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28話 ダンジョンへ

 ダンジョンの手前には冒険者ギルドが張り巡らした石壁があり、警備兵が4人立っている。

その手前の広場では、パーティを組みたい冒険者達が、それぞれに声をかけあっていた。

ナナとカナトもダンジョンへ入るのは初めてだ。

できればベテランの案内人を雇っておきたい。


 広場で案内人を探そうと歩いていると、1人の兎族の少女が冒険者に蹴り飛ばされてカナトの元へ転がってくる。

兎族の少女は立ち上がるとカナトの背中に回り込んで隠れる。



「なぜ、この少女に手荒な真似をするんだ?」



 暴力をふるった冒険者は厳つい顔を険しくして、カナトを睨む。



「この案内人は、この間、俺達が雇ってやったんだ。地下3階層で、俺達を置いて逃げやがった。

そのおかげで俺達は魔獣に襲われて死にかけたんだ。蹴り飛ばしても文句はいえないだろう」


「それは本当か?」



 カナトは背中に隠れている兎族の少女に声をかける。

兎族の少女は小さく首を左右に振る。



「それは違います。この方々の実力では地下2階層までしか行けませんでした。私は地下3階層へ行くのは無理だと止めたんです。なのに……その人達は私の注意を無視して地下3階層へ降りていったんです」


「冒険をするのが冒険者だろう。地下3階層の魔獣の魔石のほうが高く売れるんだ。地下3階層を目指すに決まっているじゃないか。それをこいつは地下2階層から逃げやがった。契約違反だろう」


「あなた方からは料金は支払てもらっていません。契約違反にはなりません」



 確かに料金が支払われていなければ、契約違反ではない。

案内人は冒険者になるほどの実力を持っていない者達がほとんどだ。

実力がないからこそ、冒険はしない。

だから少女は地下2階層から、冒険者達を見捨てたんだ。

地下3階層から逃げかえっている冒険者の行動を考えると、少女の認識は正しかったことになる。


 しかし、ここで口論しても仕方がない。

このままでは冒険者達も納得しないだろう。

 カナトは革ホルダーから金貨を1枚取り出して、冒険者達へ放り投げた。



「その金貨は、この前の少女の契約違反金だ。それでいいだろう」



 金貨を受け取った冒険者達は文句を言いながらも、そのまま去っていった。

少女はカナトの背中から出てきて、深々と頭を下げる。



「冒険者様、私の代わりにお金を払ってくれてありがとうございます。私はカールストンの街で案内役をしているミディと言います。私を案内人として雇いませんか?案内人としては3年目のベテランですよ」


「俺はカナト、隣にいるのはナナだ。俺達は冒険者だが、今回は冒険をしに来た訳じゃない。最下層まで降りたいんだ。最下層まで案内してくれるなら、雇ってもいいぞ」


「最下層の地下7階層は、まだ人族の冒険者は降りたことはありません。カナトの実力次第ですが、地下5階層までなら案内できます。地下5階層までなら契約しましょう。金貨5枚です」



 1日の稼ぎとして金貨5枚は高額だ。

それで途中で逃げられたらたまらない。

兎族の少女とは、会ったばかりだ。お互い信用できない。

カナト達が地下5階層まで行く実力がないと判断した時には、案内人の少女は逃げるだろう。



「それでいい。支払いは地下5階層に到着したら支払おう」


「はい。カナト達に実力がないと判断した階層で、私は逃げさせてもらいます。その時は契約金はいりません」



 ミディは白くて長い耳をピンと立てて、姿勢を正してカナトに宣言する。

決して嘘をつくタイプには見えない。

ただ、自分が生き残ることに慎重なタイプなのだろう。



「それでは契約成立だ。これから地下1階層から潜っていくぞ。今までは地下何階層まで案内したことがあるんだ?」


「私は地下5階層までは冒険者を案内したことがあります。地下6階層までの知識なら持っています」


「それで十分だ。ミディを信じよう。ナナもそれでいいか?」


「我はカナトが良いと思う方法でいいと思っておる。カナトに任せた」



 警備兵へ冒険者カードを見せて、ダンジョンへの入場を許可してもらい、地下1階層へ向かう。

地下1階層は洞窟ダンジョンで、出てくる魔獣はゴブリン、コボルト、インプ、ガルムのような低級魔獣だ。

ミディに案内してもらいながら、低級魔獣に剣を振るっていく。

以前よりも剣筋が良く、剣を振るう体が軽い。



「カナトはお強い冒険者だったのですね。その実力があれば地下3階層までは行けると思います」


「まだまだ、実力を見せていないよ。ミディの期待に応えられるように頑張るさ。ミディのことも守るから安心しろ」



 地下2階層はホブゴブリン、オーク、ワーウルフ、バイコーンなどの魔獣が現れた。

カナトは地下1階層と同じように、出現してくる魔獣を斬り伏せていく。



「魔素、頼みがある。ミディが危なくなったら、ミディも結界で守ってやってくれ」


《おおー。久しぶりのカナト様からの呼びかけ。私達魔素は感激です。このまま出番がないのかと思っていました。頑張って働かせていただきます》


「地下3階層からは、オーガ、トロール、ミノタウルス、キラーアント、キラービーが相手になります。十分に気を付けてください。地下3階層からは一気に魔獣の強さが変わります」



 地下3階層へ通じる階段を降りながら、ミディがカナト達に注意を促す。

地下3階層に出没する魔獣の中で戦ったことがあるのはトロールだけだ。

確かに地下2階層とは違って、地下3階層より下の魔獣は手強そうだ。



「大丈夫じゃ。剣神ジブリルとの特訓をわすれなければ、カナトのほうが強いじゃろう」


「ああ……あの特訓をしてから体が軽い。教えを忘れないように戦うさ」



 カナト、ナナ、ミディの3人は地下3階層へ向かう階段を1歩1歩と降りていった。

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