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39話 魔族ベルナンド

「神の『神威』とはすごいもんだな……たった5人集まっただけで、この威力か。マモン様を封印できたわけだ」



 真っ赤な髪に歪んだ角が2本伸びている。

瞳は真紅に染まっており、口からは4本の牙が見える。

肌の色は黒ずんだ紫色をしている。

魔族の特徴を色濃く現している痩身の男は、背中から被膜のような翼を生やして、空中に浮かんでいる。



「それに今の魔法は何だ? せっかく用意した魔獣共が一瞬で凍らされちまった。俺の苦労も考えろって言うんだ。あれだけの魔獣を追い立てるのは大変だったなぞ……クソ」



 両手剣を鞘から抜いて、『飛翔』と唱えて空中に舞い上がったカナトは、ボーンドラゴンと魔族に近づく。

魔族は両手を胸の前で組んだまま、余裕の笑みを見せて、空中でカナトを待っている。



「お前がスタンピードの仕掛人か。なぜカールストンの街を襲った? 俺達5人を相手に戦うつもりか?」


「お前こそ何者だ? お前からは神気の匂いはあまりしないな。お前みたいな不良品に話すことはない」



 魔族の男は獰猛な笑みを浮かべてカナトを挑発する。

半神半人のカナトは神光が少ない。魔族の男はそのことに気づいたらしい。

余裕の笑みを深めて、魔族の男はカナトを見下す。



「俺の名はカナトだ。カールストンの街を襲った、お前達を絶対に許さない。ここで倒させてもらう」


「ハハハハハ……魔族四天王の獣魔のベルナンド様を倒すだと、お前にその力はない。神気が足りないな」


「やってみないと実力なんてわからないだろう」



 カナトはベルナンドに近づいて大上段から両手剣を振り下ろす。

いつの間にかベルナンドの手の中には槍が握られており、槍で両手剣を受け流す。

そして素早く槍を引いて、カナトへ向かって槍を連突きする。

カナトは両手剣の平で体の正中線を守り、槍の連撃を防ぐ。

空中戦は長時間続く。

わずかながらベルナンドの槍捌きのほうがカナトの剣技よりも上回っている。

カナトが槍の猛追に押されて、体の軸をブレさせる。

ベルナンドの槍がカナトの胸に向かって突き出される。

その時、偶然に突風が吹き、カナトはバランスを崩して、空中から落下する。



「クソ……悪運の強い奴だ。でも、これでわかっただろう。お前は俺には勝てない」



 カナトは地上に落ちる前に体制を立て直して、空中を飛翔して、ベルナンドへ近づく。



「面倒臭い奴だな……邪竜ボーンドラゴン、お前が相手になってやれ」



 邪竜ボーンドラゴンはドラゴンの死体がグール化した魔獣だ。

全長10mあり、悪臭を放ちながら、カナトに迫る。



『魔素よ。焼き払え。フレア』



 カナトの左手から『フレア』が放たれる。

しかし、ボーンドラゴンは全く傷つくこともなく、溶けることもなく、空中で翼を広げる。

そしてカナトめがけて、瘴気のブレスを吐く。

『二重障壁』で防御しているとはいえ、瘴気のブレスは『二重障壁』をも浸食してくる。

カナトは瘴気のブレスを避けて、空中に舞い上がる。



「カナト、おいらにも戦わせてよ」


「ターヤンも戦う。ターヤンには瘴気のブレスは効かない」



 クッカが地上から、まるで空中に見えない階段でもあるように駆け走ってくる。

その顔はどこまでも明るく、戦うことが嬉しそうだ。

ターヤンもクッカの後を追いかけるように空中を駆けあがってくる。


 クッカとターヤンはボーンドラゴンへ飛びかかっていく。

ボーンドラゴンはクッカのアダマンタイトの短剣により傷ついていく。

そしてターヤンがボーンドラゴンの翼にとりついて、力任せに翼を引きちぎっていく。



《ドラゴンは魔法防御の障壁を体にまとっています。魔法で倒すのは困難です。悔しいですが、私達の出番はありません。カナト様の健闘を祈ります》



 魔素がドラゴン達には魔法が通用しないことを伝えてくる。

カナトは両手剣を握ってボーンドラゴンに向かって、ドラゴンの額に両手剣を突き刺す。

ボーンドラゴンの額に両手剣が突き刺さる。

しかし、ボーンドラゴンは瘴気のブレスを吐く。


 障壁を侵食されることを避け、カナトは上空に退避する。

クッカとターヤンは瘴気を浴びても、体が光輝き、瘴気を弾き飛ばす。

クッカとターヤンの体に流れる神光が瘴気を跳ね除けているのだろう。

神光の少ないカナトではできない防御方法だ。



「ボーンドラゴンは既に死んでいるから、体を傷つけても無駄だよ。狙うのは胸の中央の魔石だね」



 そういって、クッカがボーンドラゴンの骨の中へ小さな体を潜り込ませて、魔石を破壊する。

魔石を砕かれたボーンドラゴンは力尽きて、地上へと落ちていく。

地上にボーンドラゴンが落ちる前にクッカがボーンドラゴンの中から飛び出してきて、ターヤンがクッカを受け止める。


 視線を移すと、ベルナンドは剣神ジブリルと鍛冶神ギオルギに挟まれるようにして、2対1で戦っている。

ベルナンドの体には無数の傷跡が残っている。

さすがジブリルとギオルギだ。

 しかし、2人相手に戦っているベルナンドには、まだ余裕が見えるのが不気味だ。

そこへクッカ、ターヤン、カナトが合流する。



「クソ……さすが剣神ジブリルだぜ。簡単に倒させてくれねーか。鍛冶神ギオルギも厄介だ。英雄神クッカと森の守護神ターヤンまで相手となると、さすがの俺も分が悪いな……ここは逃げさせてもらう『転移』」



 ベルナンドは隙を見つけて『転移』の魔法で逃げ出した。

カナトは『透視遠見』の魔法で、ベルナンドがどこへ転移したのが探すが、姿を見つけることができなかった。

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