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36話 転移魔法

 剣神ジブリルの真っ白な空間で、カナトとジブリルとの組手が続く。

魔神マモンのことを聞いてから、剣神ジブリルとの特訓は激しさを増している。

この真っ白な空間では時間が止まっている。

そのため、どれだけの時間を特訓しているのかカナトにはわからない。

既に特訓を始めてから1年以上の時間が経過していると思われる。

それでも剣神ジブリルの特訓は終わらない。



「魔神マモンは強い。神としての実力で言えば私をも超える。カナトはその魔神マモンに勝たねばならない。これだけ特訓しても、まだ足りないと言っておこう」



 特訓が終わった後に座り込んでいるとジブリルから厳しい現実を告げられる。

どれだけ魔神マモンというのは強いのだろう。

ジブリルの聖剣を折ったというのだから、相当の実力者であることは間違いない。

ジブリルは剣を鞘に入れて、カナトを見る。



「今回のスタンピードには魔神マモンは出て来ないだろう。こんな小さな街を潰すために魔神が出てくるとは思えない。魔神マモンも復活したばかりで、まだうまく動けないだろうからな」



 剣神ジブリルは自分の予想をカナトに告げる。

ナナはその言葉を聞いて、納得するように頷いている。



「我もジブリルと同じ意見じゃ」


「魔獣にスタンピードを起こさせるには後方から追い立てる必要がある。後方から追い立てている者が、相当に力を持っていることは間違いない。カナトよ……心してかかれよ」



 後方にいる者とは魔族なのか……それとは別に何者かがいるのか。


 カナトが剣神ジブリルとの特訓の日々を送っている頃、ヘルガとアーネがどういう手段を使ったのかは不明だが、カールストンの街の領主である伯爵を動かした。


 カールストン伯爵の私兵達が続々とカールストンの街に集まって城壁を警備している。

そして、冒険者ギルドには強制依頼が入り、カールストンの街の冒険者達はスタンピード討伐に参加することになった。

カールストンの街の中は大勢の私兵と冒険者が集まったことで、今まで以上の賑わいとなっている。


 ミディに言伝を頼み、ダンジョンの最下層にいる鍛冶神ギオルギにも連絡を取っている。

魔神マモンが折った聖剣というのは、鍛冶神ギオルギの渾身の力作だったらしい。

その聖剣を折られたことで、鍛冶神ギオルギと魔神マモンは対立しているという。

快く、鍛冶神ギオルギも力を貸してくれると伝言をもらっている。


 『トロールの胃袋亭』の自室へ戻ったカナトは、転移魔法について魔素に問いかける。



「魔素、転移魔法の方法を教えてくれ。教えてくれるんだろう」


《待っておりました。まずは『透視遠見』の魔法で、転移の着地地点を確かめます。これは着地地点の固定するためと、不慮の事故を防止するためです》



 転移の着地地点の座標を視覚で確かめて固定しておく必要があるわけだ。



《後は安全を確かめた上で、転移と唱えていただければ、我々が転移魔法を展開いたします》


「ただ、それだけか?」


《はい。注意するのは着地地点だけですので……魔素である我々だから簡単にできるのです》



 魔素が胸を張って、自慢気に言い放つ。

魔素は存在がないだけに、影が薄い。

それにカナトしか存在を理解してくれる相手がいないのだから、目立ちたいのだろう。

魔素は自信満々だが、カナトとしては実践していないので不安だ。

1度、転移を試してみる。


 カナトは『透視遠見』の魔法を使って、魔巣の森の中を見ていく。

魔巣の森の中を注意深く見て、小川の近くに空き地を見つける。

魔巣の森は密林なため、空き地が少ない。



『魔素よ。頼んだぞ。転移』



 カナトが唱え終わった時には、カールストンの街の自室から、魔巣の森の空き地へ転移していた。

一瞬の出来事だった。


 カナトは背中から両手剣を抜いて、魔獣を警戒しながら大声を出す。



「ターヤン……森の守り神ターヤン、俺だ……カナトだ……姿を見せてくれ」



 しばらくすると、カナトの頭上から腰に布だけを巻いた全裸の男性が落ちてきた。

そしてカナトめがけて拳を振るう。

それを両手剣の平で受け止めて、その男性を見るとターヤンだ。



「ターヤンを呼ぶ、お前は誰だ? ターヤン、お前のこと知らない」



 そういえば、ターヤンは忘れっぽいことを失念していた。

ターヤンはナナとクッカ以外のことのほとんどを忘れてしまう。



「俺だカナトだ。創造神ナナの友達だ。思い出してくれ」



 ターヤンは何も言わずに、カナトと戦いを続ける。

このままでは、いつまでも戦っているしかない。

カナトとしてはターヤンと話したいだけなのだが、ターヤンがカナトのことを忘れているから仕方がない。


 カナトはターヤンの右手を両手剣で斬り飛ばす。

右手がクルクルと回転して小川の近くに落ちる。



「ターヤンの腕を斬り飛ばしたのはカナトだ……おまえはカナトだ」


「やっと思い出してくれたか。そうだカナトだ」



 カナトは両手剣を背中の鞘に収めて、ターヤンの右手を拾い上げると、ターヤンに右手を渡す。

ターヤンは肩と右腕をつなぎ合わせる。

すると肩と右腕はつながり、傷跡ひとつ残っていない。



「ターヤン……創造神のナナが大変なんだ。ナナに力を貸してほしい。クッカもやってくる」


「ターヤンは創造神の味方。ナナの味方。それにクッカの味方。ターヤンはナナを助ける」


「助かる……一緒にカールストンの街まで来てくれ。そのに皆が集合している」


「わかった……ターヤンもカールストンへ行く」



 カナトはターヤンの腕をつかむと転移の魔法でカールストンの街の自室へ戻る。

 無事にターヤンもカナトと一緒に転移している。



「まずはターヤンに服を着せないといけないんだけど……どう説明すればいいかな」



 腰布1枚の全裸では街の中は歩けない。

カナトはナナを連れてきて、ナナにターヤンと話をしてもらって、服を着ることを理解してもらった。

ナナはターヤンが来てくれたことで、力が強まると言って喜んでいる。

これでクッカが到着すれば、こちらの準備は整う。

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