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29話 地下3階層

 地下3階層は地下2階層と同じような洞窟エリアだが、天井も高く、通りの面積も広い。

全体的に隠れる場所が少なく、大型魔獣の群れにも発見されやすい構造になっている。


 最初に現れたのは紫色の皮膚をしたトロール1匹だ。

トロールは咆哮をあげてカナト達へこん棒を振るう。

魔素がナナとミディに障壁結界を張って、こん棒から身を守る。

カナトはこん棒を躱して、トロールの懐に入ると、右膝へ剣を突き刺す。

剣はトロールの皮膚を破り、筋肉を斬り裂く。

そのまま、トロールの背中へ回り込み、膝裏へ剣を突きいれる。

膝の腱が斬れて、トロールは右足が崩れて、右手を地面へつける。

すかさず、左足の膝裏を横なぎに一閃する。

鋭い剣筋が膝裏の腱を斬り裂いて、今度は左膝が崩れて、トロールは四つん這いになる。


 体長5mあったトロールの身長も四つん這いになったことで、カナトの剣が届く位置にトロールの首が降りてきた。

裂ぱくの気合と共に大上段から、トロールの首へ剣を振り下ろす。

剣はトロールの首を深く斬り裂き、斬り裂いた部分から紫色の血がシャワーのように降り注いで、カナトを濡らす。

トロールの首は太く、1回の剣げきでは首を斬り落とせなかったが、首の半分以上を斬られて、トロールは絶命する。



「ウヘ……頭から血を浴びた……気持ち悪い」


「今、きれいにしてやるのじゃ」



 トロールの血を浴びたカナトをナナが生活魔法を使ってきれいにする。

カナトはシャワーを浴びたように、全身がきれいになった。



「1人でトロールを倒すなんて……カナトはB級冒険者だったのですね」



 ミディが嬉しそうに駆け寄ってくる。

その顔には先ほどまでの不安そうな表情はなかった。



「いや……おれはDランク冒険者だけど……冒険者登録するのが遅かったからね」



 そう言って、カナトはリュックの中へとトロールの死体を収納する。



「ダンジョンへ入ってから、ずっと不思議に思っていましたけど、そのリュックって噂に聞くアイテムボックスなんですね。とても高価な品だと聞いたことがあります。使っている人を見るのは初めてです」



 ダンジョンの地下階層1階から今まで、カナトは普通にリュックを降ろして、倒した魔獣をリュックの中へ収納していた。

あまりにも平然としてた行動だったので、ミディは不思議に思いながらも、今まで聞けずにいたのだ。

カナトはリュックを見て、隣に立っているナナにリュックを背負わせる。



「なぜ、我がリュックを背負うのじゃ? 今まではカナトが背負っていたではないか」


「これからの敵は難敵ばかりだと思う。魔獣に背中を攻撃された時にリュックを引き裂かれたら、中の荷物が全て出てしまう……ナナがリュックを大切に背負っておいてくれ。ナナには障壁結界を張ってあるから安心なんだ」


「わかった……カナトよ、あまり無理はするなよ」



 トロールと戦ってわかったことだが、カナトはかなり強くなっている。以前のカナトならトロールの皮膚を破くだけで、筋肉を斬り裂くことはできなかっただろう。

剣神ジブリルの指導のおかげで剣筋が鋭くなり、トロールの筋肉も断ち斬れる。



「ミディにも障壁結界の魔法をかけておくから、危なくなっても逃げるなよ。結界がミディを助けてくれる」


「わかりました。なるべくナナと一緒にいます。カナトが倒されたら、ナナを連れて逃げますから」


「その判断はナナに任せる」



 次にオーガの群れ3匹に発見された。

オーガ2匹がカナトに向かって襲いかかってくる。

残りの1匹はナナ達を襲う。

しかし、障壁結界によってオーガの攻撃はナナ達に通じない。



「これでもくらうのじゃ……『フレア』」



 ナナの手から火炎を超えた高熱の炎が放出される。

ナナ達を襲っていたオーガは一瞬で黒い塵となった。


 カナトは2匹のオーガと対峙する。

2匹のオーガは体長3mを超え、天然の斧を持っている。

目の色は真紅に染まり、口からは大きな牙が上に向いて生えている。

耳は尖っており、体は筋肉隆々で無駄な脂肪がない。

足は大きく、手足に鋭い爪を持っている。


 カナトは身体強化だけでは足りないと察知して、魔素に命じて自分にも障壁結界を張っている。

2匹のオーガの攻撃は障壁結界に阻まれて、カナトに届かない。

カナトはオーガの斧を剣で受け流して、懐へ入って、横なぎに剣を一閃する。

1匹のオーガの体が上下に2つに分かれる。上半身がズレ落ち、残った下半身から血が噴水のように飛び散る。

残りの1匹は斧を持つ手を斬り飛ばして、袈裟斬りに一閃して体を斜めに斬る。

強靭なオーガの筋肉も、カナトの鋭い剣筋によって斬り落とされる。



「ウヘ……また頭から血を浴びた……気持ち悪い」


「毎回、うるさい男じゃのう。血ぐらいで弱るな」


「仕方ないだろう……血が嫌いなんだからさ」



 またナナが生活魔法でカナトの体をきれいにしてくれる。

口では文句を言っているナナも、カナトが血だらけなのが嫌なようで、率先して生活魔法をかけてくれる。

ミディが意外そうな顔でナナを見ている。



「ナナは服装から回復師だと思っていました。あんな上級魔法もつかえるのですね」


「あれは上級魔法じゃったのか? 我は初級魔法と思っていた。我は名しか知らなかった」


「どうして自分で気づかないんだよ?」


「我には詠唱は必要ないのじゃ。名を唱えるだけで魔法が現る。よって初級も上級も実はわからないのじゃ」



 名前を唱えるだけで、どんな魔法でも使えるということは、もし上級魔法や最上級魔法の名前を知っていればナナは使えるということか……賢者級の魔術師じゃないか……弱いと思っているのはナナだけかもしれない。



「これからも我はあまりカナトに力は貸さぬぞ。カナトの修行に役立たないからな」


「ダンジョン地下3階層の魔獣を倒して……修行……こんな冒険者見たことない」



 忘れていたが、カナトとナナの会話を聞いていたミディは目を丸くして、口を両手で覆って驚いている。

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