38話 神威
カナトはグリフォンの群れへと突貫する。
グリフォンの群れはくちばしを大きく開けて、火炎のブレスを吐いてくる。
それを紙一重で躱し、『二重障壁』で受け止め、カナトはグリフォンに襲いかかる。
両手剣がグリフォンの翼の付け根を、まるで紙でも切るように斬り裂いていく。
数百といたグリフォンの群れが、見る間に翼を失って地上に落下していく。
剣神ジブリルは瞬間移動と見間違うほどの速さで、魔獣達の間をすり抜けていく。
その瞬間には既に聖剣で一閃されて、魔獣達は体を両断される。
鍛冶神ギオルギは、大戦斧を回転させて、魔獣達を斬り飛ばして歩いていく。
「この街は倒させんよ。私の神殿があるのだからね」
「ジブリルよ……この戦が終わったら、久しぶりにわしの酒の相手をしろ」
2人の神は魔獣が襲いかかっているにも拘わらず、まるで歯牙にもかけていない。
軽い運動のように魔獣達を屠っていく。
しかし、圧倒的な魔獣の数に冒険者達の集団は段々と圧倒されていく。
魔法師達は魔力を使いきって、力を失う。
魔獣を斬った数だけ、剣の斬れ味は鈍り、体力も奪われていく。
隙を見せれば、あっという間に次の魔獣の餌食にされてしまう。
4人の神達の活躍は素晴らしいが、他の冒険者達は既に疲労の色は濃い。
私兵達はカナトが取り逃がした空の魔獣達を弓で攻撃し、バリスタで攻撃し、魔法で攻撃しているが、空の魔獣達は手強く、城壁に取り付かれて、乱戦となっている。
冒険者達も私兵達も必死で戦っているが、圧倒的な魔獣の物量に圧倒されていく。
ナナは城壁の上から魔獣達と冒険者達との戦いを見守る。
そして両手を広げて、全ての者達に語りかけるように大声をだす。
『我の声を聞け。我はカールストンに降臨せし、聖女なり。神の意志を聞け。神はこの戦を好まぬ。冒険者達は立ち上がり、奮起せよ。魔獣達は神の神威にひれ伏せよ。神威』
ナナの全身が光輝き、城壁の上に輝く聖光に現れる。神の神威が解放される。
剣神ジブリル、鍛冶神ギオルギ、森の守護神ターヤン、ホビットの英雄クッカの体も聖光に包まれる。
4人からも神威が解放される。
「「「「神威」」」」
魔獣達は攻撃と行進を止め、怯え慄く。
傷ついた冒険者達の傷はたちまちに癒えて、体力も気力も魔力の全回復する。
城壁の上の私兵達も全回復して、再び戦いを再開する。
神の『神威』が解放されている今、魔獣達は思うように動きが取れない。
またたく間に冒険者達が魔獣を蹂躙していく。
ナナの命を受けて、剣神ジブリル、鍛冶神ギオルギ、森の守護神ターヤン、ホビットの英雄クッカ、4人の神達の攻撃も苛烈さを増す。
「おいら、久しぶりに創造神の『神威』を聞いたな。すっごく嬉しいよ。ナナやいつも優しいから『神威』を使わないからね」
「ターヤン、ナナの『神威』を聞けて嬉しい。ターヤン、もっと頑張る」
ホビットの英雄クッカと森の守護神ターヤンの2人は元気に魔獣達の行進の最奥部へと突入していく。
そこには『神威』を聞けた喜びだけで、心に一点の曇りもない。
ナナの『神威』を聞いた途端、カナトの全身に力がみなぎる。
カナトはグリフォンの群れを撃破して、今はワイバーンの群れと交戦している。
ワイバーンは口から火炎のブレスを吐き、カナトを攻撃するが、『二重防壁』を崩すことはできない。
ワイバーンは硬いウロコと皮膚を持っているが、カナトの持っている両手剣の威力のほうが勝っている。
両手剣に斬り裂かれたワイバーンの群れは片翼を失って、地上へと落ちていく。
カナトは両手剣を鞘に戻して、両手を前に突き出す。
『ワイバーンよ逝け。太陽フレア』
カナトの両手から『太陽フレア』を放射する。
太陽が2つ輝いたように大空に太陽フレアの光が放たれる。
数百いたワイバーンが一瞬のうちに消滅する。
カナトは両手剣を鞘から抜いて地上へ降りる。
「冒険者達よ撤退せよ。我らの勝利は近い。深追いするな。撤退せよ」
カナトは大声で冒険者達に撤退を呼びかける。
その声を聞いた剣神ジブリル、鍛冶神ギオルギ、森の守護神ターヤン、ホビットの英雄クッカの4人も周りの冒険者達に撤退を告げて回る。
冒険者達は冒険者ギルドからの撤退命令だと勝手に信じ込み、城壁近くまで撤退してくる。
カナトは撤退してくる冒険者とは逆に、4人の神々の元へと走っていく。
クッカとターヤンもジブリルとギオルギの元まで戻ってきていた。
カナトは4人の神々と合流する。
冒険者達は1人残らず城壁周辺まで撤退している。
「カナト、何をする気なの? おいら、ちょっとワクワクしてきたな」
「ターヤンもクッカと同じ」
「カナトの実力を私も見てみたい。カナトよ力を解放してみせよ」
「わし等を巻き込むんじゃないぞ」
クッカ、ターヤン、ジブリル、ギオルギの4人はカナトの近くに陣取って口々に騒いで楽しんでいる。
カナトは4人から少し離れて、魔獣達と対峙する。
『魔獣達を凍らせよ。地上よ……絶対零度の凍土となれ』
カナトは地面に両手をつけて魔法を詠唱する。
するとカナトの前から地上が真っ白に凍り付いていく。
絶対零度の凍土だ。
魔獣達は白い凍土に触れると一瞬で凍り付いて、動かなくなり絶命していく。
一瞬のうちに、カナトの前に広がっていた魔獣達が白く染まり、風に粉々に体を砕かれて散っていく。
「なかなかやるではないか。さすが神々と言ったところか」
空を見上げると絶対零度からまぬがれた1匹のボーンドラゴンと1人の魔族がカナト達を見下ろしていた。




