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33話 ダンジョンからの帰還

「おーい出来たぞ」



 3日目になって鍛冶神ギオルギが鞘にいれた剣を、工房から持ってきた。

この3日間、鍛冶神ギオルギは工房にこもったまま出てくることはなかった。


 ミディは一般の獣人なので、お腹も空く。

勝手にギオルギのキッチンを使って、ダンジョンで取れた魔獣を解体して、カナト達3人は食事をしている最中だった。



「何やら、香ばしい匂いがするのう。わしにも食べさせてくれ。これから酒を飲むところだ。鍛冶をした後の酒が一番美味いからな」



 そう言って、キッチンに置かれた大きなヒョウタンのような徳利を持って、ギオルギは一気に酒をあおる。



「鞘も特性だからのう。その鞘を大事にしろ。その鞘は特別性で、空気中の魔素を取り込んでくれるんじゃ」


「そうなのか……特別性の鞘まで作ってくれてありがとう」



 カナトは鞘を受け取ると、鞘は背中に吊り下げるタイプになっていた。

そして両手剣は背中の鞘から抜くようになっている。

さっそく鞘から剣を抜きだすと、剣は予想していたよりも、はるかに軽かった。

剣は鈍い色の中に虹色が混じっていて、とても不思議な色合いをしている。



「その剣はアダマンタイトとミスリルと神界にあるオリハルコンを混ぜた合金じゃ。魔法を付与しても、絶対に砕けることもなければ、捻じれることもない。斬れ味も抜群じゃ。良い剣に仕上がった」



 そう言って、ギオルギは魔獣の肉にかぶりつく。

そして目を丸くして驚く。



「魔獣がこんなに美味いとは知らなかった。これからは剣の試し斬りをして、魔獣を狩ろう。そして調理をすれば、酒のつまみができる」


「その味付けはミディがしてくれたんだ。ギオルギでは同じ味は出せないよ」


「おお、そうか、ミディよ。これからは酒のつまみを作るため、ここまで来てくれ」



 意外なギオルギの申し出にミディは体を小さくする。

ミディは獣人であって、力のない案内役だ。

ミディ1人で最下層までくるのは難しい。

そのことを、カナトは丁寧にギオルギに説明する。


 するとギオルギは自分の首に下げていた、光り輝く魔石のネックレスをミディに渡す。



「それは元々、このダンジョンの主であったドラゴンの魔石から作っておる。その魔石を持っていれば、魔獣は恐れて近寄ってこん。だから安心して、ここまで酒のつまみを作りにくるのじゃ。褒美もわたす」


「そんな高価な品をもらっていいのでしょうか。竜の魔石なんて希少価値ですよ」


「美味い酒のつまみには代えられん。魔獣はわしが確保しておく」



 ミディは驚きながらも、首を大きく縦に振って頷いた。

ナナとカナトは席を立って、部屋の出入り口へ向かう。



「ありがとう鍛冶神ギオルギ。また遊びにくる。その時は剣を見てくれ」


「その剣は特殊じゃから刃こぼれ一つせんぞ。それでも良かったら、いつでも剣を見せに来い」


「ギオルギ……ありがとうなのじゃ。それではまたな」


「創造神もお元気で……また、わしの助けが必要ならば、いつでも呼んでくだされ」



 最下層にあるギオルギの工房を出て、カナト達はダンジョンへと戻る。

もうダンジョンの魔獣を無理に倒す必要もない。

ミディの案内で、最短距離を通ってダンジョンの1階を目指す。


 途中でトロール、オーガ、ミノタウロスなどに遭遇したが、カナトの両手剣で一刀両断にする。

強靭なミノタウロスの筋肉まで、まるで紙でも斬るように軽く断ち斬る。


 ダンジョン1階へ戻ると、ナナとカナトは、今回の出来事を絶対に口外しないようにミディに口止めする。

もし、口外されて、誰かが信じても厄介だからだ。

するとミディは不満な顔で反論する。



「誰もこんなこと信じてくれないわよ。誰もダンジョンの最下層まで辿り着いた冒険者はいないのよ。案内人の私が言っても誰も信じないし、笑われるだけだから、絶対に誰にも言わないわ」



 確かに人々の中では神々は神話や伝説の中にいるものだ。

実在すると言ったら、笑われるだけだろう。

ミディとダンジョンの前で別れて、カナト達は冒険者ギルドへ向かう。

冒険者ギルドへ戻るとサラが嬉しそうに駆け寄ってきた。



「あれから4日間、音信普通だったので、心配していのよ。今までどこに行ってたの?」


「実はダンジョンの地下5階層まで行って狩りをしていた。狩ってきた獲物を出したいから、冒険者ギルドの倉庫を貸してもらえないか」



 サラは後ろについて来るようにだけ言って、冒険者ギルドの裏手にある倉庫まで連れてきてくれた。

リグル村にある倉庫よりも大きい。中へ入ると、解体している職人達が一斉にカナト達を見る。



「ここで獲物を出してちょうだい。でもリュックの中はペタンコに見えるけど」



 ナナが背負っているリュックを見て、ソニアは不思議そうな顔をする。

カナトはナナからリュックを受け取ると、『サイクロプスだけ残して、全ての魔獣を放出』と口の中だけで唱える。

さすがに地下6階層の階層主であるサイクロプスの死体を出すのはマズイ。

なるべく冒険者ギルドでは目立ちたくない。

リュックからダンジョンで狩った魔獣の死体が幾重にも重なって、倉庫の中へ飛び出してきた。

一瞬の間に倉庫の中は魔獣の死体だらけになる。

解体作業をしていた職人達もサラも呆然として、その光景を見守っている。



「そのリュックってアイテムボックスだったのね。リュックのアイテムボックスなんて初めて見たわ」



 サラはそう言って驚く。

職人達はオーガ、トロール、ミノタウロスの死体の量に驚いている。



「今日中の解体は無理ね。交換は後日でいいかしら」


「ああ……それでいい。よろしく頼む」



 そう言ってカナトは頭を下げて、ナナと2人で冒険者ギルドを後にした。

大通を歩いて『トロールの胃袋亭』と向かう。

今日はエール酒を飲んで、ゆっくりとベッドで眠れると思うと、カナトの顔は自然と緩んだ。

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