34話 不吉な報せ
ダンジョンで鍛冶神ギオルギに会ってから1週間が過ぎた。
この1週間は神殿で剣神ジブリルにしごかれる毎日を送っている。
剣神ジブリルはカナトの両手剣を気に入って、両手剣に見合うだけの腕をつけろと言って、特訓の日々が続いている。
カナト自身も早く両手剣に慣れたい意思もあり、自分が強くなっている喜びに目覚め、剣神ジブリルとの修行を苦にせず、毎日のように神殿に通っている。
いつも神殿での特訓は太陽が落ちて、誰も神殿に訪れなくなってから始まるので、朝はナナと一緒に遅くまで寝ていることが多い。
そして毎回、マルタに朝食を呼びにきてもらって、起き上がる毎日を送っている。
今日も階段を上ってくる足音がする、今日もマルタがカナト達を起こしにきたのだろう。
部屋の扉が開き、いつものようにマルタが呆れた顔をする。
部屋を2つ取って、ナナと別部屋にしているのだが、ナナは1人で寝ることができない。
その結果、毎日、カナトのベッドにもぐりこんできて、2人で1つのベッドを利用している。
マルタは何回もナナに、大人の男性のベッドにもぐりこんではいけないと諭しているのだが、ナナは言うことを聞かないで、カナトのベッドで今日も眠っている。
「カナト、ナナ、起きてくれる? 今日はあなた達にお客様が2人来ているの。黒い外套を羽織っていて、フードを被っていて、顔を見えないようにしている。不気味だから早く対処をお願いね」
カナトはそれを聞いて不思議に思う。
ナナとカナトを訪ねてくる客など思いもつかない。
思い当たるとすれば、リグル村の英雄神クッカと『疾風の刃』のパーティぐらいだが、彼らはリグル村にいるはずだ。
不思議に思いながらも防具と武具をつけて、フード付きの外套をはおって、カナトは準備をする。
ナナも自分の部屋へ戻り、神官風の服を着て、フード付きの外套をはおって、魔法の杖を用意する。
1階へ降りていくと、真っ黒なフード付きの外套を着ている2人が食堂に座っていた。
フードは目深に被られていて、2人の顔は見えない。
「俺とナナに用事とは、お前達のことか?」
「お前には用はない。私達は創造神様にお会いしに来たのだ」
小さな声でフードを被った1人がカナトに応える。
声の質から女性であることがわかる。
「下界では、その呼び方をするな。ナナと呼べ。他の者に不審に思われる」
「わかった注意しよう。これからはナナ様とお呼びする」
ナナとカナトはフードを目深にかぶった2人テーブルに腰かける。
「我に用とは何者じゃ……」
ナナの声を聞いた2人は姿勢を正して、深々と頭を下げる。
ナナが創造神であると知っていることから、ただの人ではなさそうだ。
「フードでお顔も見せずに、ナナ様にお目通りする無礼をお許しください」
「そんなことはどうでも良い。お主達は誰の使いなのじゃ」
「私達は誰の使いでもありません。ナナ様を信仰している者であると宣言いたします」
創造神には名がない。
よって創造神はこの世を創造しただけの存在として知られている。
だから創造神を信仰する神殿も宗教もない。
ただ、伝説の中で少しだけ語り継がれているだけだ。
フードを被った2人組の正体がわからず不信感だけが募っていく。
「神界が崩壊し……カルデナ世界を覆っていた神威が崩れました。その結果、冥界に封印されていた魔神マモンが復活いたしました。それと共に魔王、魔族達も目覚め、地上への進出を計画しています」
「そうか魔神マモンも目覚めたか……恐れていた事態が訪れたというわけじゃな」
「私達は魔神マモン様が封印されてから、魔王と魔族が冥界に封印されている間、人族の監視役として人族の中に紛れていた魔族でございます。私達2人は魔族ですが人族との友好関係を願っているのです」
魔神マモンの配下には魔王がおり、魔王の支配下には魔族四天王がいる。
そして多くの魔族達が四天王に従っているという。
しかし、この2人だけは創造神を頼って、ここまで来たというのだ。
魔族は人を騙すのが生業だ。
人を悪へ誘うのを生業としている。
この2人を信用していいのだろうか。
「地神ナディアは温厚な女神。かの神では魔神マモンと止めることができません。ナナ様のお力にすがりたいのです。もう私達2人には魔族の中に居場所がありません。決死の覚悟でここへ参りました」
これ以上のこみいった会話は食堂ではマズイ。
マルタ達もカナト達の会話に注目している。
ここから先の話は部屋でしたほうが良さそうだ。
「とにかく、話を聞こう。俺達の部屋まで来てくれ。ここでは気軽に話せない」
「お前に言われる筋合いはない」
「カナトの言う通りにするのじゃ。カナトは我の分身だと思え」
その言葉を聞いて、フードを被った2人はカナトに深々と礼をした。
ナナの言葉には忠誠を誓っているようだ。
目深にフードを被った2人を連れて、カナト達は自室へと連れていく。
部屋に入ると、黒の外套を着た2人は目深に被っていたフードを外した。
そこから現れたのは妖艶な2人の美女だった。




