25話 2柱の神
「剣神ジブリルと鍛冶神ギオルギか……厄介な神じゃのう」
「どんな神なんだ?」
「二神共に戦いに力を持つ神じゃ。しかし二神共に性格が偏っていてのう。戦いを好む性格をしておる」
確かに剣神は戦いの神という感じがする。
しかし鍛冶神は剣を作る神であり、話し合えば解決するような気もするのだが。
「とにかく戦いの好きな神なのじゃ。カナトも覚悟をしておけ」
「その二神には会いに行かないといけないのか?」
「うむ……できれば我の味方についてほしい神達じゃ」
こんなことなら、リグル村からクッカに付いて来てもらうんだった。
クッカなら笑顔で二神と仲良くすることも可能だったかもしれない。
クッカの笑顔には誰でも惹かれる魅力がある。
剣神なんて剣術の神様だろう。
こちらは剣術に関して、全くの素人と言っていい。
絶対に敵うはずがない。
今から戦うのが嫌で、気が重くなってきた。
「神殿に行く前に宿を取ろう。この街では少し長居しそうな気がする」
「そうじゃな。まだカールストンの街の名物料理を食べておらなかった」
すっかり人族の料理に魅せられてしまったナナは、今から夕飯を楽しみにしている。
ナナは小さな体なのに、よく食べる。
いくら食べても太らないのが不思議だ。
そういえば、カナトも全く太る心配はなさそうだ。
エール酒を大量に飲んでも、酔わないし、腹が出たこともない。
体に流れている神光が調整しているのかもしれない。
大通を中央広場の近くまで歩き、少し路地に入ったところにこじんまりとした宿があった。
やはり1階は食堂をしているようだ。
宿の名前は『トロールの胃袋亭』と看板に書かれている。
宿へ入る扉を開けると、すぐに受付カウンターがあり、紫色の髪をした獣耳の娘が座っていた。
カナト達を見て、ピクピクと獣耳が動いている。
異世界に来てから、初めて獣人と接する機会にカナトは密かに興奮する。
「いらっしゃませ。何名様ですか? お部屋はいくつ必要ですか?」
「2名で部屋は2つでお願いしたい。お姉さんは獣人族なのか?」
「私は狼族の出身なの。カールストンの街には獣人も多く住んでいるよ」
そう言って、狼族のお姉さんは気軽に接してくれる。
目鼻立ちがきれいで、目元が涼やかな美女だ。スカートから尻尾を出してゆらゆらと動かす。
「私の名前はマルタよ。可愛い冒険者君。宿代は夕食込みで1人銀貨4枚。合計で8枚ね」
カウンターで銀貨8枚を渡すとマルタはカウンターから出てきて、カナト達の部屋へ案内する。
マルタはかなりスタイルがよく、胸も豊満でかなりセクシーだ。
後ろ姿は尻尾が機嫌よく動いていて、カナトは尻尾を触りたい誘惑にかられる。
カナトとナナの部屋は2階の奥の部屋で、隣部屋だった。
マルタが部屋への案内を終えて1階へ戻っていくと、隣でナナが不機嫌そうな顔をしている。
「カナトは年上好きなのか? スタイルも胸が大きいほうが良いのか?」
別に年上好きということはない。実年齢が35歳のため、20歳以上に惹かれるだけだ。
胸も大きさはあまり気にしないが、ないよりもあったほうがいいと思う。
ナナは自分の胸に両手を当てて、複雑そうな顔をしている。
「ナナも大きくなれば、胸もおおきくなるよ」
「何を言っておるのだ……我は創造神じゃぞ。この世で一番の年上じゃ」
そうだった……時々、ナナが創造神であったことを忘れてしまう。
普通に立っていれば15歳ほどの美少女にしか見えないのだから仕方がない。
寝る時は、いつもカナトのベッドへ忍び込んでくるし、感覚的にはまだ少女だ。
自分の部屋へ入り、武具と防具を取り外してベッドに転がる。
リグル村のベッドより柔らかくて、弾力がある。
やはり街が大きくなると寝具も良くなるようだ。
異世界であるカルデナ世界にも少しは慣れてきた。
今では日本のことを忘れていることも多い。
日本よりも文化レベルは落ちるように見えるが、剣と魔法の世界も面白いと感じるようになった。
魔獣の肉もオークなどの肉は美味しく、調味料もカナト好みで不満はない。
時々、ご飯とみそ汁と醤油が恋しくなるだけだ。
その時ばかりは、自分は日本人なのだと再確認してしまう。
ナナはリグル村の時も神殿へ行ってクッカと出会った。
魔巣の森では、森の守り神であるターサンと出会った。
このカールストンの街でも神殿へ行って、神と会うつもりのようだ。
その行動にどんな意味があるのか、カナトにはわからない。
ナナに問いかけても上手くはぐらかされてしまう。
しかし、何か特別な目標があるのだろうと思う。
ナナが話してくれるまで待つことにしよう。
夕暮れになり、ナナと2人で1階へ降りて食事を取る。
食堂は満席状態で、2人掛けの席しか空いていなかった。
この宿は食堂としてのほうがカールストンの街では有名であるとマルタから聞いた。
マルタは忙しそうに、エールの樽酒を客席に運んでいる。
今日は珍しくトロールの肉が手に入ったのだと言う。
まさかとは思ったが、カナト達は何も話さずにマルタの話を聞いていた。
トロールのステーキは口の中で蕩けて消える。
照り焼き風味の調味料もトロールの肉に合っていて、とても美味しい。
ナナとカナトは魔法を使ってエール酒を冷やして飲む。
いくら飲んでも酔わないので、エール酒を楽しむことができる。
夕食を食べ終わって、カナトとナナは神殿へと向かった。
夕闇が訪れた神殿には誰一人いない。
「剣神ジブリルいるのであろう。我じゃ……創造神じゃ。出て参れ」
ナナが大声で叫ぶと、神殿が地震のように揺れた。
ナナとカナトは立っていられずに片膝をつく。
地震が収まっまると、真っ白な空間の中にカナトとナナは立っていた。
「ようこそ創造神様、隣の者は誰でしょうか?」
目の前に金髪ショートのイケメンが、髪をもてあそびながら笑顔で声をかけてきた。




