなのじゃ。これで神気のネットワークを張れるのじゃ。皆、円陣を組んで、手をつなぐのじゃ」
創造神ナナ、剣神ジブリル、鍛冶神ギオルギ、森の守護神ターヤン、ホビットの英雄クッカ、カナトの6人は円陣を組んで、手を握り合う。
すると、神々達の体が光始める。
カナトの体もうっすらと光輝く。
手を話しても、光が糸のように神々をつないでいる。
クッカは嬉しそうに光の糸を見て笑顔になる。
「これでおいら達の力はいつでもナナのところに集まるね。おいら達にも皆の情報が集まる。もっと多くの神々と一緒に合流できれば神界を復活することもできる。ナナ、そうでしょう?」
「クッカのいう通りなのじゃ。これは神界復活の足がかりとなるじゃろう。皆よ、これからも協力してほしいのじゃ」
ナナは神界が崩壊してから、これを考えていたのか。
これでナナの謎が解けた。
これからは神々を集める旅を続けることになるだろう。
「そういうことであれば、私も強力いたしましょう。剣神は創造神の剣です」
「わしもジブリルに賛成じゃ。わしも協力する」
ジブリルもギオルギの2人も真剣な顔でナナに約束する。
ターヤンは何も言わずに大きく首を縦に振って頷く。
ナナは城壁の上に登ると、両手を広げ、全身を輝かせる。
『カールストンに集う民達よ。そなた達は自分達の力で魔獣のスタンピードを退治した。ここには神々はいなかった。自分達の力で勝利を勝ち取ったのじゃ。神々のことは忘れ、大いに喜びあうがいい』
神威のこもった声でナナがカールストンの民へと話しかける。
すると私兵や冒険者達から歓声があがる。
そして、私兵や冒険者達は、互いに抱き合ったり、大声を張り上げたり、手を振り上げて勝利を喜んでいる。
「これで、お主達が戦った記憶は、民達から消えた。神々の存在は人々の心から消え去った。これで良いのじゃ」
「我々、神は神界から人々を見守るのが務め。人々の前に姿を現すのは理から外れているからな。ナナ様のしたことは正しい」
ナナは人々の記憶から神々の戦いの記憶を消した。
それをジブリルは正しいと説明する。
他の神々も深く頷いている。
神々が伝説の中でしか登場しないことに納得した。
常に記憶から消されていては神々を認識できない。
神々との合流を急がなければならない。
魔神マモンが復活している。
そして魔族が着々と力をつけてきている。
魔族四天王とはいずれ、カナトも決着をつけることになるだろう。
カナトにまだ、その力が不足していることを痛感する。
「おいら達は自分達の守護する場所へ戻るよ。リグル村へ戻る。ナナ……カナト……また会おうね」
「ターヤンも、森へ戻る。森を守護する」
クッカとターヤンはそう言い残すと、転移の魔法で自分達の守護する場所へと戻っていった。
「ではわしもダンジョンに戻って、酒を浴びるほど飲むかのう」
「私も神殿へ戻ろう。私の役目は終わった。ナナ様、失礼させていただく。カナト、また会おう」
ジブリルとギオルギも転移の魔法でそれぞれの場所へ戻っていった。
「我とカナトも宿へと戻ろう。この場所には、もう用はない。早く宿に帰って一休みしたいのじゃ」
確かにカナトも気づくと、かなり疲れている。
ベルナンドとの戦いで、疲弊していたようだ。
早く宿に帰って、一休みしよう。
神界を復活させるためには、3大神との対話が必要だ。
天界で暮らしている天神、海にいる海神、地上のどこかで暮らしている地神の3大神も説得する必要がある。
3大神を納得させるには、創造神のナナにそれだけの力が集中していないと無理だ。
他の神々の協力が必要だ。
他の神々が力を合わせて、創造神であるナナを中心に集合する必要がある。
神々を訪ねる前に、一休みする必要がある。
カナトはナナと手をつないで、城壁から地上へと歩いていく。
城壁を降りると、街の中では、人々が勝利に沸いていた。
ナナは人々の笑顔を見て、太陽のように顔をほころばせる。




