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32話 鍛冶神ギオルギ

 地下7階層へ降りていくと、真っ暗闇の中に大きな工房が作られているのが見える。

その工房からは魔石灯の明かりが漏れ出している。


 普通の人間の屋敷より玄関も大きく、高さ5mはありそうな重厚な扉だ。

カナトが力いっぱいに押しても玄関に隙間をつくるしかできない。

その隙間から工房の中へ入ると、そこは部屋になっていた。


 見たこともない素晴らしい調度品が並べられている。

これも全て鍛冶神ギオルギが作ったものなのだろうか。

地上に持ち出した時の価値は計り知れない。



「鍛冶神ギオルギ……我じゃ……創造神じゃ……出て参れ」



 大きい声が、奥の鍛冶工房から聞こえる。



「創造神……あれはどこかへ吹き飛ばされた……俺に嘘をつくな。今……俺は忙しい」


「こら鍛冶神ギオルギ……我を無視するでない……ギオルギの神界での失敗をばらすぞ」


「うるさい奴じゃな……地下6階層にいるキョロちゃんはどうした? なぜ7階層に人を入れた」



 キョロちゃんというのはサイクロプスのあだ名だろうか。

それにしてもキョロちゃんとは可愛いあだ名だ。

鍛冶神ギオルギのペットだったのだろうか。



「サイクロプスは俺が倒した……もうキョロちゃんはいないぞ」


「何! 特大のサイクロプスだぞ! キョロちゃんは俺の家族だったのだぞ」



 そういって、工房から姿を現したのは慎重3m、横幅3mありそうなドワーフの神だった。

そしてギオルギは俺とナナとジッと見る。



「なんと……本当に創造神ではないか……久しぶりよな。お主が放逐されてから神界が崩壊してしまい、このダンジョンの工房で鍛冶をしていたのだ。この場所は鍛冶をするには良い場所なのだ」


「うむ……そなたが鍛冶バカなのは知っておる。神界でも剣を作っていたぐらいだからのう」


「ワハハハハ、わしは鍛冶神だからのう」



 鍛冶神ギオルドは陽気なドワーフの神だった。



「それよりキョロを打ち取ったのは、そこにいる若造か……創造神よ、何者なのだ?」


「この者はカナト……我の守護神じゃ。我を守るためだけの神じゃ……半神半人じゃがのう」



 ギオルドは興味を示して、体をくの字に曲げて、カナトに顔を近づけて興味深く観察する。

その息はとても酒臭い。ドワーフの神だけに酒好きなのだろう。



「ギオルドの会いにきたのは、我の味方になってほしいからじゃ……我には味方が少ない……ほとんどが3大神の配下になっておるじゃろう」


「俺は天神も地神も海神も好かん……わしは自由がすきだ。今まで自由に鍛冶ができたのも創造神のおかげじゃ。だから味方になろう」



 その言葉を聞いて、ナナは心から安堵して胸をなでおろす。

ミディは見ている光景が信じられないのか、床にへたり込んで、鍛冶神に土下座をしている。

カナトはリュックからサイクロプスの頭を取り出して、鍛冶神に見せる。



「俺がサイクロプスを倒した。それは本当だ。しかし、納得のいく戦いではなかった。それは俺には剣がないからだ。鍛冶神ギオルギに頼みたい。俺の剣を打ってくれ」


「確かにわしの可愛がっているサイクロプスのキョロの頭じゃな。どうやって斬り落としたのじゃ」


「これを使った」



 カナトはヒート剣をギオルギに見せる。

ギオルギは『ヒート剣』を見て鼻を鳴らした。



「なるほど、剣先は魔法じゃな。魔法を熱線にして剣にしたのか。考えたものじゃ。しかし、それでは剣でサイクロプスを打ち取ったとは言えぬな」


「だから頼みたい」


「わかった。カナトのためにわしが剣を打ってやろう。カナトも手伝え。今から工房へ行くぞ」



 そう言って、鍛冶神ギオルギは工房へノシノシと歩いていく。

カナトはその後ろへ付いていく。

ナナは土下座したまま動かなくなっているミディに肩を貸して、一緒に工房まで連れて行く。


 工房はとても広く、炉の中からはマグマのような炎を見える。

炉の前にどかりと座って、ギオルギは赤い鉱石をトングに挟み、炉の中へ投じる。

炉の横には小川が流れていて、地下水のようだ。

カナトは特大の槌をギオルギから渡される。



「お主の剣じゃ……カナトも自分の思いを乗せて、自分の剣に思いを伝えるのじゃ」



 炉の中にトングを入れて、先ほどの赤い功績を台座の上に乗せて、ギオルギが槌を振るう。

ギオルギの後にカナトも槌を振るって鉱石を打つ。


 自分の思い……絶対に壊れない剣……なんでも斬り裂ける剣……扱いが楽な剣。

カナトはその他にも自分の思い描く剣をイメージしながら槌を振るう。


 ゴオルギは別の鉱石も炉の中に入れて溶かして、赤い鉱石と混ぜるようにして槌を振るう。

そして炉の中に虹色に光る鉱石をマグマのような炎に入れる。


 虹色に輝く鉱石も、カナトとギオルギが合成している鉱石に混ぜるようにして、槌で打っていく。

カナトは鍛冶は素人だ。

ただ、ギオルギに言われた通りに自分の思いだけに集中して槌で鉱石の混合物を打つ。


 段々と金剛石の型が変化し始め、剣の型へと変化を始める。

もう何時間も槌で打っているが、ギオルギは無言で真剣な眼差しで槌を打ち続けている。


 カナトとギオルギの後ろでは、疲れ切ったミディはナナと2人で床に横になって眠っている。


 カナトもギオルギも無言で混合石を槌で打ち続ける。すると混合石が光り輝きはじめた。

そして一気に剣へと形を変えていく。


 ギオルギがトングを使って、地下水へ一気に混合石の剣を沈める。

地下水がジュッと蒸発する。

そして、一気に冷えた剣を見て、真剣な顔で吟味して、また剣を炉の中へ入れる。



「これから仕上げに入る。自分の思いを込めろ。そして槌に伝えろ。カナトが思い描くように剣が生まれる」



 炉から剣を取り出して、ギオルギは額から、体から汗を吹き出させて、最後の槌を振るい続ける。

魔法を付与できる剣……ナナを守れる剣……皆を守れる剣。

カナトは思いつくだけの思いを槌に乗せて、剣に槌を振るう。



「出来上がりじゃ……カナトよ……よく頑張った……良い剣に出来上がった。わしも満足じゃ」



 それを聞いた途端、カナトの体から力が抜ける。

本当は体力はとっくに尽きていた。

気力だけで槌を振るっていたのだ。


 出来上がった剣は鈍い光の中に、少し虹色を含んだ両手剣だった。

長さも130cmほどあり、幅広でとても大きな両手剣だ。


 鞘と柄の部分を作るのに、時間がかかるとギオルギは言う。

その間、カナト達は工房の隣の部屋で3日ほど暮らして、剣ができあがるのを待つこととなった。

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