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22話 トロール討伐

 トロールは大きな2つの目を開けてカナトを見る。

そして座っていた巨体を揺るがして立ち上がった。

身長は優に5mを超える巨人だ。右手には巨大なこん棒が握られている。


 カナトが剣を持ってトロールに近づくと右手を大きく振りかぶって、こん棒を棒きれを振り回すように、カナトを狙ってくる。

カナトの耳に「ブウーン」という風切り音が聞こえてくる。

確かに体の動きは鈍いが、振り回されたこん棒の速度は意外にも早い。


 振り回されるこん棒を回避しながら、トロールの目とこん棒を自分のほうへ注目させる。

カナトはケネスに言われた通りの作戦を重ねていく。


 シモネは遠くから弓に矢を番えて、連射してトロールの目を狙うが「カーン」という音がなるだけで、目に矢が刺さらない。


 ナタリーも遠距離から火系のファイアーボールを飛ばして、トロールの全身に当てる。

しかし、トロールの皮膚を少し焦がすだけで、全くトロールに攻撃は効いていない。


 ケネスが隙をついて、トロールの懐に飛び込で、剣を突きいれる。

皮膚を斬るだけで、トロールの頑強な筋肉を裂くことができない。


 後ろに回り込んだレイリーが大戦斧を振って、トロールの首を一閃する。

頑強な筋肉を少し斬るだけで、大戦斧はトロールの首に突き刺さったまま抜けなくなってしまった。


 さすがB級指定の魔獣である。

ケネス達の攻撃は全く効かない。作戦は失敗だ。

後ろに回り込んでいたレイリーがトロールの腕のひと振りで、弾き飛ばされて草原へと消えていく。

ケネスもこん棒のひと振りに巻き込まれ、剣でこん棒を防いだ格好のまま、街道の先まで飛ばされる。

怒り狂ったトロールが荷馬車に向かって歩き始めた。

ベネットや御者達はそれを見て逃げ出していく。


 すると荷馬車の前に立ってナナが両手を広げて立ちはだかる。



「カナトがこれぐらいで負けたりはせんのじゃ。カナトよ……本気で戦え。本気で戦わぬと我は死ぬぞ」



ナナは大きな声でカナトに本気で戦えという。

このままでは本当にナナがトロールのこん棒の餌食になってしまう。


カナトは剣を投げ捨て、腰に差している柄だけの剣を持つ。



『出でよ。ヒート剣』



 何もなかった柄の先に真っ赤な熱線の剣先が現れる。

カナトはこん棒のひと振りを回避して、トロールの懐へ飛び込むと、トロールの右肩をヒート剣で斬り裂く。

こん棒を持っていたトロールの右手は回転しながら草原へ消える。

右肩から紫色の血が噴き出す。


 暴れて、カナトに蹴りを入れようとするトロールの両足を、ヒート剣を横なぎに一閃して、トロールの体から距離をとる。

両足を断ち切られて、失ったトロールはごう音と共に前に倒れる。

そのままの状態で左手を振り回して暴れている。


 カナトは地面を蹴ってトロールの背中に着地すると、ヒート剣を逆手に持って、トロールの頭に突きさす。

しばらく暴れていたトロールは頭を破壊されて、地面にうつぶせになったまま絶命した。

カナトは背中の中央をヒート剣で斬り裂て、手を突っ込んで大きな紫色の魔石を取り出して、魔石を大きく掲げる。


 それを見ていたベネット達や御者が戻ってきた。

ケネス達『オーガの斧』のメンバー全員はまだ動けないまま、カナトを見ている。



「B級指定のトロールを一人で狩ったなんて、誰に話しても信じてもらえないわね」


「そうでしょうね。それも年端もいかない少年がトロールを倒したなんて、実際に見ている今でも信じられないわ」



 シモネとナタリーが2人並んで話し合っている。

顔は笑っているが、顔色は青ざめている。

ケネスとレイリーも草原から戻ってきて、トロールが倒されていることに驚いている。


 カナトは魔石をリュックに入れると、トロールの体から降りて、トロルの左手の指をリュックに入れる。

すると今まで倒れたままになっていたトロールの死体がきれいに消えてしまった。


 カナトはリュックを背負って、荷馬車の前で両手を広げているナナの元へ歩いていく。

ナナは緊張で体が硬直しているようだ。

カナトはナナの肩を優しくポンポンと叩く。

するとナナが涙を流して、しがみついてきた。



「怖かったのじゃ」


「無理するからだよ。ナナは戦いに不向きなんだから、大人しく荷馬車の後ろに隠れていてほしかった」


「カナトが本気を出さないのが悪いのじゃ。私が悪いのではない」


「今回は『オーガの斧』の作戦通りに動いていただけだ。これも作戦だったんだよ」



 本当はアールストンの街へ到着するまで、カナトは自分の本気を隠していたかった。

ケネス達で対抗できるなら、カナトとナナも安心して街まで着くことができるからだ。

これからは、カナトのことをベネット商会も『オーガの斧』も警戒してくることだろう。

味方と敵対することだけは避けたいと心より願った。

ケネスが少し青ざめた顔でカナトへ質問してくる。



「カナト……お前、1人で倒したのか? お前……本当にD級冒険者か?」


「冒険者登録したのが遅かったので……D級冒険者であることは確かだ」



 ベネットさんが小太りな体を揺すって走ってくる。



「さっきのトロールはどこへ行ったんだ? そのリュックはまさかアイテムボックスなのか? 売ってくれ」


「これは剣術を教えてくれた師匠の形見でして、売ることはできません。申し訳ないです」



 剣術を教えてくれた師匠などはいない。

教えてくれたのはクッカだ。

ベネットに大ウソをついて、リュックを売れないことを説明する。



「では、せめて、仕留めたトロールだけでも買い取らせてくれ。トロールの肉は上質で街では高値で売買される品だ。トロールの目玉も錬金の素材として高値で売れる。是非、買い取らせてくれ」


「それぐらいは構いませんよ。魔石は私がもらっておきますけど」


「それでいい。斬り飛ばした右手も草原から回収してほしい。冒険者の皆さん、トロールの右手を持ってきてください」



 ケネスとレイリーは言われた通りに、草原へ右手を回収するため走っていった。

シモネとナタリーが2人並んで、カナトを囲んでくる。



「先ほどは、実力を勘違いして失礼した。カナトの実力は本物だ。賞賛に値する」


「私もみくびっていたわ。少年だと思っていたけど、実力は大人以上なのね。あの剣の秘密についても、後でゆっくりと話がしたいわ」



 女性2人の変わり身の早さに驚かされる。

なぜか、女性2人がカナトに近づかないように、ナナが両手を広げて、防御している。


 ケネスとレイリーが重そうに右手を運んできた。

カナトはリュックにトロールの右腕も収納する。

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