31話 サイクロプス
サイクロプスが旋風のごとく、こん棒を振り回す。
こん棒にヒート剣を当てても、こん棒はヒート剣の当たっているところだけ赤くそまるだけで断ち切れない。
しかたなく、サイクロプスのこん棒をヒート剣で受け流す。
サイクロプスは巨体のわりに動きが俊敏で、片方の手でカナトをわしづかみにしようとする。
カナトはこん棒と片手とを回避して、サイクロプスの懐に入るタイミングを狙う。
体長10mを超えるサイクロプスの胴は、カナトがジャンプしても届かない。
狙うのはやはり足の膝裏が有効だろうと狙いを定める。
カナトはサイクロプスの攻撃をすり抜けて、股下へもぐりこんで、ヒート剣で右膝の裏を一閃して、膝の健を断ち切ろうとするが、サイクロプスの筋肉が固く、皮膚と少しの筋肉しか断ち斬れない。
それでも痛かったらしく、サイクロプスの右膝が崩れ、体制が崩れる。
それでもサイクロプスはこん棒を振るい、カナトを狙ってくる。カナトはヒート剣でこん棒を受け流そうとするが、
こん棒の威力は大きく、大きく体を吹き飛ばされる。
ダンジョンの壁にぶつかる瞬間に体を回転させて、足から着地し、膝を屈伸して、ショックを吸収する。
「なかなか、しぶとい奴だな」
「サイクロプスと渡り合っているカナトのほうが異常です」
今回の戦いでは、魔法に頼らないつもりだったが、さすがに無理がありそうだ。
『魔素よ。サイクロプスを氷結しろ』
《私達の出番ですね。お任せあれ》
サイクロプスの足から徐々に体が凍結されていく。サイクロプスは自慢の力で、氷結していく足の周りを蹴りとばして、氷を割っていく。
しかし、徐々に動きが鈍くなり、『氷結』の魔法が有効のようだ。
カナトは動きが鈍くなったサイクロプスへ向かって駆け走る。そして膝の上にジャンプして、飛び乗って、もう一度ジャンプして、サイクロプスのこん棒を握っている右手をヒート剣で狙う。
ヒート剣はサイクロプスの右手首を半分まで断ち斬って健を斬る。
こん棒がドシンという音と共に、地上に落ちて転がる。これで1つの脅威がなくなった。
サイクロプスは左手を振り回して、空中へ逃げるカナトを殴る。ヒート剣で受け止めるが、勢いが止まらず、ダンジョンの壁まで飛ばされる。
『氷結』魔法が効いているので、サイクロプスの体の動きは鈍いが、それでも、カナトの前進にかなりの衝撃を受けて、ダンジョンの壁から落ちて、床に倒れこむ。
たぶん全身の骨が砕け、内臓もやられているような気がする。
「これぐらいの戦いで何をしている。カナトは我を守るのじゃろう。もっと強くなるのじゃ……『ヒール』」
ナナが『ヒール』をかけてくれた。カナトの体が全回復する。
『氷結』の魔法が徐々にサイクロプスの体を蝕み、今では下半身が動かなくなっている。そして上半身にまで魔法の効果が及んできている。
カナトはサイクロプスに果敢にアタックして、サイクロプスの右腕をヒート剣で切断する。
ドスンという音とともに右手が地面に落ちる。
サイクロプスの右手の傷口から、紫色の血が勢いよく噴き出す。
サイクロプスは残った左手で、カナトをつかもうとするが、カナトは上手くサイクロプスの右側に回って、それを回避する。
カナトは残っている左手の肩をヒート剣で斬り裂く。肩の傷口から紫色の血が噴き出して、カナトの全身を紫色に染める。
それでも、諦めずに何度もヒート剣で斬り裂いて、サイクロプスの左腕も肩口から切り落とす。
地上にドスンという音が響き渡る。
これでサイクロプスへ両腕ともに肩口から失われた。後はサイクロプスの首を斬り飛ばすだけだ。
サイクロプスの体は『氷結』 魔法によって動かない。
「これで終わりだ」
カナトは全神経をヒート剣に集中させて、横なぎに一閃する。
しかし太いサイクロプスの首は筋肉が切れるだけで、半分も断ち切れない。
しかしサイクロプスはダルマ状態だ。何も焦る必要はない。
何度もヒート剣を一閃させて、サイクロプスの首を斬り飛ばす。
サイクロプスの体は『氷結』魔法によって立ったまま、首が地上にドスンと落ちた。
紫色の血がシャワーのように噴き出る。
『氷結』魔法を解くと、体が崩れて仰向けに倒れていく。
カナトはサイクロプスの胸の上に飛び乗る。
そしてヒート剣を胸に突き刺して、胸を斬り裂いて魔石を取り出す。
魔石は非常に大きく50cmを超えた球形をしている。
今まで、これほど大きな魔石を見たことがない。
「やったぞ……ナナ……なんとか勝ったぞ」
「それでこそカナトなのじゃ」
「嘘です……今まで地下6階層の階層主を倒した人はいません……それを、たった1人で倒すなんて……あり得ない……すごすぎる」
ミディは未だに、目の前で起こった現実を受け入れられないようだ。
今まで、地下6階は未到達階層だったのだから仕方がない。
「これで、ミディにもきちんと支払いができるな」
ナナに生活魔法で身ぎれいにしてもらったカナトは、革ホルダーに手を入れて金貨7枚をミディに渡した」
「契約の金額よりも多いと思うんですけど、どうしてですか?」
「できれば俺がサイクロプスを倒したことを内密にしてもらいたい。そのための口止め料だ」
「誰に話しても信じませんよ。地下6階の階層主が、1人の冒険者に負けたなんて誰も信じませんから、誰にもいいません。良いものを見せてもらいました」
ミディは本当は帰りたそうだが、好奇心のほうが勝っているようだ。
最後までついて来るという。
別にカナト達も断る理由はない。
後は最下層の地下階層7階だけだ。
カナト達は大通りを歩いて、地下7階層へ向かう。
地下7階層では鍛冶神ギオルギがいるはずだ。
ナナは嬉しそうに、カナトの手をつないで地下7階層へ通じる道を歩いていく。




