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3話 初めての戦い

 草原を草がガサガサと動く。

ゴブリン達の気配はあるが、草の丈が長いので姿が見えない。


 カナトは仕方なく、渋々と腰から剣を抜いて中段に構える。

今まで剣など持ったことがない。

剣の重さで、体の重心が崩れそうになるのを、ぐっと我慢する。

周りを警戒しながら、剣をグッと握りなおして、体制を立て直す。


 ヒュンという音が鳴ったと同時に、草原の中から石斧がカナトの向かって投てきされた。

石斧は回転しながらカナトに迫ってくる。

一瞬、早く石斧に気づいて、体をひねって石斧を避ける。

体制を崩しているカナトに1匹のゴブリンが石斧を上段に振り上げて突進してきた。

もうダメだと思った瞬間、ゴブリンの足に草原の草が絡みついて、ゴブリンはカナトの手前で盛大に転倒する。



「ラッキー!」



 カナトは剣を逆手に持ち替えて、両手でゴブリンの背中に剣を突き立てる。

皮膚が破れる感触、筋肉が断ち切れる感触、内臓を剣が突き破る感触がカナトの手に伝わる。



「うわ……気色悪」



 ゴブリンの皮膚は浅黒く、耳は尖っていて、口から2本の牙が見える。

瞳の色は黄色をしており、縦長の瞳が気持ちが悪い。

体形はまるで餓鬼のようで、全身は貧弱で腹だけが出ている。

腰には毛皮が1枚巻かれているだけだ。

剣を抜くと青色の血が傷口から噴き出す。



「ガサガサガサ」



 カナトの周りの草原の草が一斉に鳴り響く。

カナトは無我夢中で剣を横なぎに一閃しながら、体を回転させる。

ゴブリンの1体がカナトの放った横なぎの一閃により、体を上下に分断された。

ゴブリンの骨を断ち切った感触がカナトの手に伝わる。



「ギャ――」


「ヒー……キモイ」



 思わず、手から伝わる感触で剣を離してしまいそうになる。

しかし、必死で感触の気持ち悪さに耐える。



《カナト様、創造神様がゴブリンに狙われています。結界で守っていますが、急いでゴブリンを退治してください》


「お前達って結界も晴れるんだろう。ゴブリンぐらいは倒せるだろう?」


《はい。それは可能です。しかしカナト様の修行になりません。カナト様は守護神です。戦ってください》



 魔素は結界を張るだけで、ゴブリンを退治するつもりはなさそうだ。

少し離れたところにナナが立って、両手を胸に当てて怯えている。

ナナの周りには結界が張られている。

ゴブリンは石斧で結界を破ろうと、必死に石斧を叩きつけている。



「くそ……俺は犬や猫も殺したことねーんだぞ」


《文句を言わずにさっさと戦ってください》



 怯えているナナを放っておくこともできない。

カナトは足早にナナの元へ走っていき、ゴブリンに向けて剣を突き出す。

カナトに気づいたゴブリンが石斧を投げる。

石斧はカナトの顔の右へ突き刺さる。

カナトの剣がゴブリンの胸元を突き通す。


 顔の右側を石斧で割られたカナトは、そのまま倒れこんだ。

カナトはゆっくりと体を回転させて、青空を眺めて思う。

異世界転移までしたのに、石斧で顔を割られて終わりとは情けないな。



「カナトを死なせはしないのじゃ」



ナナの声がカナトのぼやけた意識に響く。



「我に任せよ」



 ナナが近寄ってきて、カナトの顔に突き刺さっている石斧を取り去る。

顔面から光輝く赤い血が噴き出す。

なぜ……血が光輝いているんだ? そんなことはどうでもいいか……これは助からないな。



「カナトには、まだまだ働いてもらわねばならぬ……『ヒール』」



 ナナが『ヒール』と唱えると、たちまちの内に顔の傷がふさがっていく。

気づけば、顔の傷は消え、傷跡も残っていない。



「……俺は助かったのか?」


「我が『ヒール』の魔法をかけたのじゃ。恩に着るが良い」



 カナトはゆっくりと立ち上がって、顔の傷のあたりを手で触って、傷跡がないことを確かめる。

そんなカナトの様子をナナは不満気な様子で眺めている。



「やはりカナトの神格化は失敗に終わっていたか……残念じゃ」


「どういうことだ?」


「神は光でできておる……神が傷つけば、傷口からは神気の光がこぼれるはずじゃ」


「俺の傷からは光る血が噴き出したな」


「神気を帯びた人の血じゃ……カナトは半神半人ということじゃな」


「……半神半人」



 別に神になるつもりはなかった。

人間であり続けられるのであれば、それで文句はない。



「半神半人のカナトの傷を『ヒール』で治せるのは我だけじゃ……人間では無理じゃ……そう心得よ」



 この世界はカナトのいた世界とは違う。

異世界であるカルデナ世界だ。

魔素が存在するのだから魔法があっても不思議ではない。

創造神のナナが魔法を使えるのも納得がいく。

ただ、半神半人であるカナトの体を治せるのがナナだけというのが厄介だ。

カナトが生きていく間、ナナを守るしか手段はなくなった。



「カナトよ。おぬしが魔法を使えるとは思わなかったぞ。結界で我を守ってくれるとは、なかなかやるではないか」


「それは俺がやったことじゃない。魔素が勝手にやったことだ」


「カナト……魔素と話ができるのか?」


「ああ……普通に話をしているけど? 何か問題でもあるのか?」



 神なのだから魔素と話ができて当たり前なのだろうとカナトは思っていた。

しかし、ナナの反応は目を見開いて驚いている。

何かを勘違いしていたようだ。



「今まで神の中で魔素と心を通じ合った者はおらぬ……カナトが初めてじゃ……それがお主の権能を決めるであろう」


「そうなのか? あまりピンとこないけど……ナナがそういうなら、そうなんだろうな」


《やっと、自覚してくれましたか。私とカナト様とは特別な関係なのです》

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